第2話 集団召喚①



 靱平がバルガニアから転移させられる少し前の日本にて




 日本にある遙崎高校そこの2年A組に居る、黒目で黒髪が肩から腰の間まである女の子 永原ながはら 結衣ゆい 

 今日も朝から、息を潜めなるべくクラスメンバーと、関わらない様に隅にある席に座っていた

 


「(今日も何事もなく、必要な事以外で誰にも関わらず過ごせますように)」



 ひっそりと過ごしたいと思う結衣。そう思うのには、理由がある。小さい頃からの出来事が原因で、目立たない生活を送るようになっていた。

 何時も通り本を読んで、ホームルームが始まるまで、待っていたら



「おはよう、結衣ちゃん」



 挨拶されて、顔を上げると、黒髪を左右2本に束ねて眼鏡を掛けた女の子 たちばな 陽菜ひなが、笑顔を向けていた



「おはよう御座います、陽菜さん」



 この高校において、唯一仲が良い人、陽菜に微笑みながら挨拶を交わす結衣。そして、たわいない話をしていると、40代ぐらいの男性教師が入って来た



「みんなー ホームルーム始めるから席に着いて……っな?!」



 教壇の前に立った瞬間、教室の中が眩い光に包まれた。余りの眩しさに、クラスに居る全員が目を瞑る。

 しばらく目を瞑っていると



「おおー 召喚に成功しましたぞ!」



 聞いたことの無い声が聞こえ、驚いて目を開ける結衣。目に飛び込んで来た景色に更に、目を見開いた



 「な……何だ、ここは……」



 教師が驚きの声を上げる。足下には巨大な円形の図面[魔方陣]が描かれている。回りを見れば、中世の神殿を思わせる壁で囲まれていて、更に見たことない服を着た人たちが立っていた



「驚かれるのも無理はありませんな。説明をさせて頂きたい」



 先程と同じ声が聞こえ、そちらに向くと、よくファンタジーに出てくる神官ぽい服を着たお爺さんが立っていた。

 



「それは、私からご説明させて頂きますわ」



 神官(?)お爺さんの後から声が聞こえて、お爺さんはさっと横にずれる。表れたのは、豪華な衣装を着た、綺麗な金色の髪と目をした美少女



 「皆様方、初めまして。私は、カイルド帝国第1皇女 エレアナ・レディト・カイルドと申します。皆様を、今回召喚したのは、勇者召喚と呼ばれるものです」



 勇者召喚と言われて、どよめきが広がる。未だ固まっている教師に代わり学年1イケメンと言われているクラスカースト上位に居る茶髪の秋多あきた 槍魔やりまが聞いた



「勇者召喚って何だよ? まさか、魔王か何かと戦えとか言うんじゃないだろうな」



 エレアナは少し困った表情になり


「申し上げにくいのですが、その通りです。召喚された皆様は、私どもにはない素質やスキルを兼ね備えています。そのお力は、とても強力なものです。

 私どもに、出来る事は何でもさせて頂きます。魔王討伐出来た暁には、元の世界にお戻り出来ますし、貴族として残って頂く事も出来ます。是非、、そのお力をお貸し下さい。」



 言い終わると、優雅に頭を下げるエレアナ。回りにいる人たちも頭を下げた。

 秋多が、何か言おうとしたが、そこに学年成績1位の眼鏡を掛けた自称インテリオタク 阿仁間あにま 飯名いいな



「聞きたいのですが、素質やスキルと言われましたね。僕達からしたら魔王も含めそれらは想像上のものでしかない。どうやって、素質、スキルを判定するのですか?また、そのスキルは皆さんはないのですか?」



「そうですね。魔王は後ほどご説明します。スキルは全員ではないですが、身に付けている者もいます。ですが、皆様ほどでは、ないかと。まずは、素質やスキルを確認して頂きます。」



 エレアナは後に振り返り、従者とおぼしき人が宝石の着いた首輪が沢山入った箱を持ってきた



「素質やスキルを測るためこの首飾りをお着け下さい。これは、防御の術も組み込まれていて皆様をお守りします」



 未だ戸惑うクラスメイトや教師を余所に、手を伸ばしながら阿仁間が



「スキル測定に身を守るものなら皆さんも付けているのですね」



「ええ、その通りですよ」



 と、言われて手を止めて右手で眼鏡の端を上げながらエレアナを睨む阿仁間



「それなら、何故この場にいる皆さんは付けてないのですか? 身を守る上に、スキル測定に必要なら付けているはず、まさか勇者召喚にいる人が全員スキル無しはおかしいのでは? まさか、これは僕たちを奴隷か言いように使う為に、付けようとしてますか」



 言われて驚いた表情になるエレアナと顔を顰め目線を逸らす従者。それを見た、クラスメイトがざわつき出した。秋多が



「ふっざけんじゃねーぞ! そっちの都合で勝手に呼んで奴隷になれだぁ?! 舐めてんのか! なぁ東城とうじょう先生」



「あぁ、確かに、そんなこと到底容認出来ない」



 秋多と東城先生の話で、更にざわつき出したが、突然、エレアナが深々と頭を下げた



「申し訳ありません。お父様である、カイルド帝王の指示とは言え皆様に大変不快な思いをさせてしまいました。確かに、これは奴隷にする隷属の首輪。防御術は嘘です。」



 言われて怒り心頭で、エレアナに詰め寄ろうとした秋多を咄嗟に止める阿仁間。エレアナを守ろうと、動こうとした騎士を止めるエレアナ



「おい?! 阿仁間何で止めるんだよ!」


「取り敢えず話の続きを聞いてみましょう」



「そうだな。阿仁間のお陰で、相手の考えが分かった訳だしな」



 阿仁間と東城先生に言われてしぶしぶ下がる秋多。頭を下げるエレアナ



「ありがとうございます。帝王の命令とは言えこんなやり方は間違っていると思います。私の名においてこの様な事は今後させません。そこは、ご安心下さい。皆様の生活を保障します」



 もう1度頭を下げるエレアナ。そして首輪を下げさせた。下げさせた所で、阿仁間が



「……ここまでして貰えたら、此方も歩み寄るべきでしょうね」



「おい! 何言ってんだよ?!」



 まだ文句を言い足りない秋多の側に寄って小声で



「『秋多君、今は一応相手の言うことを、聞いておこう。元の世界に戻るにしろ彼等の協力は必要だから。今は従うふりで行こう』」



「『ちっ、分かったよ。お前が言うならそうするか』 しゃーねぇな。さっさと、素質やスキル見てくれ。それで、良いよな東城先生」



「うむ。仕方ないな、皆もそれで良いよな」



 振られた東城は、阿仁間と秋多を除くクラスメイトに確認すると、頷いたり返事をして返。それを、満足そうに頷き笑うとエレアナを見て



「では、測定と詳しい話を聞かせて貰いましょう」



 エレアナは明るい表情になり、胸の前で両手を合わせ



「ありがとうございます! 此方へどうぞ、ご案内いたします。皆さん失礼がないように、ご案内して下さい」



 東城を筆頭に、エレアナの後に付いて移動を始めるクラスメイト。その1番後ろで



「(……本当に、大丈夫かしら?)」



 得も言われぬ不安で、一杯になりながらも無表情で後について行く結衣であった



  










 










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