第13話 冒険者ギルドへ



 列に並んでから、少しずつ進んで行き信也達の番になった。門衛の1人が信也に話しかける



「次の人は此方に来て下さい」



 見た目30代の男性門衛が、丁寧に声をかけてくる。手招きしながらの案内を受ける信也達。

 そこは、簡易的な机と見たことない道具が置いてあった



「身分を証明出来る物は有りますか?」



「無いですね。実は、冒険者を目指して今まで、特訓をしていました。ゴブリンやローウルフは倒せるようになったので、冒険者登録をしようと、ランドールに来ました」



「なるほど。因みに、ゴブリンやローウルフを倒した討伐証明部位か魔石はお持ちですか? それを冒険者登録したときに出せたらランク上げのポイントが入りますよ」



 信也の話をうんうん頷きながら聞く衛兵。冒険者登録する人は多いのか、疑う様子も見せずに聞いていた。倒せると言った事で、討伐部位など持っているか聞いてみた衛兵

 アイテムボックスではなく、普通の袋からゴブリンの右耳を7つとローウルフの歯牙4つ取り出した

 それを、見た衛兵は



「冒険者になる前に、これだけ倒せるなら大丈夫ですね。ただ、冒険者になった後なら門は普通に通れますが、今回は1人につき1000S頂きます。

 後ろの女性の方もお仲間ですか?」



「そうです。3人なので、3000Sですね」



 袋からシルバーが入った麻袋を取り出す信也

 麻袋を取り出していると、門衛が、机の上に置いてある道具を触っていた。


 上に大きめのじょうごが付いていて、じょうごの先には0の数字が並んだプレートが付いている。

 プレートの下には取り出し口があり、信也は1度バルボッサ商会で見たことあるので普通にしていた


 けど、初めて見る陽菜は興味津々に、結衣は表情は変わらないが陽菜の後ろから見ている



「見た事あると思いますが、規則なので簡単な説明しますね。

 この魔導具は上の口からシルバーを入れますと、前のプレートに表情されていきます。今回は3000Sにセットしてますので、3000に達したら余分なシルバーは手元に戻ります。では、お願いします」



 頷いてシルバーを入れる信也。シルバーは1000S入れた麻袋を5つ。500S入れた麻袋を1つ用意していたので、3つ麻袋のシルバーを入れた

 きっちり計算出来たのを見ていた門衛が



「きっちりされてますね。次に名前を教えて下さい」



「シンヤです」



「ユイナです。宜しいお願いします」



「ヒカリです。頑張ります」



 門衛が1つ1つ頷きながら、取り出した3つの木の札に名前を書いていく



「この札が冒険者としてランドールに来た証明になります。札を持って冒険者ギルドの受付に行くと登録出来ます。

 この札だけなら冒険者になってないので注意してください」



「分かりました。ありがとうございます (あの魔導具もこの木札は少し違うけど、バルボッサ商会で見た物だな)」



 今まで、笑いながら説明していた門衛が、若干眉をひそめ真顔になる。信也に顔を近づけて




「冒険者になる人に話してますが、S級クラン【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】には気を付けて下さい。

 最近、力を付けてきてS級に上がったクランですが、良からぬ連中です。

 クランの本部はここから反対の4階建ての建物です。くれぐれも近付かないようにして下さい」



 信也は普通に返事をして、陽菜ヒカリ結衣ユイナは緊張した面持ちで頷いていた。

 門衛は、顔を上げ笑顔を見せながら



「と、言いましたが、表だっては余り問題はないので、少し気を付ければ大丈夫ですよ。では、最後に……ランドールへようこそ! 冒険者頑張って下さい」


 門の中に、手を向けて歓迎する門衛。

 信也は“ありがとう”と言って中に入った。陽菜と結衣は頭を下げながら信也について中に入った



「おぉー色々ありますね~ あっ! 獣人の人も居ますよ。屋台もいっぱいです!」



「そうですね。屋台だけでなく大きい店もあるみたいですね」



 ランドールの町並みに、興奮気味になってあっちこっち見る陽菜ヒカリ

 結衣ユイナ陽菜ヒカリほどでは無いが、興味津々に周りを見ている



「観光は後にして、先ずは冒険者登録をしに行こう。正面に見える中央に立っているのが冒険者ギルドの本部だよ (先程、落とした連中はまだ目が覚めてないみたいだな。)」



 チラッとさっき絡まれた場所に目線をやり気配はあるけど、動いてないのを確認する信也シンヤ


 

