第12話 魔王軍も動き出すようっすよ、アネットさん!

 魔人、それは魔物とは違う形で魔力の影響を受けた者。


 魔物は魔力が集まって生まれた、生き物ではないモノ。

 対して魔人は魔物とは違い、周囲の魔力によって異形の姿と力を得た人間のことであり、人間に友好的な者もいるが、人間に敵対する者もいる。



 そんな人間と敵対する魔人、そして魔物たちが集う組織、それが魔王軍である。



 魔王を頂点いただきとする、人間ヒトを滅ぼそうとする集団。

 簡単に言うとすれば、『集団として、積極的に世界を滅ぼそうとする者達』。


 『個として、世界を滅ぼすほどの力を持つが楽観的に過ごしている者達』である、《災厄の六獣》とは相反している。

 それが故に《災厄の六獣》は、魔王軍に所属していない。

 彼らは強力な力を持っているが、その力を自分のために使っているだけであり、誰かの下に従属つきしたがうなどあり得ないからだ。


 もしも魔王軍がこっそりと、《災厄の六獣》の魔力を抜き取って。

 その上、その魔力を魔王城の結界に利用しているのを知ったら、怒るのは間違いないだろう。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「----魔王様、ご報告いたします。魔王城に利用している《災厄の六獣》、滅炎竜ブレイズの魔力が途切れました」


 配下の一つ目魔族の報告を受け、【魔王カラミティー】は溜め息を吐く。

 溜め息を吐くとと同時に、彼の身体を流れる闇の魔力が一緒に吐き出され、一つ目魔族は泡を吐いて倒れる。


「おぉ、済まないな。今すぐ治療させよう」


 すっと、手をかざすと、一つ目魔族の身体に纏わりついていた闇の魔力が魔王の手の中に吸い込まれ、一つ目魔族はゆっくり目を覚ます。


「報告は以上だろう? 一旦下がれ」

「はっ……! 魔王様の仰る通りに」


 一つ目魔族は深々とお辞儀をして、そのまま部屋を出ていく。



 ----二代目魔王、魔王カラミティー。

 またの名を、【裏切りの魔王】黒翼のカラミティー。


 彼は、闇の魔力を纏う黒翼族と呼ばれる、黒い鳥の魔族である。

 他の黒翼族と違う所があるとすれば、"彼の持つ闇の魔力があまりにも膨大である事"、そして"本来ならば2枚の翼を持つ黒翼族にも関わらず、彼の翼が片翼である事"だろうか。


 魔王軍において最も重要視されるのは、圧倒的な力。

 片翼しかない事で色々と侮られることも多かったが、それ以上に圧倒的な力でねじ伏せ、彼は魔王となった。


 そんな彼が何故、【裏切りの魔王】と呼ばれるようになったかと言えば、そのものずばり、本当に裏切ったからである。


 彼は伝説の勇者が倒したとされる、大魔王の配下の1人であった。

 そして彼は伝説の勇者に魔王軍の情報を意図的に流して、当時の最高幹部たる四天王を闇討ちさせ、さらに言えばある事ない事言いくるめて《災厄の六獣》を6体全て討伐させたのであった。

 そのようにして彼は、魔王という今の地位についた。


 ----故に、【裏切りの魔王】。

 裏切りを重ねて、魔王になったカラミティーに相応しい名であった。


 そうして今の地位についたカラミティーを、快く思わない魔物や魔人も多く居たが、その全てを彼はその圧倒的な力でねじ伏せて来たのである。



 そんな彼だからこそ、今のこの状況がマズいという事を理解していた。


「(今はまだ1体目。しかし、これから先、さらに倒されないという保証はどこにもない)」


 たとえ《災厄の六獣》をすべて倒し、魔王城に乗り込まれたところで、問題はない戦力を備えている自負はある。

 しかしそれはそれとして、城の結界に問題があるのはあまり良くない。


「----調査の必要はあるな」


 そう思い、魔王カラミティーは伝令を飛ばす。


 滅炎竜ブレイズを倒した者を探るために、冒険者の街ラッカルトを調査せよ、と。

 彼が最も信頼を置く、最高幹部の1人に伝令を飛ばすのであった。




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 魔王カラミティー

 肩書き:【裏切りの魔王】黒翼のカラミティー


 今の魔王軍の頂点である二代目魔王にして、闇属性の魔法を操る魔人。黒翼族と呼ばれる黒い翼を持つ魔族ではあるが、他の黒翼族と違って2枚の翼はなく、片翼しかないが、それを補って余りある強大な力の持ち主

 先代魔王の配下ではあったが、本来は敵であるはずの勇者に情報を流し、当時の四天王の居場所と能力などの情報、さらには根も葉もないうわさを用いて《災厄の六獣》の始末などを頼んだなど、裏切りによってこの地位についた。それにより、【裏切りの魔王】と呼ばれている

 圧倒的な力を持つが、その分慎重な性格でもあり、小さな芽であろうとも全力で踏み潰しに行くタイプ

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