第20話 処理と解散
レニーナが落ち着くまで抱きしめるジェイド
泣き止んだレニーナに、優しく微笑んでゆっくり離し
「落ち着いたかレニーナ。それと貴方はゴブリンを倒した1人ですか?」
シンヤに向いて真剣な表情になり聞いてきた
「初めまして。シンヤと言います。ゴブリンを倒したのは俺ですね。」
「初めましてシンヤさん。ヴァリアント砦の警護隊長ジェイドです。ゴブリン達を倒したのと、妹を助けて貰いありがとうございます。」
シンヤの話を聞いて頭を下げるジェイド。
「呼び捨てで構いませんよ。余り堅苦しいのは好きではないので」
「……そうか、そう言ってもらえると助かるな。じゃ、呼び捨てで呼ぶぜ、シンヤ。俺もジェイドと呼んでくれ」
と、言って豪快に笑うと、リリィの側に付いた女性騎士に睨まれて慌てて口を閉じた。
「おぉ、すまん。こんな所で、笑うもんじゃねえな。本当にすまない。一応、助かったのは其方の女性だけか」
「そうですよ。気を付けて下さい、隊長。
自我を保てていたのは、此方のリリィさんだけです。残念ですが、他の方はもう……」
魔道士の格好をした女性は、言いながら悔しそうに下を向く。
部屋の奥を見るシンヤとジェイド。騎士の人達がせわしなく動いている
視線を動かしリリィを見ると、毛布を頭から被りごそごそしていた。
すると、付き添っていた女性魔道士が
「リリィさんはわたし達の持って来た服を着ています。レニーナさんも着ています。
それと、リリィさんはシンヤさんに付いて行くと言ってましたが、大丈夫ですか?」
「そうなのか? シンヤの知り合いか?」
シンヤに向けられる、女性魔道士の視線が若干きつくなっている。その事はジェイドからは見えてない
「知り合いではないですよ。彼女は父親と2人で生活していて、旅の途中にゴブリンに襲われて父親は亡くなり、彼女はここに連れ込まれたんだ (実際、父親と2人暮らしだったそうだし、襲われたのも本当だからな……)」
「へぇ、そうなのか。なら、俺らで保護しても良いんじゃねぇか? それで、親戚なり連絡して可能なら引き取ってもらうとかさ」
尤もな意見を言うジェイド。女性魔道士も頷いているが、気のせいか頷く回数が多くみえる
「それも、考えて話したんだが何でも父親以外の知り合いも親戚もいないらしい。
砦の保護もゴブリンの巣から近いので、行きたくないらしい。
俺は冒険者で、冒険者の弟子の女の子が2人居るので、落ち着くまでは側に居ると話がついたんだ」
「なるほどな。そう言う事なら良いんじゃないか? 本人が納得してんならよ」
リリィさんについて話をしていたら
「あの……服を着ました、ありがとうございます。
私の話が聞こえたのですが、どうなりますか?」
「リリィさんは、俺と一緒に行く話しで纏まりそうだよ。最終で本人の確認を聞けたら良いと思う。
服は冒険者風何だね (女性魔道士の視線がいたい……勘違いされてるし、疑われてそうだな。まぁ、この状況では、無理もないか。
ゴブリンに攫われた、見ず知らずの引き取り手が居ない女性を連れて行く。
しかも、確実に保護してくれる所を断ったらな)」
「当然、冒険者の服を用意しますよ。動きやすくズボンです。
所で、リリィさん本当にわたし達の所に来なくて大丈夫ですか?
