第15話 初討伐と


 門衛と分かれ、魔徒まとの森に入る3人。



「Dランクに上がるまでは、この森に来なくては行けませんね。」



「だね。結構広いみたいだけど、私達が居ないと分かったら捜索隊みたいなのが出るのかな?」



「どうだろうか? 君達を襲った騎士の死体はあっても、それ以外がないと逃げたと判断されるかもな。暫く探して見つからなかったら、死んだと判断されると思うが」



 また、この森に入るのに少し戸惑う2人。シンヤが声を掛けると、



 「そうですね。他の所は、お城に近いので行かない方が良いでしょう。気を引き締めて行きましょう。ヒカリさん」



「そうだね。シンヤさんに、迷惑ばかりかけられないもんね」



 ユイナは表情が変わらないもより真剣な雰囲気になり、ヒカリは木の杖を両手で握りしめて、力強く頷く。

 2人の話しを聞いていたシンヤは微笑んで



「気合いを入れるのは、大事だけど、余り力み過ぎないようにね。俺は、迷惑と思ってないから気にせず、1つ1つ覚えていこうか……止まって」



 話しの途中で、待ったをかけるシンヤ。止まった2人は信也の見ている方に視線を向ける

 そこには、棍棒を持ったゴブリンが1体と 弓矢を構えているゴブリンが1体 錆びた剣を持っているコブリンが2体 の計4体が、辺りを警戒しながら動いていた




「 ちょうど良い。あのコブリン達と戦おうか。

 まず俺が棍棒と弓矢を持ったゴブリンを、片付ける。

残るゴフリン2体は錆びてボロボロの剣だから斬られる心配はない。

 周りに奴らの味方も居ない。落ち着いて戦かえるよ。

 (……やはり、先程のゴフリンの仲間たちだろうな) 」



 頷いた2人は、それぞれ短剣と木の杖を構えた。構えを見て



「ユイナさん、短剣は両手で構えない方が良い。片手で持って、取り敢えず逆手……短剣を逆さまに構えて持つ方が良いだろう。その方が、力が入りやすいのと鍔迫り合いになった時受け流しやすい。

