第6話 遂にこのカッコいい俺様の出番っすね、アネットさん!
----夜空に光り輝く3つの星、月。
夜闇に覆われるこの世界を照らすこの3つの月が、実は"
その失われてしまった4つ目の月----それを落としたのが、"災厄の六獣"の一角たる滅炎竜ブレイズなのである。
かの滅炎竜ブレイズは今から数千年前、地上から空に浮かんでいた4つ目の月を、炎魔法の超威力の
勿論、その証拠となる4つ目の月も、黒焦げの状態で2つ、大陸に山のようにそびえている。
"災厄の六獣"とは、この世界を滅ぼすほどの力を持つとされる、最強格の6匹の魔物達。
監視といえど、滅炎竜ブレイズは住処としている【コーガス火山】でずっと眠り続けており、特に危険な事もなにもなかった。
----今から半年前。
冒険者の街ラッカルト、その
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「怒った滅炎竜ブレイズを鎮める事は不可能と考えたうちの父は、討伐を決断し……アネットさん、あなたにお力添えを願いたく思うのです」
----ぺこりっ。
頭を下げて頼み込む、キューユであった。
アネットとキューユの2人は、キューユの父親であるボイル伯爵の命を受け、コーガス火山に向かっていた。
向かう目的は、冒険者が怒らせてしまった滅炎竜ブレイズの討伐……というか、封印である。
"災厄の六獣"たる滅炎竜ブレイズを完全に倒しきることなどできない。
それが出来るのならば、"災厄の六獣"に選ばれるはずもない。
しかし、討伐----封印する事は出来る。
滅炎竜ブレイズは一定のダメージを受けると、コーガス火山の
それをボイル伯爵は討伐と呼び、キューユはその討伐のための増援を王都に頼みに行った帰りにホーカマウルフ付きの野党に襲われた。
そこでサンダー魔法を使ったアネットにも、滅炎竜ブレイズ討伐に参加して欲しい、との事だ。
キューユは自分達の問題に巻き込んだことを申し訳なさそうにしていた。
それに対し、アネットは「気にしないで良い。よ?」と伝える。
「私たち、お友達だ。し!」
「お友達……ですか」
キューユは無邪気にそう語るアネットの顔を、直視できなかった。
友達と呼ぶことすら、親の地位や立ち位置などで容易に変わる貴族社会。
そんな貴族社会において、無邪気に、たった一、二度パーティーで顔合わせをした程度の相手を『親友』と呼んで、今も助けようとしてくれる
後ろめたさから自分の顔を見られてないことなど知る由もないアネットは、「ただ……」と前置きして話を始める。
「私の魔法で、何が出来るか分からない。けど……」
「そんな事ないですよ。少なくとも、私に比べたら」
謙遜するアネットに対し、それよりも謙遜した様子のキューユ。
「----なにせ、私は『無能』ですので」
と、キューユは「魔法が使えない」と、自嘲気味にそう語る。
----『無能』。
それはつまり、あらゆる魔法的な才能を持ちえず、魔法を使えないことを意味する。
そんなキューユにとっては、ハズレ魔法といえども魔法が使えるアネットの方が羨ましいと思ってしまうのだ。
「私は正直、ボイル伯爵の名代----この魔道具を使うための人員、という感じかな?」
キューユはそう言って、懐から藍色の球体を取り出す。
「それはなんな。の?」
「"災害の六獣"討伐のため、王都に向かった際にいただけたモノです。王都から人員は借りられませんでしたが、道具をいただけるという援助はいただけましたので。この道具をブレイズにぶつければ、強制的に眠らせることが出来るそうです」
どうやってそんなことが出来るのか、さっぱり分からない様子のアネット。
それに対し、キューユは「この球体には、極寒の冷気が閉じ込められているんです」と解答する。
「極寒の球体をぶつけ、灼熱の身体を纏ったブレイズの体温を一気に下げ----まぁ、簡単に言えば、大ダメージを与えて、火口に戻って貰おう、みたいな?」
「それなら、分かる。よ! それで私達のおしごと、終わりなんだ。ね!」
「その通り。……まぁ、一番期待しているのは----」
キューユはアネットの顔を、じっと見ていた。
「(アネットさんの【プチサンダー】の方、でしょうけれども)」
当の本人たるアネットはというと。
「----?? なんか変。かな?」
自分の力がどれだけ凄いのかということを、まったく、分かっていないようであったが。
「----キューユお嬢様。コーガス火山に到着しました。
「……ご苦労様。あとは私とアネットに任せ、皆は戻りなさい」
「了解です」と使用人はそう言い、アネットとキューユの2人が馬車から降りるのを確認すると、馬車はそのまま家へと帰って行った。
『もう良いだろうか? 俺様は待ちくたびれたぞ』
馬車が帰るなり、その竜は空からゆっくりと降りて来た。
4本の脚で地面に降りると、身体から発せられる熱により、地面の草木が発火する。
黒い翼で大きく風を起こしつつ、狂暴な牙を剥き出しにして、こちらを睨みつけていた。
『さぁ、
この滅炎竜ブレイズの怒り、果たしてどこまで耐えられるかな?』
滅炎竜ブレイズはそう言って、空に炎を吐き出すのであった。
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