第11話 キューユちゃんの魔法をなんとかしちゃおうっす、アネットさん!
無事、馬車に乗ってタクモス伯爵邸に帰還した、アネットとキューユ。
滅炎竜ブレイズの討伐について、キューユの父親であるボイル伯爵に事情を説明する事になったのだが、なったはずなのだが----
『という訳で、やるっすよ! 第1回! 【キューユちゃんの魔法をなんとかしちゃおう大作戦】!』
「はじまる。よ~!」
何故かいきなり、そのような事を言い出す
『了承を得られたんで、はい、早速ゴー!』
「えっ?! ちょっ----?!」
困惑するキューユに対し、翼で空を飛んで彼女の頭に着地するブレイズ。
いきなり頭の上に乗られたことに驚いたキューユが、手で払いのけようとする。
『あっ、手で払いのけようとしたら、炎で燃やし尽くしますっす』
「----っ?!」
その脅しに、キューユの手がぴくりと止まる。
アネットの魔法で縮小しているとはいえ、相手は《災厄の六獣》の一角、滅炎竜ブレイズ。
小さくなろうとも、『無能』である自分の手を燃やし尽くすくらい簡単だと考えたキューユは、仕方なく手を引っ込めた。
『よろしい、孤高の存在たるオレサマは寛容だ。そのままで居ろ。なぁに、オレサマとて悪いようにはしない』
ブレイズはそう言うが、キューユはいつ殺されるか分からず、震えが止まらなかった。
一方で、いきなり娘を人質状態にされてしまったボイル伯爵は、自身の魔法で対処しようとして、発動を止めた。
「(ダメだ。攻撃をしてもあのドラゴンを殺しきれる
魔法が使えない『無能』とはいえ、ボイル伯爵にとって、キューユは実の娘。
流石のボイル伯爵にも、自身の娘を殺すだけの薄情さはない。
そこでボイル伯爵は、アネットにあのドラゴンを止めるように頼んだ。
「アネット嬢、あのドラゴンを止めるよう言ってくれないか! 討伐に成功した君の意見なら、聞くかもしれない!」
「----? だいじょう。ぶ! ブレイズは、今からキューユちゃんを『しあわせ』にしてくれる。の」
「『しあわせ』? アネットちゃん、それはどういう……」
ボイル伯爵が、アネットに言葉の意味を聞こうとする。
しかし、それを聞き出す前に、ブレイズは魔法を発動させる。
『では、いくぞ! 【
その瞬間、キューユの身体が青い炎に包まれた。
「きゃああああああ!」と、いきなり自分の身体が蒼炎に包まれた事に、キューユは大きな悲鳴をあげていた。
「キューユちゃん?!」
蒼炎に身を包んだキューユを見て、アネットは驚いた声を上げていた。
その様子を見て、ボイル伯爵は「アネットは知らされていなかった」という事、そして「これは滅炎竜ブレイズの策略である」という事を知った。
「アネット! 今すぐあのドラゴンを止めろ! このままだと、うちの娘が死んでしまう!」
「分かりましたで。すっ!」
アネットは【サンダー】によって、キューユを助けようとして----
「----わぁっ!!」
キューユが、青い炎を自由自在に操っていたのを見て、それを止めるのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『世界を生み出した神が魔法を与えられるなら、そんな神が作った
----【
『それがこの状況という訳っす』と、ブレイズはそう語っていた。
アネットとボイル伯爵の目には、キューユが魔法を使っているように見えた。
そう、魔法が使えない『無能』であるはずのキューユが、悠々と青い炎を、普通の炎よりも高温の炎を、自らの手足のように操っていたのだ。
「私が魔法を……?」
未だに、自分が魔法を使える事を信じられない様子のキューユ。
なにせ、魔法適正を後で貰うだなんて、聞いたことがなかったからである。
魔法を使えるようになったのも、
その上で使えるようになった火属性の魔法が、蒼炎----通常の炎よりも高い炎を操るという、火属性の魔法の中でもかなり高度な魔法をいきなり使えるようになった事に、キューユは未だに信じられない様子であった。
「娘が魔法を……しかも、蒼炎の魔法ともなると、エリート中のエリートじゃないか……」
「おめでと。う! キューユちゃん!」
娘のとんでも成長具合に、びっくりしているボイル伯爵。
その一方で、素直に感激しているアネット。
魔法を使えるようになり、明らかに嬉しがっている様子のキューユを見て、ブレイズは作戦が上手く行ってる事を嬉しく思っていた。
『(明らかに感謝しているようだな、キューユよ。これでオレサマの作戦通り、恩が売れたと見て良いだろう)』
アネットが、ブレイズに戦いを挑んだのは、恩義を感じるキューユが頼んだから。
ならばブレイズはそのキューユに恩義を感じさせ、アネットの行き先を決定する。
『(名付けるとすれば、【目には目を、恩には恩を】作戦といった所か)』
ともあれ、これでキューユに恩義を、魔法を使えるようにするという恩義は売れた。
あとは口裏を合わせるように指示し、アネットを全《災厄の六獣》縮小化計画に進ませれば良い。
『(まずは誰を
誰を自分と同じく惨めな姿にしようか、そんな事をブレイズが考えている中、ボイル伯爵の言葉に、ブレイズは反応した。
「しかし、驚いたぞ。まさか、人間と敵対する魔王軍----それに所属する滅炎竜ブレイズが、我が娘に魔法を授けてくれるとは……」
『あぁん? オレサマ、魔王軍に所属してないが?』
そう、滅炎竜ブレイズは、孤高の《災厄の六獣》。
魔王軍などという、軍隊には入らない孤高の存在なのだから。
しかし、ブレイズの反応を冗談と思ったボイル伯爵は告げる。
「いやいや、魔王城の結界に、滅炎竜ブレイズの魔力が使われているのは有名な話でしょう」
ここでブレイズは、初めて知る事となる。
自らの魔力が、魔王城の結界を維持するため、掠め取られていた事を。
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