 それと、もう片方の手は……」



 構えや立ち位置について説明するシンヤ。説明を聞いて1つずつ直すユイナ。

 シンヤは説明している間も、絶えずゴブリンの気配を見ているが、ゴブリンに気付かれた様子は無かった

 一通り説明が終わると



「言った通り今回は直接、戦うのはユイナさんでヒカリさんは [補助魔法]を掛ける。

 俺が2体倒して、残る2体を抑える。

 その後、1体ずつ君達に飛ばすから戦ってもらう。出来るかい?」



「はい、出来ます!」



 「私も、全力で[補助魔法]掛けます!」



 力強く言う2人に、笑みを浮かべて頷くシンヤ。すぐ真剣な表情になり一瞬にして姿が消えた

 ゴブリンに向け構えるユイナに[補助魔法]を掛けるヒカリ


 一方ゴブリンは今だ周りを警戒していたが、一瞬で近付くシンヤには意味が無かった。

 突然目の前に表れた、シンヤに対して驚く間もなく、拳1つで頭が破裂した棍棒を持つゴブリン。

 続いて蹴りで頭が吹き飛ぶ弓矢のゴブリン。


 残り2体が対応出来る分けなく、頭を掴まれる。

 まず1体をユイナの前に投げ、残り1体は捕まれたまま動けずに居た

 投げられたゴブリンは目の前に、女の子であるユイナが立っているのに気付き、シンヤに投げられた事を忘れて変な笑いをして襲いかかった

 襲いかかるゴブリンに、一瞬体が震えたユイナだがすぐ元に戻った



「(大丈夫。陽菜ヒカリさんが側にいる。平井シンヤさんも側で見守ってくれている……落ち着け……落ち着け……出来る!)」



 [補助魔法]と短剣の付与効果で、前より体が軽く力があるのを感じるユイナ。

 短剣を握る手に力を入れて、ゴブリンが上から振りかぶった剣を、受け止めそのまま受け流した

 受け流され体勢を前に崩したゴブリンの、こめかみ辺りに短剣を突き刺して後ろに振り抜いた


「ギェェャャァ……ァ……」



 断末魔を上げて倒れて絶命した。倒しても油断する事なく構え直すユイナ

 倒したのを見て2体目のゴブリンを投げたシンヤ。


 2体目のゴブリンに向け駆け出すユイナ。ゴブリンは剣を右から水平に振るって来た。 剣がユイナに当たる直前、1歩後ろに下がり剣を躱した。

 振り切った所を狙ってコブリンに詰め寄った。短剣を振り下ろそうとした瞬間に右脇に激痛が走った



「っ?! かはっ?!」



 ゴブリンは、振り切っても体勢を崩さずに返す刀で、ガラ空きの右脇に剣を叩き付けていた。

 錆びてボロボロになっていたので、斬れないが痛みで息が詰まり目を見開くユイナ



「結衣ちゃん?!」



 悲鳴に近い声で本名を叫び、ユイナに近付こうとしたヒカリ。シンヤはユイナの動きを見てジッとしている。

 ヒカリより先に、ユイナは歯を食いしばり痛みを堪えると逆手のまま両手で短剣を摑み、あらん限りの力でゴブリンの額に、短剣を突き立てた。

 そのまま、額から顎にかけ短剣で切り裂いた。

 ゴブリンは声も出せずに、後ろへ倒れて動かなくなった

 2体目も倒したと分かり、その場でへたり込んだユイナ。

 ヒカリはユイナの右側に座り[回復魔法]を掛ける

 2人に近づくシンヤ。座ったまま見上げるユイナ



「お疲れさま。1体目は良かったと思う。2体目は下がって躱した所までは良かった。けど、その後は駄目だね。躱した事で油断しなかったかい?」



「はい……倒せると思い近付きました。反撃が来るのを考えてなかったです」



 [回復魔法]で痛みが引いて何時もの表情に戻るが、暗い顔になるユイナ



「そうだね。今回は錆びていたから良かったが、そうでなかったら斬られていた。

 相手によっては真っぷたつだった。チャンスで、追撃するのも大事だが、相手の動きも見るのも大事だね。」



 言われて、しょんぼりした雰囲気になり、顔を下げるユイナ

 ヒカリは回復が終わったけど、何も言わずに話しを聞いていた

 


「だけど、踏みとどまり倒せたのは良かったと思う。前までなら、恐らく出来てなかったとだろうね。2体のゴブリンを1人で倒せたんだから。

 よく頑張ったよ。焦る事はない。この経験を次に生かせばいい (他にも扱える武器があれば良いかもな、)」



 驚いて顔を上げる結衣。優しい笑みで見る信也に



「そう……でしょうか? 倒せたのは、ヒカリさんの[補助魔法]と武器の付与効果にシンヤさんの教えがあったからです。ありがとうございます」



 頭を下げるユイナ



「私の魔法があっても倒せたのはユイナちゃんの実力だよ。シンヤさんの教えも活かせたのもユイナちゃんなの。少しは、自信持って良いと思うよ。私も頑張らないとね。後は、いざって時に本名言わないように気を付けないと……」



 少し間をおいて頷いたユイナ



「よし、後は薬草採取の時間にしよう。余り昆つめるのも逆効果になる事もあるからね」



 言いながらアイテムボックスから例のローブを取り出しユイナに渡すシンヤ。

 ユイナは意味がわからず首を傾ける



「実は、君達を襲ったゴブリンの生き残りに、貼り付けた魔導具の反応がこの先にあるんだ。

 反応がある辺りはゴフリンの気配の数が多い

 恐らくゴブリンの巣で、今のゴブリン達は偵察に来ていたと奴らだと思う。

 これから、行くけど側までは一緒に来てほしい。

 ローブで姿や気配が消せるけど、何があるか分からないからね。少し離れた位置で採取していて欲しい」



「それは……烏滸がましいと思いますが、1人で行くより皆で行った……いえ……その方が良いですね。残って隠れながら薬草採取しておきます」



「一緒に行っても、足手まといになる未来しか見えないもんね。採取頑張ろうね」



 2人頷いた所で



「その前に、今倒したゴブリンの討伐部位回収しておこうか」



 刀を抜こうとしてユイナが止めた



「私が倒したので私が取ります」



 ゴブリンの右顔辺りで屈んで一瞬、躊躇したがすぐ覚悟を決めて右耳を切り落とした。もう1体も同じように切り落とした。シンヤから採取用に貰ったアイテム袋に入れる

 ヒカリが心配そうに声を掛けたが大丈夫と言うユイナ。見た目、気配共に無理してないと分かった



「こうやって少しずつ、慣れていけば良いよ。それでは、行こうか」



「「はい……えっ?」」



 ユイナとヒカリを両脇に抱えると、驚いた声を上げる2人



「いきなりゴメンね。でも、少し距離があるから普通に移動していたら、日が暮れてしまう。

 だから、本気で走って行こうと思うんだ。それで、抱えさせてもらったよ。思うところはあるだろうけど、少しの間は我慢してもらえるかな」



「私は、大丈夫です。時間短縮は必要ですもんね (私と結衣ユイナちゃん軽々抱えられてる)」



「私……も、大丈夫です。お手数お掛けします (男の人に抱えられても大丈夫ですね。下心とかないからでしょうか?)」



 2人の特にユイナが拒否反応してない事に安心するシンヤ


「じゃ、出発するよ。舌嚙まないように、口閉じておいてね」



 足に力を入れて少し前屈みの姿勢をとるシンヤ。

 飛ぶように駆けだした速さに、一瞬息が詰まる2人。

 振り落とされないように、目を閉じて口を噤みシンヤの腕にしがみつく2人であった

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