ゴブリンの巣に近くて不安かも知れませんが、わたし達なら安全な場所に、斡旋出来ますよ。任せて下さい」
女性魔道士の圧に押され気味に為りながら話を聞くリリィ
「お気遣いありがとうございます、エルマさん。でも、決めたので大丈夫です。」
「……分かりました。でも、何かあったり (嫌なのに) 何かされたら必ず相談して下さいね」
「(……これは、疑われてるレベルではないな。
リリィさんの本当の事情が話せなくても、そんなに信用ないのか俺。
幾ら初対面でも疑われる格好になるのか、これは?……俺も後で、マントかローブ買おう)」
リリィに向ける優しい視線と、シンヤに向く視線の温度差に苦笑いが出そうになり堪えるシンヤ
「よし、話は纏まったな。じゃ、彼女は頼むぞシンヤ。それとだ、先ほど弟子の2人と居るって言ってたな。まさかこのゴブリン連中は、その弟子と3人で倒したのか?」
「……俺、1人で倒したよ。弟子の女の子は冒険者になったばかりで、離れた所で薬草採取してる」
周りに居る警護隊の面々は、一斉にシンヤを見る
「「「「はあぁぁぁ?!」」」」「「「「えぇぇぇぇ?!」」」」
「ちょ?! ちょっ待て! 冗談だよな?! ゴブリンロードにキングだぞ! しかもゴブリンの数も多かった筈だぞ?! それを、シンヤが1人でぇ?!
いや、でも、他に仲間居なそうだし、はぁぁ?!」
ジェイドや警護隊の反応を見て苦笑いになるシンヤ。
そこに、冒険者の服を着たレニーナが
「兄さんそれに皆も、アタシも話聞いた時はさ、その反応だったな。でも、シンヤが1人で倒したのは間違いないぜ」
「着替えたかレニーナ。まぁ、お前がそう言うならそうかもな……どっちにしろ俺達だけじゃロードやキングの相手は無理だしな」
レニーナの言葉で、ジェイドだけでなく警護隊の隊員もなっとくしていた
「(彼女が言ったら納得したな。もしかして彼女は、生き物も鑑定が出来るスキルを持ってるかもな)」
ジェイドと仲良く話すレニーナを見て考えるシンヤ。すると、隊員の1人がマジック袋を持って来てジェイドに渡した。
レニーナは渡しに来た隊員と、一緒に部屋を出る
「シンヤ、これは外に転がってるゴブリンどもの討伐部位が全て入ってる。持って行ってくれ」
「……へっ? いやいやそれは貰えないな。回収してくれたのは、そちらだろ。戻って説明を要るんじゃないのか?」
討伐部位が入っているマジック袋をシンヤに押し付けるジェイド
「此奴ら倒したのはシンヤだろ。シンヤが受け取らないで、誰が受けとるってんだ。
レニーナから聞いたが、ロード達の首は持ってんだろ? ロードが居るなら、ゴブリンもわんさか居る事になるからな。
ロード達の首だけ持ってても、不自然じゃないか? まぁ数が多すぎて、取るの面倒くせぇけどな
折角だ、持って帰っても悪くはねぇだろ」
「分かった、ありがとう。それとジェイドが言った通り、回収するの面倒くさかったんだ。助かったよ」
受け取るシンヤに “だろうな” って笑うジェイド
「ここの事は、こっちがしとくからシンヤは今日は帰っていいぞ。そこのお嬢さんも、早く体を休めたいだろうしな」
「色々と説明したりする事もあるだろう? しなくて大丈夫なのか?」
「あぁ今日は遅くなって来たからな。それに、あんまり弟子の2人をほっとくのも拙いんじゃねぇのか? 後日、詳しい話を聞かせて貰うぜ
その代わりじゃねえけど、ギルドの報告は任せたぞ」
少し考えて頷くシンヤ。その横に並んだリリィは、ジェイドとエルマに頭を下げる
「ジェイドさん、エルマさん、服ありがとうございました」
「おぅ、ゆっくり休めよ。シンヤ、倒してくれてありがとな」
「はい、リリィさん何かされ……ありましたら連絡下さいね」
「此方こそ色々ありがとう。また後日、報告に伺うよ (何だろう。何故かエルマさんに女の敵認定されてる気がするんだが……)」
そして、ゴブリンの巣を後にして、ユイナとヒカリの所に向かうシンヤとリリィであった
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