第6.5話 《災厄の六獣》滅炎竜ブレイズ
----炎すら滅することが出来る火炎を放つ
夜空に光り輝く4つ目の月を一発の熱線で、黒焦げにしつつ、真っ二つにした伝説を持つ滅炎竜ブレイズは、数千年前に一度、大ダメージを喰らって討伐された。
滅炎竜ブレイズが歴史上初めて討伐----封印されることになったのは、パンクンパ王国を興した伝説の勇者との一戦であった。
勇者の姿を初めて見たブレイズは、
実際、勇者が放った火魔法はブレイズの放つ炎の足元に及ばず、ブレイズが負ける要素は一切なかった。
ブレイズが負けた理由、それは勇者が火魔法だけではなく、他の魔法の使い手でもあったからだ。
----水魔法、雷魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法。
さらに加えて、火魔法も合わせて、たった1人で7つの魔法属性を持つ者----それがこの勇者なのであった。
普通ならば1人の人間につき属性は1つ、多くても3つが普通だった。
そんな中、7つの魔法属性を巧みに操る勇者の力は、ブレイズも予想外であった。
勇者が放つ水魔法によって、ブレイズの炎は弱まった。
勇者が放つ雷魔法によって、ブレイズの翼は斬り落とされた。
勇者が放つ風魔法によって、ブレイズへと迫る炎は強化されて襲い掛かって来た。
勇者が放つ土魔法によって、ブレイズの炎は出来た土壁によって防がれた。
勇者が放つ光魔法によって、ブレイズが与えた傷は一瞬で癒された。
勇者が放つ闇魔法によって、ブレイズの魔力は奪われて勇者のモノとなった。
かの勇者は7つの魔法を駆使し、ブレイズと戦った。
たとえ火魔法同士でならブレイズの勝ちだとしても、他の6つの魔法と組み合わせる事によってその差はなくなり、ブレイズは劣勢に立たされた。
ブレイズが自ら敗北を認め、火口へと戻る際、かの勇者は「討伐成功だ!」と皆に伝え回っていた。
その通りだ、とブレイズは認めていた。
実際は倒されていないにしても、自ら逃げ帰る今のブレイズの姿は、まさしく『討伐された』以外の何物でもなかったからだ。
だから、ブレイズは火口で眠り続けた。
かの勇者を矮小だと侮り、自ら敗北を認めて
もう二度と目覚める事はない----そのつもりで、ブレイズは眠り続けたのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ブレイズが目覚めたのは、とある冒険者の攻撃を受けたからだった。
『何事だ……?』
数千年ぶりに目覚めたブレイズは、ゆっくりと状況を把握する。
『ほぉ、俺様の住処に
伝説の勇者に敗北し、火口に閉じこもっているブレイズ。
しかし自身の住処を
『ちょうど良かろう。強かったかの勇者も所詮は人の身、不老不死たる俺様と違い既に死んでいるだろう。この機会に、俺様復活の機会とするのも悪くはあるまい』
翼を羽ばたかせ、火口から飛び出すと、そこに居たのは4人の冒険者。
青い氷の球のような物を持っており、それを火口へと投げ込もうとしていた。
『なるほど、それが
一瞬であった。
ブレイズが口を開いた瞬間、放たれた炎は熱線となって、2人の冒険者の眉間を貫く。
貫かれた冒険者の脳は一瞬で蒸発し、2人はそのまま蘇生すら許さないとばかりに、黒焦げの塵となって、装備だけがその場に落ちて留まった。
『そこの人間よ、俺様を目覚めさせたのはお前らの仕業か』
ガクガクブルブルと震え続ける、残った冒険者に問うブレイズ。
答える必要はない、彼らはただ戻って、この事の重要さを伝える
否定も、肯定も、この場では必要ない。
あるのはただ、最強格の一角たるこの滅炎竜ブレイズが再び現れたという事実を伝えるだけで良い。
『良かろう。それでは心して、伝えるが良い。
この滅炎竜ブレイズが今度はこの世界を焼き尽くす前に用意せよ。かの勇者のように、俺様を討伐できるかもしれぬ
----さぁ、行け。我としては、伝達する者は1人だけ居れば良いのだぞ?』
その言葉を伝えると、生き残った----いや、生き残らされた2人の冒険者は、そのまま大慌てで山を下りて行った。
『果たして、この時代に俺様を楽しめる
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《災厄の六獣》 滅炎竜ブレイズ
肩書き:炎すら滅することが出来る火炎を放つ
数千年前に、夜空に浮かぶ4つ目の月を火魔法【
火属性の魔法の極致ともされる強大な魔物で、この世界を滅ぼすほどの力を持つとされる《災厄の六獣》の一角である。基本的には人間を矮小な生物と見ているが、勇者のように自分に匹敵する者が居た場合は普通に逃げ隠れたりするなど小心者な一面もある
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