第10話 この縮小にも段々慣れて来たっすよ、アネットさん!
『ふむふむ、なるほどなるほど』
次の日の朝。
迎えに来たタクモス伯爵家の馬車に乗り込む、アネットとキューユ。
揺れ動く馬車は、2人をタクモス伯爵邸に連れ帰りつつあった。
そんな馬車の屋根の上にて、滅炎竜ブレイズは昨日キューユから語り聞いた、『アネットとの出会いの話』について考えていた。
『キューユ自身は大したことがないと語っていたが、あれは紛れもなく、アネットにとっては救いとなる出来事だったのだろう』
キューユが語ったのを整理すると、こうだ。
----アネットの親はクズ。
----アネットは言語障害を抱えている。
----キューユはアネットを助け、アネットはキューユに恩義を感じている。
キューユ自身は、貴族として当然の行いと語っていたが、ブレイズはそうではないと思っている。
少なくとも、それが当然の行いだとすれば、この世界はもう少しマシな世界になっていただろう、と。
『このオレサマと戦おうだなんて、よっぽどの理由があるんじゃないかと思ったのだが……』
そう、ブレイズがわざわざキューユに話を聞いたのは、そう言う事だ。
自分のような《災厄の六獣》相手に何故、アネットが挑むようになったのかを知りたかったのだ。
『これなら強敵に挑みたいだけの戦闘狂の方が、まだ"操りやすかった"のに』
『残念だ』----ブレイズはそう呟く。
ブレイズには、野望がある。
それにはアネットの助けが必要不可欠なのだ。
もう彼女が眠っているのに解けなかったこのサンダー魔法の縮小化を、無理に解こうとは思っていない。
恐らくこれは呪いの類であり、アネットが死んだとしても解ける事はない。
そしてアネットはこの後キューユの家でおもてなしを受ければ、ブレイズに挑む前の生活----つまりは、森の中でのサバイバル生活に戻ってしまうだろう。
滅炎竜ブレイズを縮小して無力化できる力があるにもかかわらず、
『そしたらなんだ? オレサマは永遠に、この大きさのままという訳か? 冗談じゃない』
そう、冗談じゃないのだ。
----縮小化されるのは、"自分だけで良いはずがない"。
『アネット、お前はオレサマを縮小化させた者だ。強者だ。
----そして、他の《災厄の六獣》もまた、お前の魔法で縮小化させてやれ』
死なばもろとも……この場合は、
滅炎竜ブレイズは、他の《災厄の六獣》にも同じ惨めさを味合わせたいと思っているのだ。
そう、このドラゴンの望みは、アネットを使っての、全《災厄の六獣》を縮めるという、最低の計画なのである。
……身体だけでなく、器の小さいドラゴンである。
そしてその最低な計画を叶えるには、アネットとある程度仲良くなっておく必要がある。
あの、少々下っ端感満載だった姉御呼びもまた、滅炎竜ブレイズにとっては下準備の一つだ。
しかしながら、やはりこの短期間で、彼女に他の《災厄の六獣》に合わせるという、そういう旅をさせられるほど仲良くなれるはずもない。
『短時間で、オレサマと仲良くなれそうにはない。だがしかし、方向性は見えて来たぞ。キューユの話とやらでな』
ニヤリ、とブレイズは笑う。
アネットは、キューユに恩義を感じたので滅炎竜ブレイズ討伐に協力した。
『それならオレサマも、恩義を着せれば良いのだ』
アネットに旅をさせろというのは、なにも滅炎竜ブレイズが言わなくても良い。
別の誰かによる言葉によって、アネットが旅を決意してくれればそれで良いのだ。
『幸い、この縮小状態の
----パタパタッ!
馬車の屋根の上で少し
----攻撃は魔法・物理関係なく威力と距離が格段に減少している。
----体力や防御力なども著しく低下している。
----攻撃に関しないモノは、"
縮小した際に空が飛べなくなって落ちてしまったのは、飛行魔法に攻撃要素を加えていたから。
無意識のうちに、空を飛ぶと同時に周囲の魔物を殺すような癖のつもりで攻撃魔法を常時展開していたため、落ちてしまったのだ。
今、楽にホバリングできているのは、攻撃魔法を切ったから。
『つまりは、攻撃魔法以外なら前と同じように使える、という訳だな』
それなら、話は速いとばかりに、ブレイズは念話魔法----相手に言葉を直接届ける魔法----を用いて、アネットに話しかける。
『"アネットさん! アネットさん!"』
「"うわっ?! ブレイズな。の? 急にびっくりし。た!? これは、な。に?"』
『"念話の魔法で話しかけてるっす! それよりもアネットさん、オレサマから1つ提案があるので、聞いてくださいっす!"』
そして、滅炎竜ブレイズは、アネットに許可を求める。
『"----キューユちゃんを悩ませている、魔法が使えない今の状態。『無能』を、このオレサマならなんとか出来るので対処して良いっすか?"』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます