第12話 いざランドールへ




 信也が都市に行って頃、結衣と陽菜は



「所で……結衣ちゃん?」



「何でしょうか? 陽菜さん」



 何かを思い出したのか、聞きたそうにする陽菜。

 だけど、モジモジして中々聞き出せずに居ると、無表情で首を傾げる結衣



「あの……聞きにくいんだけど、結衣ちゃんゴブリンに沢山殴られたよね。体は大丈夫なの? 」



「あっ……そう言えば」



 ゴブリンに殴られたとお腹部分を見ると、痣1つ付いてない綺麗な肌が見える。陽菜に背中を見てもらうも、此方も痣1つ無かった



「傷が無い……そう言えば、痛みも無いですね。これは、一体……陽菜さんの回復魔法ですか?」



「私じゃないよ。途中、気を失ってたし……多分と、言うより平井さんだよね」



 自分のお腹を擦りながら陽菜に聞く結衣。陽菜は、苦笑いに為りながら言った



「そうですね。平井さんならあり得ますね……あの人は何者なのでしょう。

 同じ日本人で、私達より多く召喚されている。そして、あの強さ……悪い人ではないと思います。」



「うん。いい人だと思うよ。悪い人なら私達は今頃、どうなってたか分からないもん。強いしスキルも沢山持ってるから……まさか勇者?!」



 勇者発言に、少し目を開く結衣。僅かに首を傾げて


「どう……なのでしょうか? そこは、本人に聞くのは失礼でしょうか? おいおいお話し出来たら良いですね(その前に、少しでも強くならないと行けません。少なくとも、ゴブリンには勝てる位には……)」



「あんまり、平井さんについて聞くのは駄目だよね。嫌われて見捨てられたら……今の私達じゃ生きていけない。甘えてばかりでは駄目だ。強くならないと……」



 お互い顔を見合わせると、力強く頷いた。

 そこに、2人を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、此方には向かって歩く信也の姿が見えた

 

 見えた事でローブを外そうとした結衣を、いきなり左手を前に出して“待った”をかける信也。

 だが、結衣は外そうとしていたので見ていなかった。気付いた陽菜が、結衣の左腕を引っ張ると顔を向け、僅かに目を広げる結衣。

 陽菜は、首を左右に振って信也の方を見たら、結衣も吊られて顔を向ける

 

 同時に信也を見たら姿が消えていた



「「……えっ?」」



 同時に驚きの声を上げる2人。次の瞬間



「ギャァ!!」



 後ろから、獣の悲鳴の様な声が聞こえて慌てて後ろに振り返ると、刀を抜いた信也が立っていた

 彼の足下に、複数の魔物が転がっている



「あれは……確か“ローウルフ”と言うモンスターでしょうか? 実物は初めて見ました」

 


「間違いないよ。狼擬きと言われてる、狼じゃないモンスター。ゴブリンより少し強いと、言ってたね……それより平井さんいつの間に、移動したの?……いつの間に倒したの?」



 半ば呆然と見ていた2人の前で、倒した5匹のローウルフの死体をアイテムボックスに入れる信也。

 更に驚く2人に、手で着いて来る様に促し奥に進む信也。

  暫く進んで



「ここら辺で、大丈夫だろう。もう、出て来て良いよ。驚いたろう」



「ありがとうございます。はい、驚きました。平井さんの速さにも、魔物の接近にも、ビックリでした。」



「ありがとうございました。その、あのローウルフは、もしかして私達を狙っていましたか?」



 ローブを外してお礼を言う2人。若干前のめりになっている



「どういたしまして。いや、あのローウルフは俺を、狙っていたんだ。君達の近くまで来ていたからあそこでローブを脱いだら危なかったから止めたんだ」



「そうだったんですね。ありがとうございます。その、後ろに背負っているのが、私達の服ですか?」



「何から何までありがとうございます。陽菜さん、少し落ち着きましょう」



 陽菜は話を聞きながら、更に前のめりになった。結衣は、落ち着くように言い、両手でジェスチャーする

 笑いながら、袋ごと陽菜に渡す信也。



「大丈夫だよ永原さん。着替えは同じ物を買って下着以外は袋に入っているよ。流石に、下着は買えなかったから、後で必要な物も買いに行こう。木の杖は橘さん。中にある短剣は永原さんのだ」



