第18話 アスドラってばめちゃくちゃヤベー奴っす。でもアネットさんの方がずっとすげーっす!
「【プチサンダー】!」
アネットが魔法を唱え、いつものように必殺の
放たれた魔法の雷を見て、ブレイズは勝利を確信していた。
『やったぜ、【プチサンダー】が放たれた! これであの八頭身モグラの敗北は決定っす!』
当たれば確実に縮小させられる、最強のチート魔法。
それが敵たるアスドラに向かって放たれたことに対し、ブレイズは勝利を確信していた。
いつものように、放たれた【プチサンダー】はアスドラに真っすぐ向かって行き----
----ひょいっ。
アスドラの姿は、一瞬にして消えていた。
『はっ?!
「えっ?! いきなり消えちゃっ。た?!」
「どちらをご覧になっているのでしょうか? わたくしはこちらに居ると言うのに」
後ろから、いつの間にか移動したアスドラはそう声をかけていた。
その周りにはアスドラの爪に斬られたであろう、ただ呆然と立っていただけの冒険者が数人倒されていた。
『いつの間に、あんな場所に居るっすか?!
「なにか、分かった。の?」
『あぁ、至極単純な、単純だからこそ、対策がし辛い----あれは単に、地中を移動してるっすね』
いつの間にか消え、後ろに回り込んでいたアスドラの秘密。
それは単純に、アスドラが、クロウモールであるかの魔人が、異常な速さで地中を移動してるだけだったのだ。
クロウモールは、種族名にもある鉄の爪を使って、地面や壁を掘り進めたりしてるだけの弱小魔人種。
そんな弱小魔人種が今まで生き延び来れたのは、単純に"速い"からだ。
地面や壁の中を掘り進んで行く、その速さが物凄い速さなのだからである。
その速さはまるで空中を飛ぶドラゴンのようだと称され、別名『地中のドラゴン』と呼ばれるくらいの高速を誇る。
そしてそれは三頭身のクロウモールでそのくらいの高速なのだ、八頭身という恵まれた身体を持つアスドラが長い手足を駆使すれば、それは目にも止まらぬ超高速なのも同義。
『厄介っすね……とりあえずアネットさん、あやつは地中の中を物凄い勢いで移動して居るみたいっす! それでいきなり消えたように見えたんっすよ!』
「なっ、なるほ。ど? でもそれって、どう対処すれば良い。の?」
その言葉に、ブレイズは返す言葉がなかった。
なにせ、地面の中を超高速で移動するアスドラの位置を、予測するなんて不可能だから。
「どうやら、わたくしの種はバレてしまったようですね。バレても、特に困りませんが」
すっと、分かりやすく地面から顔を出して、先程までとは全く別の場所に移動するアスドラ。
その最中にも冒険者を爪で斬りつけていたらしく、いつの間にか無傷で立っているのはアネットだけとなっていた。
「わたくし、名乗った通り領土職人ですので。職人たるもの、準備は大切。あなた達がここに駆け付ける前に、この辺り一帯の地下に、わたくしが心地よく走るための地下道を配置しております。無論、対策として入り口は出るたびに爪で隠して、入れないようにしておりますが」
呆気なく、アスドラは自身の移動したトリックを暴露する。
"トリックを言ってもどうせ対処できないだろう"と、そのように捉えられるその発言に、ブレイズはカチンっとなって、言い返した。
『随分と余裕っすね。いきなり自分のトリックを暴露して、勝利確信といった所っすか?』
「無論、その通りでございますよ。小さきドラゴンさん」
ブレイズの煽るような言葉にも一切動じずに、アスドラは天空を指差す。
「なにせ、本当にこちらの勝利なのでございますから」
そう指差す天空には、先程までとは比べ物にならないほどの、この冒険者の街ラッカルトよりも大きい巨大隕石がこちらに向かって来ていたからだ。
「わたくしの必殺魔法、【領土隕石】。全ての土地を魔王様に捧げるため、この魔法にてこの街には更地になってもらいましょう」
巨大隕石が、刻一刻と街を滅ぼそうと落ちて来る。
「1つ忠告しますが、あの隕石をなんとかしてもわたくしの勝利は揺るぎません。なにせ、わたくしはあの隕石をあと数百発落としても魔力切れにはなりませんので」
アネットはその言葉に、どうしようと迷っていた。
どんなに巨大な隕石だろうと、アネットの縮小魔法を使えば小さくして対処できる。
しかしながら、流石に数百発もの隕石を小さくするほどの魔力は、他の魔法使いよりも魔力多めであると思っているアネットにもあるとは断言できなかった。
なんとかするには、魔法を放つアスドラ本人を叩くしかないが、アスドラの移動速度に対して、アネットの【プチサンダー】ではどんなに頑張っても避けられてしまう。
「どうしよ。う……。私、この街でいっぱいお世話になった。のに」
うぅ……。
10歳の子供らしく、泣きだそうとしたその時である。
『大丈夫っすよ、アネットさん』
ブレイズが、励ましの言葉を投げかけた。
『アネットさん、今からオレサマの言う通りにしてくれれば良いっす。まずはあの巨大隕石、小さくして、オレサマにも食べやすい大きさにしてくれないっすかね?』
その言葉に、アネットは頷いて、魔法を放つ準備をするのであった。
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