第11話 中立都市ランドール


 2つの国をまたいでいるが、治めているのは冒険者ギルド。しかも、ただの冒険者ギルドではなく本部が都市の中心に建てられている。

 

 何故、冒険者ギルドが治めれるのか? それは、かつて魔物や魔獣を退治する者達が集まり、村を作ったのが始まりであった。

 そこから町となり、冒険者ギルドが出来て各地に支部が広がり、都市となり今に致る

 

 信也は裏道から表の大通りに出た。大通りは、門から中央の冒険者ギルド本部まで一直線に繋がり、大通り左右には色々な屋台に商店などの店が並んでいた。

 大通りを、外れると所々大きな建物や住宅が建っている。信也は大通りを歩きながら



「(看板の文字は普通に読めるし、会話も分かる。この世界でも【翻訳スキル】はキチンと発動しているな) っと、この店だな」



 歩いていた信也が足を止め、大きい建物を見上げる

   バルボッサ商会


 武器・防具・各種道具類から生活用品まで、あらゆる物を取り扱うランドールの中でも上位に入る商会である。

 信也は、ここで物を売り換金しようと考えた。この世界に来て間もない信也が、何故この店が良いと分かったか。

 それは、気配などを探るスキルを使って、不穏な気配が無いか探りながら調べていた。この商会から不穏な気配が無いので選んだのだった。


 正面にある大きい扉を開いて、中に入る信也

 1階は左右に階段があり、武器と防具を売っているからか、冒険者風の姿がちらほら見える。

 右側が販売の窓口で、左側が買い取りの窓口となっている。

 武器や防具を見ながら、買い取りの様子を伺う信也。暫く見て買取の流れが分かると、人が居なくなった所を狙い窓口に向かった


 

「いらっしゃいませ。バルボッサ商会へようこそ。本日は買い取りで宜しいでしょうか?」



 綺麗なお辞儀をする、穏やかな笑みを浮かべた金髪の緑色の瞳をした女性エルフ。



「はい、お願いします。物は鋼の剣が1本と鉄の剣が2本。それと、金のペンダントの買取をお願いします」



「畏まりました。お預かりさせて頂きます。店内で待たれますか? 外で待たれますか?」



「店内で待ちます」



「畏まりました。では、此方の札をお持ちください。もし、お出かけになられる時も、忘れずに札をお持ちください」



 札を受け取る信也。それから、待つこと約十数分

 呼ばれたので、窓口に向かった



「大変お待たせしました。まずは、内訳をご説明させて頂きます。

 武器は全て新品でしたので、鉄の剣が1本2000S 〔シルバー〕で2本で4000Sです。鋼の剣は2G〔ゴールド〕です。

 それと金のペンダントは[防御上昇]のスキルが付与されていますので20Gです。合計で22Gと4千Sになります。如何なさいますか?」



「それで、お願いします」



「畏まりました。このままお買い物もされますか?」



 エルフ店員の質問に対して



「はい、します」



「畏まりました。それでしたら、ご購入される商品を此方にお持ち下さい。買取金額から引かせて頂きます。

 それまで、札はお持ち下さい。購入の時一緒にご提示お願い致します」



 頷いて離れる信也。待ってる間に、選んでいた商品を取りに行きながら



「(この世界もお金はS〔シルバー〕とG〔ゴールド〕なのか。1S=1円として1G=1万円って所だな。買取金額は22万4千円ぐらいとして、装備で幾ら引かれるのだろう)」



 自分の鉄の胸当て、2人には女性用冒険者の上下セットの服を数枚、ローブとマント、武器に、小さい魔法石が付いた木の杖と[攻撃・防御・素早さ]がほんの少し上がる短剣を購入した



「ありがとうございます。ご購入の金額を引かせて頂きまして、合計で13Gと5500Sになります。最終のお買取金額で宜しいでしょうか?」



 “大丈夫です”と頷く信也。そして商品とお金を受け取り



「ありがとうごさいました。またのお越しをお待ちしております」



 挨拶を背中に聞きながら店を出たのだった。もと来た道を帰るのだが



「(……店を出てからすぐつけられてるな。姿から斥候レンジャー盗賊トレジャーハントだな。前からも来ているか……スキル見られるのはまずいから……潰すか)」



 なるべく防壁近くまで行く信也。周りに着いて来る者達以外の気配がなくなった所で



「さて、ここなら良いだろう。さっさと出てこい」



「クククククッまさか、貴様から来るとわなぁ」



 声と共に、後ろから盗賊が2人に、真ん中に斥候が1人。前から斧を背負った戦士と鉄の剣をぶら下げた剣士が、それぞれ1人ずつ表れた。すると斥候が



「見た所、大したことなさそうだな。買った装備と換金した金含めて全て置いて行ったら、命だけは残してやるよ。そういや女物の服も買ってたな。ついでに、女も……っ?! 」



「話が長すぎる上に隙だらけだ」



 言いながら、両脇に居た盗賊の顔を、それぞれ摑み持ち上げながら、斥候の鳩尾に蹴りを入れて鎮める。

 同時に両手に少し力を入れて、声を上げる間もなく盗賊達の意識を刈り取った



「てめぇ、スキル持ちかぁ?!」



 言いながら戦士が斧を剣士が剣をそれぞれ構える



「(スキルはあるが、全く使ってないぞ) 言う必要はあるまい」



「ふざけんなよ! お前、俺達がS級ギルドパーティー【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】と知っての……ごっ?!」



「知るか」



 剣士が言い切る前に、剣士と戦士の鳩尾に拳を叩き込むと、気絶する2人



「(何かよく分からないギルドパーティーの名前言ってたな。此奴らほっとくと面倒くさそうだし、完全に消すか?  そうすると、時間が掛かるな。

 幸い周りに人は居ない。あの娘達をほっとく訳にもいかないな)

 次、絡んで来たとき考えるか。いざとなったら潰せばいい」



 結論づけて、 【隠密】【暗躍】 スキルを発動させて防壁を越える信也であった







 



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