第3話 集団召喚②スキルと素質



 エレアナの後を付いて行くと、先程より一廻りほど小さい部屋に通された。目の前に、3つある台の上にそれぞれ水晶玉が乗っている。エレアナが



「それでは、水晶玉に両手をかざして下さい。そうすれば、目の前に素質とスキルが表示されます。また、訓練や戦闘で経験を積むと、個人差はありますがスキルが増えます。」



「よっしゃー! 俺から行くぜ」



 先程まで、文句を垂れていたのに、いの一番に真ん中の水晶玉な行こうとした秋多に、“待った”を掛ける阿仁間。



「何だよ? 3つもあるから、阿仁間も好きな所に行けばいいだろ」



 若干ふて腐れた感じで言うと



「ごめん、そうじゃない。部屋に入って来た人数を見て分かったけど、僕らのクラスは40人以上居るのに、今数えたら先生合わせて21人しか居ない。これは、どういう事でしょうか?」



 阿仁間に言われ驚いてクラスメイトを見る秋多とお互いを見るクラスメイト。

 阿仁間はエレアナに視線を移すと



「恐らく残された方々は、素質やスキルが無かった。若しくは、召喚するラインの素質やスキルが足りなかったと思われます。なので、ここにおられる方々は、間違いなく“選ばれた”方々です」



 笑顔を見せるエレアナ。その優しい微笑みは容姿と相まって、男子の多くが、顔を真っ赤にして見とれていたり、目を逸らしたりしていた。

 


「では、召喚されていないクラスメイトは元の世界に残ったとの認識で良いですか?」



 阿仁間の質問に微笑みながら頷くエレアナ



「よ、よし、理由も分かったし俺から行くぜ」



 若干顔が赤いのを、誤魔化すようにしながら、真ん中の水晶玉な手をかざす秋多。



「では、左側は僕が行きます」



 此方は表情を一切変えず左の水晶玉に手をかざした。



「右はアタシが行くわ」



 名乗り出たのは、女子カースト上位の肩より長い黒髪、茶色の目をした多立ただ 寧留ねる 

 自信満々に右の水晶玉に行って手をかざす。

 手をかざした順に、水晶玉が輝きだす



「何だこれ? 体の中から温かいものがこみ上げてくるぞ?!」



「体に眠っていた素質とスキルが目覚められているのです」



 自身の体に起こってる事に、驚く秋多に説明するエレアナ。左右の2人にも、同じ事が起こり阿仁間は冷静に分析して多立は楽しそうにしている。

 少しして水晶玉の輝きが落ち着くと、それぞれの顔の前に、半透明なプレートが表れた。



「何か書いてあるな。どれどれ~名前と……っ?! ゆ、勇者?! 俺、勇者だ! スキルに[身体強化]と[聖魔法]それと[心剣]?と書いてあるぜ!」



 秋多の発言を聞いて皆が驚いていた。特に、驚いていたのが、エレアナ含めた帝国側の人達で



「いきなりスキルが3つも付くとは、流石勇者様でございます。何卒、私の帝国をお救い下さい」



 秋多の右手を両手で持ち、潤んだ目で顔を見つめるエレアナ。秋多は“任せとけ!”と言いながら笑って答えていた



「ふむ、僕は賢者とありますね。スキルは[魔法5属性][魔法耐性][魔法強化]ですね」



「何と、魔法5属性とな?! 火・水・風・土・雷が使えるのか、一握りの優秀な魔法使いでも3属性が限界じゃと言うのに。しかも、勇者様と同じくいきなりスキルが3つつくとはのぅ」



 最初に、声を掛けて来た神官爺さんが驚きの声を上げる



「アタシは……聖女だって! アタシに相応しいじゃん スキルは[回復魔法(大)] [解毒魔法(大)] [補助魔法] のアタシも3つある」



 多立の聖女とスキルを聞いて、僧侶ぽい姿をした男性が



「聖女とは素晴らしいですな。いきなり[回復魔法(大)] [解毒魔法(大)]とは、帝国内に共に(中)までしか使える者が居ないのに、これが勇者召喚」



 言われてドヤ顔をして胸を張る多立。召喚された時は不安な表情をクラスメイトがしていた。

 今までの、話を聞いてる内に、多くのクラスメイトが期待に満ちた表情に変わっていく。

 秋多が終わったら直ぐに、東城が手をかざしていた。



「私は、重戦士か。 スキルは[剛力] [鉄壁] の2つか……訓練したら増えるかもしれんな」



 東城が終わると、次々、水晶玉に手をかざすクラスメイト。素質が、騎士・僧侶・剣闘士・魔法剣士・剣士・魔道士など色々あり、中には家事屋に建築士などもあった為に、一喜一憂していた。

 スキルも最初の3人以外は1~2のみしか出なかった。家事全般や建築などの戦闘に直接、関わらないクラスメイトは落ち込んでいたり安堵していたりした



「家事や建築も魔王討伐には必要な素質です。力をつけたら遠征もあります。その時、拠点設置に料理など必要になります。、勇者様が全力で戦える為に大事な戦力の1つですよ」



 エレアナに言われて嬉しそうにしていた。そうこうしている間に、最後の結衣の番になった。表情はほぼ無表情で分からないが、内心自分は何が来るのか、楽しみにしていた。



「私は……学者? スキルは……無い」



 エレアナに神官爺さんや僧侶の男性などが学者? と騒然し始める。表情には、余り出てないが、廻りが不思議そうにしたのと、スキルも無いので外れを引いたと思いショックを受ける結衣。



「学者と言うのは、聞いた事がありませんが、他の方には無いものが、あるのでしょう。いずれ分かると思いますよ」



 エレアナの言葉で、落ち着きを取り戻す神官達。

 内心落ち込んでいる結衣に



「結衣ちゃん。大丈夫?」



 声を掛ける陽菜に



「えぇ大丈夫です、陽菜さん……大丈夫ですとも」



 (大丈夫じゃなさそう……) 


「えっと……その、あれ、そう、学者って響きなんか格好いいよね。頭良いって思うよ! 色々知識で問題解決! みたいな」



 わたわたしながら言う陽菜に、一瞬驚いた雰囲気になったが、優しく微笑んで



「そうですね、ありがとうございます。所で、陽菜さんは何を発現させましたか?」



「ぬぇ? 私の? 私は回復士だって、スキルが回復魔法(小)と補助魔法(弱) なの。回復士なのに補助魔法使えるんだよ。2つとも、皆より弱いけどね」



 わたわたしてる所に、聞かれて変な声を出したが、笑顔で答える陽菜。




「弱くても、2つスキル使えるのは、良い事だと思います。私も、色々と試して行きたいと思ってます。共に頑張りましょう」




「うん! 頑張ろうね、よし!」



 握りこぶしを胸の前で作り、ふんすと気合いを入れている陽菜。

 


「皆さん素質とスキルが分かりましたので、これからの事を、より詳しくお話しさせて頂きます。ここは、帝国城の敷地内にある神殿になります。お話は、城内の会議室にてお願いします。では、此方へ」



 エレアナを先頭に、城に向けて歩き出すクラスメイト。召喚された時は不安と緊張で、殆ど話さなかったが、今は表情も明るくなり楽しそうに話ながら歩き出した



 (ああ言ったものの、本当に大丈夫かしら?)



 最後尾で、見た目は無表情だが、内心、不安一杯のままでいる結衣であった




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