第8話 目が覚めて……
頭を抱えうーうー唸ってる
「……うみゅ? あさぁ?」
目を擦りながら上半身を起こす陽菜。目を覚ました陽菜に近付く結衣
「陽菜さん 朝ではないですよ。体は大丈夫ですか?」
「うーのー……っ?! そうだ?! ゴブリンは……ってあれ?」
少しぼーとしていたが、気付いたのか慌てて立ち上がった陽菜は周りにゴブリンが居ないことに不思議そうな顔になる。結衣が目覚めた事で、悩むのを止めた
(何故、うの?)
「気付いたみたいだね。体は大丈夫?」
「っ?! 誰! 結衣ちゃんに近付かないで!」
「(永原さんと反応が一緒だな) 安心して欲しい。君達に危害を加えるつもりはない。落ち着いて、橘さん」
「えっ?! 何で私の名前を? もしかして結衣ちゃんが話したの?」
構えたまま結衣を見る陽菜。頷く結衣は
「陽菜さん、この人は私達を助けてくれた 平井 信也さんと言います。大丈夫です……ですよね?」
「君達に何があったかは分からないが、先程も言った通り危害を加えたりはしない。大丈夫だ」
軽く首を傾けながら、信也に聞く結衣。2人に向けて話す
少しして木の杖をしまう陽菜。頭を下げて
「助けてくれたんですね。ありがとうございます。私は、橘 陽菜と言います。それと、ごめんなさい」
「平井
お互い頭を下げる信也と陽菜。頭を上げると、結衣が陽菜のスカートを引っ張り座る様に促す。
因みに、結衣と陽菜の所に、4人用レジャーシートみたいな物を畳んでひいてあった
「あの、この敷物は平井さんが出したんですか? それと結衣ちゃんが着ている布みたいな物もそうですか?」
「そうだよ。永原さんは服が、えらい事になってたからね。シートは座るにしろ横になるにしろ、直は汚れるから出したものだね」
「そうなんですね……それなのに、私……ごめんなさい」
座ったまま頭を下げる陽菜に、“気にしてない” と手を出す
「あの……平井さん。さっき私達の召喚された人数聞いて驚いてましたけど、何かあるのでしょうか」
「そうだな……話しても良いけど、その話の前に、君達が召喚されて今まで何があったのか教えて欲しい。話せない事は話さなくてもいいから。
恐らく、君達の話を聞いてからの方が良いと思うが、どうだろうか?」
お互い顔を見合わせる2人
「どうする、結衣ちゃん。私は、いいけど結衣ちゃんは大丈夫?」
「私も、構いません。私の考えですが、あったことをそのまま話した方がいいと思います」
“分かったよ” と頷く陽菜。結衣が “少し長くなりますがお話しします” と言って話し出した
・クラスの半分が召喚に巻き込まれた事
・ 召喚後にあった隷属の首輪や素質にスキルの話と会得(結衣は自分の素質とスキルについては濁した)
・ 城内で訓練等をしていた事 ・ 実施訓練前にクラス担任から襲われそうになった事
・ 実施訓練が始まって今度は付き添いの騎士に襲われ、自分が慰み者になること
・ 騎士に襲われた時に、強い魔獣が表れ騎士に飛びかかった隙に逃げて、逃げた先でゴブリンに襲われ今に至る事
結衣が主で話して、途中に陽菜の事も話していた。途中、結衣が襲われそうになった所で、少し表情が歪み言い澱みそうになるが、陽菜がそっと手を繋いでいた。
真剣な表情で話を聞く
「以上が、わたし達に起きたことです」
「なるほど……言いにくい事もあったろうに、話してくれてありがとう。」
2人に、頭を下げる信也。特に、結衣に深く頭を下げた
「話した方が、2人で行動してるのも分かるとおもいましたから……それで、今の話から分かることはありますか?」
「そうだな。少し話がずれるけど、橘さんの木の杖を見してもらえるかな?」
