第17話 ゴブリン戦と



 顔を引き攣らせるゴブリンロードは、辺りを見回しシンヤを睨む



「オマエ……ヒトリ?」





「そうだと言ったら如何するんだ?」



 普通ゴブリンは人の言葉を話せないがゴブリンロードにもなると、人の言葉を話し理解する事が出来る。その事は、冒険者でも殆ど知られてない。

 しかし、ゴブリンロードの上のゴブリンエンペラーとやり合ったことのあるシンヤは知っていた。

 驚かないシンヤを見て、顔を歪めるゴブリンロードだが



「……ウソダ……チカクカラ……メスノニオイ……スル……ソレモ……ニヒキ……ゲハァヒャヒャ」



 2人が隠れてる方向を見て下品に口を歪めて笑いだすゴブリンロード



「(匂いは残っているからそれで、気付いたか) 

 どのみち、お前らはここで死ぬからな。 嘘だろうと、関係ない」



 ゴブリンロードはシンヤに向き直り睨み付けると



「……ヤレ!」



 ゴブリンロードの命令を聞いて、左右に控えていたゴブリンマジシャンが動いた。

 頭上に火の玉を5つずつ発現させて、シンヤに向け打ち出した。2体のゴブリンマジシャンが放つ、計10発の火の玉がシンヤに迫る

 

 それを、口角を吊り上げて見るゴブリンロード

 シンヤは動くこと無く、刀を地面に突き立て両手を前に突き出す。

 向かって来た火の玉を、で受け止めた。驚きの表情を浮かべる、ゴブリンロードにマジシャン達。


 受け止めた火の玉に自身の“気力”を流して強化するシンヤ。ゴブリンが次の動きをする前に、火の玉を投げ返した

 前列で構える通常のゴブリン達に8発を、マジシャン達に1発ずつを、打ち出された以上の速さで投げ返した

 

 反応がとれずに真面に食らったのは、前列の15体のゴブリン達。

 着弾した火の玉が、炎の波を発生させ瞬く間にゴブリン達を飲み込み、燃やし尽くした。

 ゴブリンマジシャン達は、ボロボロの木の杖を構えて、先端に火を発生させ受け止める。

 だが、受け止めた瞬間火の玉が炎を広げてマジシャン達を包み込んだ。一瞬で炎に包まれ断末魔を上げる間もなく灰となった

 残る4体は、あっという間の出来事に呆然としていたが、すぐにゴブリンロードは戻り



「……コロセ!」



 ロードの号令で、グレートソードを振り上げシンヤに襲いかかる、2体のゴブリンジェネラル

 刀を水平に構えて、左手を峰に添え受け止めると顔を歪めるシンヤ



   「……くっ」



 シンヤの顔を見たゴブリンロードが



「ゲハハヒャヒャ!……オワリダ……ツブレロ!」



ゴブリンロードの大笑いの声に釣られて、あざ笑う3体のゴブリン達


 ゴブリンキングが大金鎚を右肩に担いで構え、ゴブリンロードはボロボロのグレートアックスを左肩に担いで構えると、同時にシンヤに向け走り出した


 すると、歪んだ表情から静かに笑みを浮かべるシンヤ

 


 「……なんて、本当にそう思ったか (こうも簡単に引っ掛かるとはね)」



 シンヤの変わりように、一転して怒りの表情になるゴブリンロードとキング

 

 シンヤは左手を握りしめ峰に拳を叩きこんだ。

 刀はそんなに動いてないが、その衝撃でゴブリンジェネラルの両腕が弾き飛ばされ、持っていたグレートソードが空高く舞った。


 驚愕の表情になるゴブリンジェネラルに刀を振るうシンヤ。

 ゴブリン達には、刀を1回振るっただけしか見えなかったが、ゴブリンジェネラル達は、驚愕の表情のままバラバラになった


 ゴブリンジェネラル達がバラバラにされ、目を見開くゴブリンロードとキング。

 すぐに、怒りの表情が強くなりこめかみに青筋を立て、大金鎚とグレートアックスを振り下ろした。

 シンヤは大金鎚を左手で摑み、右手の刀をグレートアックスの斧刃に突き立てた。

 それだけで、2体のゴブリンは動きを完全に止められた。

 それぞれ、両腕で武器を引っ張っろうと、力を込めるもビクともせず焦りの表情に変わっていた



「ナ……ゼダ……ウゴ……カナイ……ギャルルルルッ?!」


 突然シンヤが両手を離した。引っ張っていた反動で後ろに仰け反るゴブリンロードとキング

 それぞれ、ガラ空きになった腹に、掌底を叩き込んで、後ろに吹き飛ばした。

 

 加減をして殴ったので、倒れることなく踏ん張った2体のゴブリン。同時に、下へ向いた顔を上げてシンヤを睨むと、不思議な顔になる。

 シンヤは両手を上に向けて広げていた。そこに、弾き飛ばしたグレートソードが落ちてきて、両手にそれぞれ摑んだ

 


「ナ、ナンダ……ハッ?」



 驚いた声を出したらシンヤの姿が消えて、素頓狂な声を上げるゴブリンロード



「反応が遅いな」



 シンヤの声と地面を叩く音が後ろから聞こえて、慌てて振り向こうとしたゴブリンロードとキング

 


「(ナンダ……ウシロ……ガ……ミ……レ……)」



 ゴブリンロードとキングの首は、動きに合わせてずり落ちて驚愕に目を開いたまま、静かに地面に転がった。

 体はそれぞれ持つ武器の重さに引っ張られ、音を立てて倒れた

 


「ふむ、こんなものか? 強さに見た目は、前に居た世界と変わらなかったな。

 なら、魔物ランク的にジェネラルがDランク、キングがCランク、ロードがBランクって所かな。知能は少し低かったか。 っと言っても今後も、油断は出来ないが。それより」



 辺りを見回して倒れているゴブリンを見る


「燃え尽きたゴブリン以外の、討伐部位は全て回収してたら時間かかるな。ジェネラルより上の顔と武器を持って帰るか。これだけでも、俺達の冒険者ランクは1つは上がるだろう」


 武器は大きいのでアイテムボックスに顔はアイテム袋に入れるシンヤ

 そして、シンヤは1つ勘違いしていた。ジェネラル以上に進化する特殊モンスターのランクについて

 それが、分かるのはもう少し先の話です


「後は、ゴブリンの巣に残るゴブリン以外の反応を確認しようか(大方、想像つくけどな)」



 刀を持ちゴブリンの巣となっていた洞窟の奥に進むシンヤ

 進んで行き気配の感じる部屋に入って唖然とするシンヤ。ほぼ想像通りだったが



「許して下さい。許して下さい。殺さないで下さい。私達は、ゴブリンに抱かれました。中にも出されてます。でも、ゴブリンの子供は出来てません。

 だから、だから殺さないで下さい。お願いします」


「死にたくない……死にたくないです。許して下さい。助けて下さい」



 裸で、頭を地面に何度もぶつけながら懇願する、紫色の髪に尖った耳で薄い灰色の肌をした魔族の女性。

 それと裸で腰を抜かした様に座る、茶髪に茶色の瞳から涙を流しながら見つめてくる人間の女性が入り口に居た


 更に奥へ視線を移すと、多くの魔族の女性が居た。全員が裸で皆、既にのが分かった。

 中には1~2人ほど人間の女性が居るが、此方も同じ状態になっている

 数人の女性の腕の中には、息絶えたゴブリンの赤子の姿も見えた


 

「さて……どうしたものか (お互い生きる為とは言え、どの世界でも余りいい気はしないな。)」



  一人呟くシンヤだった












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