第17話 領土職人アスドラは、普通に強いみたいっすよ! アネットさん!
受付嬢からの、緊急報告。
それを受けて冒険者たちが東門に辿り着いた頃には、東門は半壊した状態にあった。
東門を警備していた衛兵や冒険者たちは、攻撃を受けたのかぐったりと倒されていた。
そしてそんな攻撃をしたであろう八頭身のモグラ獣人----魔王軍最高幹部である領土職人アスドラは、自前で用意したであろう紅茶を飲んで、優雅に嗜んでいた。
「おやおや、次の獲物がやってきたようですね。わたくし、魔王軍の《四頂点》が1人、領土職人のアスドラと申します」
受付嬢の緊急報告を受けて駆け付けた冒険者たちの一団を見ながら、ぺこりっと、丁寧に頭を下げるアスドラ。
言葉からは丁寧さを感じるが、そこには人間を見下す気持ちが隠しきれない様子であった。
「どうやら次はあなた方が、わたくしのお相手をしてくださいますのでしょうか? でしたら、優雅な時間はこれまでとして、楽しい楽しい絶滅タイムを始めさせていただきます」
魔法にて、空中に黒い穴を開け、その中に紅茶セットを片付けるアスドラ。
焦る様子はなく、ゆっくり丁寧に。
しかしながら、戦闘を意識して戦いに来た冒険者たちにとっては、自分達を無視するかのような振る舞いに、若干ながらぷっつんとキレていた。
とりわけ、高ランクと呼ばれ、普段から選ばれし者として優遇されている冒険者には。
「おいおいおい、おいおいおいおいおい……。随分と余裕を見せやがるなぁ、アスドラさんよぉ!」
駆けつけた冒険者たちの中から1人、赤髪の冒険者が前に出て来る。
鍔に風の紋様を付けた剣を構えた、黄金鎧のその冒険者が出ると、付近の冒険者たちが騒ぎ出す。
「おい、あれってBランク冒険者の【ソラフキ】さんじゃないですか!」
「1000人に1人と呼ばれる、2つの魔法属性を持つ高ランク冒険者のソラフキさんが出たら、もう大丈夫ですよね!」
「ソラフキさん、いつもの火の嵐でアイツも一掃しちゃってください!」
高ランク冒険者の登場に人々は沸き立ち、褒められてソラフキはふふんっと腰に手を当ててドヤ顔を披露していた。
「随分有名な冒険者のご様子ですね。つまり、あなた様を倒せば、皆さん、絶望に打ちひしがられるでしょう」
「言ってくれるなぁ、アスドラ! そういう言葉は----勝ってから言えよ!」
剣先をアスドラに向けて啖呵を切るソラフキ。
それと同時に、その刃が、まるで鉄砲の弾のように放たれる。
「----【
ソラフキが魔法を唱えると共に、弾丸のように放たれた刃に魔法が付与される。
刃は風の魔法によって加速し、合わせてかけられた火の魔法により威力が増した状態で、
----どごぉぉぉぉんんっっ!!
一瞬で加速して敵に向かって行った、魔法を纏った刃。
そして刃が着弾すると、大きな爆炎が発生し、轟々と火炎の竜巻が巻き上がる。
火炎の竜巻が発生したのを見て、ソラフキは「勝ったっ!」と口にする。
なにせあの魔法はソラフキの切札であり、あの魔法でめちゃくちゃ強いドラゴンなど、強大な魔物たちを倒して来た、自慢の魔法であったからだ。
アスドラを倒したと確信したソラフキは、ニヒヒッと笑っていた。
「ハハッ、最高幹部がなんだってんだ! 火属性と風属性、この俺の2つの魔法属性を組み合わせた俺のオリジナル魔法で木っ端みじん----」
----ザクッ!!
「----じん?」
----ガクッ。
何が何だか分からない様子で、ソラフキは倒れてしまう。
そんな彼の腹から大量の血を流しており、その横にはいつの間にか移動していたアスドラが立っており、そんな彼の鉄の爪には赤い血がこびりついていた。
「「「てっ、てめえええええええ!!」」」
「人望があるようだな、先程のソラフキなる御仁様は」
それに対し、アスドラは鉄の爪を武器として用い、冒険者たちの剣を防いでいた。
10人以上の、剣を振るう冒険者たち。
それに対し、ソラフキは鉄の爪を二刀流のようにして操り、10人以上の冒険者たちの剣を捌ききっていた。
「こっ、こいつ?!」
「10人以上で攻めてるのに、全く隙を出しやがらねぇ?!」
「なんで押し切れねぇ?! 数では、明らかにこちらの方が有利なのに?!」
「わたくし、こう見えて剣も多少は心得ありますが、それ以前に----」
----ひゅーっっ!!
「「「ぎゃあああああ!!」」」
「----魔法もお得意なのでございます」
星属性の魔法により、空から隕石を落とし、的確に冒険者たちの身体を貫かせるアスドラ。
圧倒的な、アスドラの力。
遠距離においては星属性の、空から降らせた隕石によって攻撃。
近距離においては、硬い鉄の爪で剣を弾く。
近距離・遠距離、そのどちらも優れた最高幹部のアスドラ。
一瞬で理解してしまった、アスドラの圧倒的な力を見て、多くの冒険者たちは敵わない相手だと察して尻込みしていた。
「……それで、続いてはあなた様のような愛らしいお嬢様が、わたくしのお相手をしてくれるのでしょうか?」
『えぇ、そうですよ! あなたはこのアネットさんに倒される
「美味しいモノをくれたこの街を、私、守りま。す!」
そんなアスドラに対し、アネットとブレイズが立ち向かうのであった。
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