 うんうん頷きながら聞く2人。



「中に、リュックみたいな袋が2つあるから取り敢えず着替えを入れるといい。制服は人目につかない方が良いから袋に入れてアイテムボックスで管理しようと思う。それと、着替えは、ローブを使ってね」



「本当にありがとうございます。制服はお願いします。そうですね。それ以外の荷物は自分で持ちます」



「分かりました。ありがとうございます。さっそく着替えよう結衣ちゃん」

 


 頷いてローブで姿を消して着替える2人。信也は背を向けて着替え終わるまで周りを警戒していた


 暫くして着替え終わりローブを外した結衣はそのままローブを信也に返した。

 受け取りながら2人の姿を見る。

 茶色の長袖服と黒のズボンは2人一緒だが、結衣がマントを羽織り陽菜がローブを着ていた



「平井さんありがとうございます。ピッタリでした。この服なら目立たないと思います。短剣もありがとうございます。短剣の鍔の真ん中にある宝石みたいな物は何ですか?」



「ありがとうございます。私もピッタリです。このローブも思ったより軽いですね。それと、木の杖の先端に付いてる綺麗な石は何ですか?」



「気に入って貰えて何より。簡単に武器の説明をするね。共に付いている石は魔法石と言って、それぞれ効果が違うんだ。

 まず短剣の鍔に付いてるのは身体強化の魔法石で[攻撃・防御・素早さ] が少し上がるんだ。

 木の杖の魔法石は魔法に関する強化で[魔力・魔法効果] が少し上がるんだよ。服とマントなどは初心者用で付与効果は無いけどね」



 説明を受けてまじまじと魔法石を見る2人



「さて、これから都市……あの町は中立都市ランドールと言うそうだ。

 入るのに、二人は本名のままはまずいので偽名を使おう。

 性は要らないので、名前だけ考えよう 

 (俺は、思いっきり偽名名乗ってるけど……ゴメン)」



「都市だったんですね。確かに本名は危険だと思います。名前……名前……結衣……ユイ……ユイナ 私はユイナと名乗ります。余り違う名前にしない方が良いと思うので」



「都市って言う事は大きいのかな? それより、偽名かぁー 名前、名前は……ひ……ひ……ヒミカデトックス!……コホン……ではなく、ヒカリ……私はヒカリで行きます」



 途中ボケた陽菜だが、信也と結衣がとも無反応だったので、咳払いで誤魔化した。

 2人の偽名を聞いた信也は2~3頷いて



「2人とも良いと思う。ユイナとヒカリで行こう。名前も決まったから、これからの行動を、説明するよ。都市に入り冒険者ギルドで冒険者登録をする。

 そうすれば、身分証の代わりになるし、身元を隠して動きやすいだろう。

 そして1つ簡単な依頼? クエスト? 後から呼び方分かるか。1つ熟して冒険者の仕事を経験してもらい実力を身に付けよう。

 それと、都市に入るのに門衛に名前を伝えるのと通行料がいるらしい。金は此方が出すので気にしなくていい」



「都市に入るのに通行料が必要ですか? 通行料まで出して貰えるとは申し訳ありません。でも毎回通るのに、出していたら結構お金かかりますね」



「冒険者ギルド……どんな所だろう。ってか、通行料まで取られるなんて嫌だね」



 2人とも通行料で、引っかかっていた



「通行料は冒険者ギルドに登録するか、商人は顔パスで通れるから、先ずは、ギルドに登録しよう。」



 信也の話を聞いて頷く2人。



「っと、忘れる所だった。さっき倒したローウルフは素材の買取も出来るんだ。

 で、アイテムボックスは、余り見られたくないから一緒に買ったアイテム袋に入れ替えるからちょっと待ってね」



「それ、実地訓練でも使いました。魔法で多くの物が入いりますね。金額なよって入る量が違うとか」



「確かにテントとか布団とか入れてましたね~」



 信也は頷きながら、ローウルフ4体をアイテムボックスから取り出しアイテム袋に入れ直した

 そして、信也を先頭にランドールに入る為に並んでいる列の最後尾に並ぶ3人であった



「(……所で、ヒミカデトックスとは何だ? 彼女達の元いた世界のなにかか?)」



 向かいながら考える信也。陽菜達が元いた世界の芸人の名前だか、違う世界の信也は勿論、興味のない結衣は知るよしが無かった



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