第29話 いきなり 女神が接触②



 女神の発言を聞いて立ったまま固まる靱平



「えっ? 平木さんが千年以上前に倒したってもしかして平木さんは勇者ですか?」



「うんにゃ勇者じゃないよ~ 職業は[武人]だよ。

 時代によってちょいちょい呼び方が変わって、今は素質って呼んでたね

 靱君は当時の騎士や戦士達の頂点にいる存在だったわ~

 

 ……ま、そうじゃないとあの魔王は倒せないよ」



 勇者ではないけど、凄い存在だと分かり驚く2人



「ほぇ~ 私達は凄い人に助けられて教えて貰ってるんだね」



「そんな凄い人間ではないけどな。魔王は勇者が倒したしね」



 陽菜が感心した様に言うと、座り直した靱平は苦笑いになる



「充分凄いわ。千年以上経っても当時の4人の名前は語り継がれてるんよ【 英雄 】としてね。

 だから偽名使ったのはナイス判断! 今の世界に日本名の人間は居なかったからさ。

 本名を名乗ってたら色々面倒な事になってたっしょ」



「そうですね、【 英雄 】と同じ名前と言うよりご本人ですからね。

 私達はそんな凄い人と一緒に居るんですね」



 女神に賛同する結衣



「そう言って貰えると嬉しいが……俺はただ他の者よりも多くの魔物を殺し、魔族を殺し、人を殺しただけだ」



 顔を少し伏せて自嘲気味に言う靱平

 結衣と陽菜はお互い顔を見合わせて、何か話そうとするも言葉が出てこないで俯いてしまった


 空気が、重くなった事に気付いた靱平は女神が口を開く前に



「ごめん、重くなってしまったね。所で救出以外にしてほしいことはなんだ?」



「靱君、うちに当たりキツくない? しゃ~ないけどね~ 

 んで、してほしいことは人捜しだよ。私の力が関わってる召喚や世界ならすぐ分かるけどさ

 ここ暫く関われてなくてね。その間にあのボケハ……神が好き勝手して面倒な事起こしやがってよ。私の力が及びにくくなったのよ」



「……確かに、言い方などキツくなったな。

 人の意見無視でいきなり送られたらね。

 畏まるのも面倒になったのもあるがいいよな

 それで、人捜しか……なにか特徴はあるのか?」



 当たりがキツくなったのに、少し悲しそうな表情を見せるが直ぐに戻る女神

 靱平も自覚していたが、もう気にしない事にしたのを聞いた女神は笑いながら頷いて



「いいよ~いいよ~仲が縮まったってことしょ。

 んで、人捜しの特徴で分かってるのは1つだけなんよね~

 職業……今は素質とも言うね。の子を捜して欲しいのよ」



「ぶっフゥゥーー!……ゲホッケホッ……ハァ……ふぅ……はぁ……」



「ぬぁ?! 結衣ちゃん大丈夫?! 落ち着いて! あっ布巾 布巾!」



 お茶を一口飲んだと同時に吹いたので、そこまでは汚れてないがかなり動揺している結衣。

 陽菜に背中さすられながら呼吸を整える

 女神が何処からともなく取り出した布巾で拭いて、新しいお茶を入れる



「……今まで聞いてこなかったが、永原さんの素質が学者だね?」



 聞かれて体全体でビクッとなる結衣永原

 少し間を置いて頷いた



「まじか~ うちが召喚関わってたら直ぐに分かったのにさ。ほんとあの野郎いらんことばかりしやがって」



「あの……学者の素質はどう言ったものですか? 城の人達は誰も知らなかったのですけど」



 言われて靱平と女神が顔を見合わせた



「なぁ、千年以上経つと情報は失われたのか? そう言えば、俺達が居た時より人類のレベル下がってないか?」



「そだねー 時が経つと色々失われてるからね、学者もその1つだわ。

 うちも調べたりしてるけどさ。

 レベル下がったのも、ちょこちょこ戦争ぽいのはあったけど、平和な時代が続いてたからね~

 靱君の職業[武人]も伝説上の扱いになってるよ。まぁ、実際[武神]になってたし言われる様になってたもんね~

 それに、本人が、生きてて[武人]保有してるからね~」



 靱平が難しい顔で“学者か”と呟くのを見て不安になる結衣



「あの、学者は何か危ない素質ですか? スキルが1つも覚えられないのも何かあるのですか?」



「それは、違うよ。其れ処か学者はランクでSランクのすなわち最上位の素質だよ」



「「ええぇぇぇぇぇぇぇえ?!」」



 また同時に驚く結衣と陽菜。先程と同じ表情をしていた



 「学者は他と違う特殊な方法で、全てのスキルを覚えることが出来る」



「えっ? 全てのスキルをですか?! でも、特殊な方法が難しいのですよね」



 全てのスキルを覚えると靱平に言われて目を見開く結衣



「スキルについて書かれている本を読んで、理解が出来たら覚えられる

 でも覚えられるが、使えるかどうかは別になる。使えるスキルは覚えた時点でプレートに表示されるよ」

 (ただ、この時代に何れだけのスキルの本があるのか纏められているのかわからないな)



「本を読よむだけで覚えられるのですか? 

 正直信じられませんが、間違いないですね。

 その本は何処にあるのでしょう?」



 表情は変わらないが、自分の素質について分かり少し興奮してる雰囲気になる結衣



「本はギルドにもあるよ~ただ、大部分はガイルドのお城だね……あそこ勇者の血を受け継いでるからさ」



「ええ?! あそこ勇者の血が流れてるの?! 何か嫌だな~ ……ってごめんなさい! 変な事言いました」



 女神の発言に1番反応した陽菜。慌てて謝ると皆、気にしてないと答えた



「まぁ、千年以上経てば変わるものか。しかし学者が表れて勇者等も召喚されるとは……本当に魔王が現れるのか?」



「えっ? 学者が関係あるのですか?」



 靱平の魔王に関して話を聞いて不思議そうにする結衣



「学者の力で勇者は魔王に対抗出来る魔法を、身に付けられるんだ。

 一応永原さんのクラスメイトに勇者がいるけど、必須なスキル[剣聖]を持って無いので彼ではないな。これは後から身に付くものではないからね。

 [聖魔法]は数は少ないが覚えられる人は居るしな」

 (俺達の時は勇助の幼馴染みが学者で覚醒が出来たけど、学者の彼女が居るなら勇者は居るはず……)



「ほぇ~ 学者にそんな話が隠れていたなんて驚きですね。

 あれ? 前に平木さんが話していた人数と召喚の強さの話しありましたよね? 

 私達のクラス40人ほど居たんですよ。でも21人しか召喚されなかったのは結衣ちゃんの学者の力が強いからですか?」



 陽菜が疑問に思った事を聞くと



「それは、間違いないね~結衣ちゃんを召喚するのに20人ほど省かれたね

 それだけ強いよ~学者はね。勇者の彼は何とも言えないけど、魔王に対抗する勇者ではないかな~

 後は賢者の[魔導]や聖女の[治癒]など必須スキルを身に付けてないけど……今回は何とも言えねぇんだよね

 こちらのせいで流れや動きがおかしいからさ」



 口調は軽いが表情は真剣そのものな女神



「そこら辺も調べる必要があるな。

 永原さんは先ずは、ギルドの資料室にあるスキルの本を読んでみよう

 基礎的な事が書かれてるから直ぐに、覚えれる筈だよ」


 

「分かりました。そうします」



 学者の強さについて知らされた事も含めて考えて頭の中で整理する結衣である









 

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