「この都市は、確かパールド王国にもまたがっているんですよね。でしたら、冒険者になれば移動が出来るんでしょうか?」



「そうだね。帝国から移動出来たら少しは安心できるかな? その前に観光はしたいですけど……う~ん」



「今日は、やることあから、観光は行けないけど明日なら行けるかな。まず冒険者になり身分証を確保が最優先だな」



 頷く2人。信也に付いて向かうが、周りが気になるのかチラチラ辺りを見る陽菜。結衣は、陽菜が転けないようにそっと手を繋いだ。

 驚く陽菜だが、すぐ理由が分かり顔が赤くなり下を向いた。素直に引かれる陽菜。

 前を歩く信也は、気付き少し笑みを浮かべたが、すぐ表情を戻した。冒険者ギルドに向かう3人である


   冒険者ギルド ランドール本部



 都市の中央に位置する5階建ての建物。

 都市の中では1番大きく、1階は受付・買取・クエスト発注ボード等があり、2階は酒場と食事処、上に行くと 治療院、簡易宿、総ギルド長執務室、会議室等がある


 建物の側まで来て、思った以上に大きい建物を見上げて固まる結衣と陽菜。 そんな2人に



「じゃ、そろそろ入ろうか」



 同時に信也を見て頷く2人。信也が先頭で中に入った


 中に入ると、真正面に受付カウンター 左手に受注クエストボードがあり、右手は座れる所と、沢山の資料が置いてある資料室がある

 時間帯は昼が過ぎていたので、人影はまばらだった。そのお陰か、周りから見られる事なく受付カウンターまで行けた


 

 「ようこそ冒険者ギルド本部へ。今日はどう言ったご用件でしょうか?」



 20代位の女性職員が笑顔で挨拶をすると



「冒険者登録がしたい。後ろに居る2人もそうです」



 門衛から貰った木札を出す3人。それを、受け取り確認すると



「すみませんが、此方の紙にご記入をお願いします。お名前は、必ずご記入お願いします。

 他の事は、任意になります。書いてあると、新たなパーティーを組んだり入りやすくなります」



「わかりました。ありがとうございます」


 

 紙を受け取り記入する信也。2人も受け取ると、それぞれ記入する

 3人とも名前だけを記入して提出したが、とくにギルド職員から言われる事は無かった。少しして



「お待たせしました。此方が、冒険者プレートになります」



 渡されたのは、手の平より小さい鉄のプレート。

 表は、ギルドのマークが入っていて、裏に、名前やランク等が書かれていた



「冒険者登録おめでとうございます。これで、Fランクの冒険者になりました。

 Fランクの依頼内容は、ランドール周辺での採取や、ゴブリンにローウルフなどの低ランクの魔物退治になります。

 また、依頼内容以外の魔物も倒すと、ギルドポイントが加算されます。また、全てではありませんが、素材の買取も可能です。

 そして、このポイントはランク上げに必要です。ランクE~Dまでは、一定以上ポイントがたまると上がります。他にお聞きしたい事は、ございますか?」



「冒険者になると国と国の移動は可能に為りますか?」



「国家間の移動は、冒険者ランクがDに為ったら出来ます。シンヤさん達は帝国から来られてますので、暫くは帝国内のクエストを受けて頂きます」



 今は、帝国から出られないと分かり結衣は表情は変わらないが、嫌そうな雰囲気が出て、陽菜の強張った表情はローブのフードで見えないでいた



「分かりました。後は、外でゴブリンとローウルフを倒しました。討伐部位とローウルフの素材を持っていますが、出しても良いですか? (この世界も、討伐部位の箇所は前の世界と同じで助かった)」



「はい、お願いします」



 短く職員の人が言ったので、ゴブリンとローウルフのそれぞれの討伐部位を机の上に置いた



「まず討伐証明はゴブリン7体とローウルフが4体ですね。買取はローウルフが4体で、今回は隣の買取受付ではなく、受付カウンターでさせて頂きます。初回なので此方で買取致します。

 ギルドポイントを付けますので、皆さんプレートをお願いします」



 ローウルフの素材は、奥から男性職員が出て来て持って行った。

 プレートを渡すと、“少々お待ち下さい”と言って討伐部位も一緒に持って裏に引っ込んだ



「冒険者ギルドに入ってから殆ど話せ無かったです。ありがとうございます。平……シンヤさん」



「そうだね。私も見てるだけだった、ユイナちゃん」


「仕方ないよ。まだ、パールド王国に行けないしな」



 偽名で呼び合う2人。そんな2人に頷きながら、クエストの簡単な依頼は残って無いかと、考えている信也であった





※皆、偽名になりました。それに、伴い名前が


・平木 靱平=〉平井 信也=〉シンヤ


・永原 結衣=〉ユイナ


・橘 陽菜=〉ヒカリ

 

暫くの間は、シンヤ ユイナ ヒカリの表記で行きます 



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