第10話 町に向けて……
森の中を歩く3人。今、彼等が向かっているのは
「もう少しで、町か村に行けるはずだ」
「はーい、でも凄いですね。場所が分かるなんて。結衣ちゃんも何処で地図見たの?」
「お城の中に、大きい地図が掛かっていたのを見て覚えたんです」
結衣がこの世界の地図を覚えていて、陽菜たちがどこら辺を走って来たか思い出し、信也の【気配察知(EX)】 【探索(EX)】 で、人の気配を探り数が多い方に向けて歩いている
「色々なスキルがあるんですね。日本に戻れるか分からないので、私も回復以外のスキル覚えたいな」
「スキルは、その人が経験した事から基本は身につく。だから、初期スキル以外も身につくんだ。
ただ、覚えられるのと、そうでは無いのがあるからね。それと、元々覚えているスキルは、ランクが上がりやすい。
特に召喚された人で、低いランクのスキルを使い続けたらね。俺はそうだった」
信也の話を聞いて、スキルプレートを見る陽菜。すると
「私の【補助魔法(弱)】が【補助魔法(小)】に上がってる?! 回復魔法は変わらないけど……逃げてる間はずっと使ってたもんね。もっと色々と覚えよう!」
「そうだね。1つずつ覚えていけば良い。ここのカイルド帝国を越えたら、簡単には追って来れないだろうから」
(勇者召喚を国民に発表しているかどうかにもよるが……)
「スキルは経験で覚える……
(そう言えば、陽菜さんは中学の時に運動部入ってましたが、運動より裏方が良いとマネージャーみたいな事をしていました。だから、回復と補助のスキルがついたのでしょう。阿仁間さんは頭の良さから【賢者】 秋多さんはお兄さんに無理矢理、剣道させられたと言ってました。私は……私は、何もない。だから……こんな……)
結衣の思考が負のスパイラルに入りかかった時
「今は、スキルの話は一旦置いておこうか」
「えっ? あっ、結衣ちゃんまた変な事を考えてるね。見た目変わっても分かるんだよ」
「あっ はい……ごめんなさい」
(何故分かるのでしょうか? 平井さんは気配察知とかで分かるとしても、陽菜さんは何故こうも気付くのでしょう。皆さんからは、わかりにくいと言われるのに……)
“謝らないで”と、笑って言う2人。陽菜が、結衣に何か話そうとした時、信也が左手を2人の前に出して動きを止める。
驚いて信也の顔を同時に見る2人。信也は何も言わずに、視線を先に向けた。釣られて向けた先には、森の中に、道があった。
道の先には、防壁に囲まれた町が見える
「ビンゴだな。俺は、町に入り換金出来そうなものを金に換えて君達の服を買ってくるよ。その制服では目立つからね」
「そうですね。何から何まですみません。お金は、何とかお返します」
「あはは~ ありがとうございます。待ってる間、私達はどうしましょうか? 薬草採取でもしましょうか? 習ってるので、出来ますよ?」
「採取はしなくて良いよ。待ってる間は隠れてて欲しい。永原さんが羽織っている隠密ローブと言って【隠蔽】のスキルが付与されているんだ。完全に羽織って【隠蔽】と言うと、周りの風景に溶け込んで、見えなくなるし、感知されなくなる。余裕で2人羽織れるよ」
信也の説明を聞いてまじまじとローブを見る2人
「凄い物なんですね。ですが、見えなくなると、平井さんからも見えないですよね。戻って来られたらローブを外せば良いですね」
「そこは、大丈夫。持ち主は俺で設定しているから、俺からは分かるんだ」
「ほぇ~便利な物ですね。結衣ちゃん一緒に被ろう」
結衣がローブを広げると、いそいそと引っ付く陽菜。完全に被ると
「被りましたね。では……【隠蔽】 えっ? 周りが見える様になりましたが大丈夫ですか?」
「大丈夫。それはスキルが発動して、内側から見えるけど、外側からは見えなくなっているんだ。
内側で話をしていても、外には聞こえないから話をしても大丈夫。因みに、俺は持ち主だから外からでも話せるんだ。じゃあ、ちょっと行って来るよ」
「これなら誰が来ても安心ですね。はい、お願いします」
2人に見送られ、1人森から出て町に近づく
「町と言うより都市に近い大きさかもな」
信也は改めて防壁を見て呟く。信也の言うとおり町ではなく都市であった
カイルド帝国とパールド王国にまたがる都市
中立都市ランドール
結衣が地図を見たとき、地図の見方がきちんと分からずに町と思っていただけである
離れた位置から門と門衛の姿を確認する。門衛は5~8人ほど居て馬車と徒歩で分かれて検問している。【聴覚(EX)】を上げて会話を聞く
「……なるほど。通るには、証明書を見せるか金を払うかだな。証明は冒険者ギルドで貰える冒険者プレートでも変わりになるか。そこら辺は、前の世界と変わらないな
持ってる金が使えるか分からない。真正面から入るのは得策ではないな」
(まぁ、前の世界は勇者一行で何処の町でもフリーパスで入れたけど……)
防壁に目を向ける。暫くあることを確認した
(防壁は高いが防御魔法などは、何もかかってない。防御の上に見張りも立っている様子もない……不用心だな。それだけ平和と言うことか? 魔界に近く魔王に侵略されそうならもっと固めるはず……やはりか)
「まぁ、その方が此方には好都合か 【隠密(EX)】【暗躍(EX)】 」
気配と姿を完全に消す信也。そのまま軽々と、防壁を越え中に入る
前の世界では、勇者一行の
「……こんな簡単に入れて、本当に大丈夫か? この都市?」
中に入って裏道を歩きながらスキルを解除し呟く信也であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます