第14話 初クエストに向けて


 クエスト発注ボードを見ていたら受付の女性が戻って来た。貼ってあったクエスト発注羊皮紙を1枚持って、受付けに行くと頭を下げられた



「すみません1つお伝えする事を忘れていました。

 ギルドポイントは、パーティーで取得されたら均等に分配も出来ますし、ランクを上げる為に1人に多めに振り分ける事も出来ます。

 今回、均等に分配した後に気付きました。申し訳ありません」



「大丈夫ですよ。教えてくれてありがとうございます。2人も良いかな?」



「はい。メインで倒したのは信也シンヤさんなので、私は構いません。」



「私も大丈夫です。寧ろ分配して貰って、ありがとうございます。」



 3人の返答を聞いて安心する受付嬢



「そう言って頂き助かります。揉め事になり易いものでして。こちらのプレートお返しします

 続いて買取ですが、今回のローウルフは全て状態がよく、1体につき1000Sで合計4000Sの買取とさせて頂きます。宜しいでしょうか?」



「お願いします」



「それと、ゴブリンを討伐すると1体につき200S、ローウルフは1体300Sになります。

 今回はゴブリン7体とローウルフ4体で合計2600Sになります。素材のシルバーと別々に受け取りますか?」



「それで、お願いします」



 了承すると、門の所で見た魔導具にシルバーを入れて計算していく。

 4000Sと2600Sあるのを確認してそれぞれ麻袋に入れる受付嬢

 受け取ると、変わりにクエスト発注羊皮紙を渡す

 


「この、薬草採取のクエストの受注お願いします」



 受付嬢は不思議そうに首をひねる



「薬草ですか? あれだけゴブリンやローウルフを倒せるのなら、討伐クエストの方がポイントが入ってランクも上がりますよ。報酬も良いです」



 討伐証明の数を見て、行けると思い聞いてくる受付嬢。

 すると、信也シンヤ結衣ユイナ陽菜ヒカリに振り返って、小声で話すと2人は頷いた



「正直に言いますと、彼女たちはまだ戦いになれてないのです。

 なので、薬草採取をメインにして表れたゴブリン等でで経験を積んで、戦えると判断出来てからにしたいのです」



 信也シンヤの後ろで、ウンウン頷く2人



「分かりました。差し出がましい事をしました。申し訳ありません。

 薬草採取のクエスト受注します。薬草採取は、薬草2つで1Sのギルドポイント1Pになります。ノルマはありません」



「分かりました」



 信也シンヤの返事を聞いて、受付嬢が改めて背筋を伸ばす



「最後に、冒険者登録とクエスト受注ありがとうございます。私はギルド職員のエリナと申します。

 これから宜しくお願いします」



「此方こそ、これから宜しくお願いします」



「はい、ありがとうございます。宜しくお願いします」



「宜しくお願いします。薬草採取、頑張らなくっちゃ」



 それぞれ頭を下げて信也シンヤ達はギルドを後にする。

 エリナは後ろ姿を見送りながら



「(あのシンヤと言う人は何者かしら? ローウルフの切断面を見たローグルさんがとても驚いていたわね。“こんな綺麗な切断面を解体していて見たことねぇ”って。

 今の話からしてローウルフを倒したのは、あの人ですね

 立ち振る舞いに雰囲気から、何処かの国の近衛騎士か騎士団長でもしてたのかしら? それに、一緒に居た女の子達も……っと、いけない、いけない。詮索は駄目ね。切り替えましょう)」



 頭を軽く振り事務作業に戻るエリナであった


 ギルドから出た信也達は、門まで歩きながら



「薬草採取だけど、さっきローブで隠れてもらった辺りより少し奥に入った所でやろうと思う。

 それと、少し話したい事もあるから、着いてから話そうと思うんだ。良いかな?」



「はい、分かりました」



「はい、私も大丈夫ですよ」



 2人の返事を聞いて頷く信也。



「とっ、その前に先程の4000Sを2人に渡しておくよ。それぞれ2000ずつね。」



「「……えっ? ……へっ?」」



 お金が入った麻袋を目の前に、ポカンとした顔になる2人。



「いやいやいやいや駄目ですよ。そんなの。これは信也さんが、倒して貰ったお金なんですから。貰えませんよ」



「陽菜さんの言う通りです。それは、頂けません。」



 両手を前に振ってわたわたする陽菜と首を横に振る結衣


「気にしなくて良いよ。お金はこの、10倍以上ある。それに、色々と用意するものもあるだろから。持った、持った。」


 ぐいっと押す信也。お互い顔を見合わせおずおずと受け取る結衣と陽菜



「「ありがとうございます (……10倍以上?……気にしたら負けかな?)」」



 同時に頭を下げる2人。全く同じ事を考えている



「はい。後、それぞれの呼び名だけど、常に冒険者プレートに登録した名前で呼び合おう。

 じゃないと、何処かでボロが出ると思う。良いかな、ユイナさん、ヒカリさん」



「分かりました。見た目も赤髪、赤目になっていますから。では、シンヤさん、ヒカリさん」



「はい、私も、緑髪、青色の瞳ですもんね。シンヤさん、ユイナちゃん……慣れるまで、少し変な感じしますね。早くなれないと」






 冒険者登録した名前で呼び合う事に決めた3人。

 それ以外の3人の関係性なども含めて、門の所に行くまで話したり名前を呼び合う練習をするのだった。

 入る時に担当した門衛がまた担当になった。

 


「冒険者になったんですね。えっーと、クエストは薬草採取?」



「基本でもありますから。戦闘は採取中にゴブリンが表れたらそれで、1つずつ経験を積んで行こうと考えてます。」



 話しながらユイナとヒカリを見るシンヤ。薬草採取のクエストで、不思議そうにしていた門衛は



「なるほど、そう言う事ですか。命は大事ですからね。慎重に経験を積むのは良いことですね。

 冒険者に成り立ての人に、何故かゴブリンを馬鹿にする人がいまして。それで返り討ちにあい、命を落とす人もいるんですよ」



 納得した表情で話す門衛。話しを聞きながら、決して馬鹿にはしてなかったが、ゴブリンにボコボコにされた時を思い出し苦笑いをする2人

 

 門衛に“お気を付けてー”と見送られる信也達である。

 

 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る