「えっ? この杖ですか? はい、どうぞ」
陽菜から杖を受け取りあらゆる角度から見る。暫く見てから
「俺は、マル……賢者や魔法使いではないから全ては言えないが、この杖には、居場所感知の魔法式がかけられている。簡単に言うと、居場所がばれる」
「「えっ?」」
同時に驚きの声を上げる2人
「い、居場所がばれるとは、もしかして私達の居場所が分かるんですか?」
「そんな、じゃあやばいよ結衣ちゃん。どうしょう、捨てたらいいの? 捨てて逃げないと……あわあわ」
顔が真っ青になる結衣と立ち上がっておろおろする陽菜
「2人とも落ち着いて。2度と使い物にならないけど、解除なら出来る。まぁ、解除と言っていいのか分からないが、兎に角、可能だ。今、してもいいかな?」
「「はい、お願いします」」
これまた、同時に、即答する2人。一瞬、少し笑いそうになるが、顔を引き締め立ち上がる
「(当分使わないと思っていたのに、すぐ使うことになるとはな)」
右手に、意識を向けると、瞬時に一振りの刀が表れた。突然表れた事に驚く2人。信也は2人から少し離れた位置に立ち、木の杖を空中に放り投げた。
左手で鞘を持ち、居合いの要領で斬る信也。余りの速さで、2人には刀を抜いたかな手が動いたの?位しか見えなかった。
刀を鞘に治めたと同時に、木の杖は細切れになった。バラバラになった木の杖から黒色の靄みたいなものが表れ木の杖と、共に跡形もなく消滅した
すぐに、刀を右手に持ち替えて右手に仕舞う
一瞬の出来事だった為、ポカンとした表情で見ていた2人
「あの……平井さん、今の刀はどこから? これで居場所は見つからないのですか?」
「刀の事は、今は詳しく言えないんだ。黙っててくれると助かる。
居場所感知は完全に消えたから大丈夫。君達が、着ている服は日本の制服だね。特に、術は掛かってないから大丈夫だろう。
その短剣は騎士の物だからそれも問題ない」
(見るものが見れば見た目で分かるが……大丈夫だろう)
「分かりました。ありがとうございます」
何度か頷く2人。頷くタイミングも一緒で、思わず笑みがこぼれる2人。
(何でしょう、凄く強いのは分かりました。いや、どれ位強いのか分かりませんが。
私達を守ってくれるとの事ですが、無償と言う訳ではないでしょう。手は出さないと言ってましたが、助けたお礼にと言われたら仕方ないと思いましょう。 どうせ、私のからだなんて……)
(ほえー 何が起きたか分からない間に、木の杖が消えちゃった。とりあえず大丈夫そうだし一息つけるのかな? んっ?)
それぞれ考えていた2人だが徐に、陽菜が結衣の頬を軽く引っ張った
「あのー陽菜さん。何故、私の頬を軽く引っ張ってるのですか?」
「んっ 結衣ちゃんがよからぬ事を考えてる顔をしてたから。良い、自分の体は大事にする事! 折角逃げて来たんだからね」
「はい……そうですね、ありがとうございます、陽菜さん」
笑いながら手を離す陽菜。わずかに微笑んで、頷く結衣。
そんな2人を優しそうに見つめる信也。真剣な表情になり信也に向き直る結衣
「本当にありがとうございます、平井さん。私は覚悟出来ました。もし助けて頂いたお礼に……その……私の体を求めるのでしたら何時でも……」
「「いやいや、何でそうなる?! さっきの話はなんだったんだ?!」」
信也と陽菜に同時に突っ込まれ、僅かにキョトンとした顔になる結衣であった
もしかしたら、彼女は天然なのかもしれない……
※靱平は偽名を使っているので、暫く表記は平木 靱平から平井 信也の両方で書きます。ご了承下さい
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