勇者パーティーの一員として魔王を倒したので元の世界に戻るはずが、何故か違う勇者召喚に巻き込まれました

長学きぷです

第1話 終わったと、思ったら……

 


 鬱蒼と繁った森の中、手頃な切り株を見つけ腰を掛ける黒目、黒髪の男性 平木ひらき 靱平じんへい

 大きな溜息をついて、ゆっくり顔を上げて空を見ながら



「どうしてこうなった。俺は、元の世界に帰るはず……だったんだが」



 暫く上を向いていたが、顔を下げ地面を見つめながら、これまでの事を思い返していた



 こことは違うバルガニアと呼ばれる世界に召喚された靱平。そこは、魔王と魔王軍によって侵略を受けていた。

 そこに、召喚されたのは、靱平を含めて4人の男性

 1人目は、勇者として召喚された茶髪でヘラヘラしたチャラい雰囲気の男、のちに“神聖勇者”と呼ばれる事になる人物

 2人目は、賢者として召喚されたスキンヘッドの筋肉隆々、身長2m超えのちに“賢帝”と呼ばれる人物

 3人目は、武道家として召喚された伊達眼鏡を掛けた金髪の真面目の優男で、のちに“拳王”と呼ばれる人物

 4人目は、武人として召喚された俺。のちに“武神”と呼ばれる事になるが


それぞれの、自己紹介やスキルや職を聞いて思った事は



『見た目と職業違わないか?』



 だった。偏見は良くないと、思うがそう思わずにいられなかった。まぁ、本当に偏見だったけど……

 その後も、なんやかんやあって一緒に旅に出て色々な事があったな


 見た目が厳つい“賢帝”ことバルゴザ・マルティネス、通称“マルティ”は、家事全般が得意だった。特に料理の腕前が凄くて、あの世界に無い料理や調味料を幾つもの発明したり作ってたよな。

 魔法に関しても、攻撃・回復・補助あらゆる魔法を使いこなしていった

 

 見た目が真面目な“拳王”ことジャッド・アルティエル、通称“アル”は見た目よりチャラかったり色々と手が早かったが、交渉事等は、お手の物だったな

 武術に関しても、現代の格闘技、バルガニアの武術やスキル等を瞬く間に身に付けていたな


 見た目がチャラい“神聖勇者”こと元木もとき 勇助ゆうすけ、通称“勇助”は見た目よりチャラく……なかった。

 サバイバル技術や知識がすごくて野宿の時は助かったな。女の子と良く食事してたけどチャラい感じはなかったし、何故、チャラく見せてたのかも旅の途中で分かったしね。

 まさか、勇助の死んだ幼馴染みが、記憶を持ったまま同じ世界に転生してた何て思わなかったよ。

 誰よりも、努力家で、旅の途中で幼馴染みと出会ったお陰もあるけど、覚醒して失われていた“神聖魔法”使える様になってたし


俺は、実家が現代で数少ない剣術家であったから刀、剣、槍等ある程度使えたのは良かった。バルガニアで、更に高めていたから、各種武器も使える様になったけど、1番は刀だな。

 気付いたら“武神”何て呼ばれてたけど、サバイバルに家事、交渉事等は皆より劣ってたし、料理については今でも壊滅的だしな



 何とか魔王を倒して、平和を摑んだ時は何とも言えないものがこみ上げた来た。その後、俺以外は王女様とくっ付いたり、幼馴染みと添い遂げたり、皇女の尻に敷かれたりしてたね。

 それらを、見届けてから元の世界に帰るべく女神の所に行った。筈なのに……



「今、何て?」



「だ~か~ら~元の世界に帰るのは、ちょっと無・理って言うか~ うん、無理! ゴメンね~てへ」



 ウィンクして、少し舌を出して可愛らしく謝ってくる桃色髪の女神。……軽いな、じゃなくて



「いや、まてまて、終わったら帰れる筈ですよね?!スキル等は使えなくなるけど、そこは了承していますよ。何でそんな話に?!」



「うちは一応真面目にやったんよ? でも、他の奴らがヘマこいたりしてさ~、ハゲやんの尻ぬぐいさせられたりしてさ~ うちは、そんな余裕ないし~だから、変わりにやって、ね? いいっしょ、ってな訳で、行ってらっしゃ~い」



 すると、靱平の体が淡く光だし段々薄くなって行く


「ちょっと人の話聞いて?! 何で、此方がそんなことをしないといけないんだ! って、いきなり送るな! 俺の話を……」



 言い終わる前に、強制転送された靱平哀れな人



「あっ?! そう言えば、何処に送って何をするか言うの忘れてたわ~ まっ、後からそれっぽく伝えればいいっしょ。うちは、出来る女神だしぃ~」



 女神の最後の呟きは、靱平の耳に入ることはなかった

 そして、ある程度、昔を振り返って



「……何時までも、こうしている訳にもいかないな。切り替えて……取り敢えず持ち物等の確認をするか」



 まず、右肩に立て掛けてある刀を手に取ると、ゆっくり鞘から抜いて七色に輝く刀身見る



「この世界の事が分かるまで、念のためこの刀は使わない方が良いな。使われてる、アルティマイト鋼と輝耀煌鋼きらおうこうの素材がこの世界にあるかも分からないし」



一通り確認して鞘に収める。右手で鞘を持ち直して念じると、鞘ごと光の粒子となって右手に吸収される。次に、目の前の空間にアイテムボックスの取り口を出現させる。



「よし、アイテムボックスは出せたな。あのエセギャル女神から貰ったものだし、使えなかったら……使えそうだし中身は、変わらずあるな。

 着ている服も流石に、袴擬きのままより変えた方が良いし。取り敢えず鋼で出来た刀と……服が無い」



 刀を取り出した後、改めてアイテムボックスの中を確認する



「ずっとこの袴を着てたから、インナーぐらいしかないか……まてよ、バルガニアに召喚された時の服ならあるが……仕方ない。袴よりは、目立たないな」



 袴を脱いで、インナーはそのままに、灰色の薄手のパーカーを羽織って、緑色のカーゴパンツを穿くく。

 刀留め用のベルトを巻いて刀の位置を調整する



「最近は、自分の意志で自由に出し入れ出来ていたから、久々に、普通の刀を装備すると懐かしい感じがするな。

 この服も、色々と防御術式編み込んだから其れなりに防御力あるし、これでいいか」




 着替え終わると、次に体を軽く動かし、体の調子を確認し始める。準備運動から始まり、刀と“気力きりょく”を用いての動きを一通り確認して終わって



「問題は無さそうだな……いや、問題だらけな気はするが、取り敢えず村や町を目指し……?!」



 その時、遠くから女性の悲鳴が聞こえた。普通の人間には、聞こえないぐらいの声の大きさ。

 其方に、意識を向け気配を探ると


「人の気配と……これは、複数の魔物の気配か? 急いだ方が良さそうだな」



 声が聞こえた場所に向け走り出した


 





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