第二十三話 シュラvsトロール
「ゴラァ!!!」
「【―――――――ッ!!!!!】」
巨人の拳と小柄な少女の拳がぶつかる。
互いに強力な赤魔が炸裂し、真っ赤な火花を空に散らせる。
「だああありゃああああああああああっっっ!!!!!」
少女、シュラは土煙を上げながら助走をつけ、
「――やっぱり」
シュラは一つの確信を得る。
シュラは空中で姿勢を直し、綺麗に両脚で着地する。
「ただの
シュラに言われ、
「【よく、気づきましたね。私が人魔だと】」
中性的な高めの声。
シュラは見た目に反して落ち着いた物腰の
「嬉しいわ。アンタが肉体派で。
久々に真っ向から殴り合える……!」
「【私も嬉しい限りです。
やはり、拳と拳、肉体でぶつかり合うのが楽しいですからね】」
そう口にしながら
形成の魔力。
シュラは「嘘つきめ……!」と背から杖を抜き、全速で前にダッシュする。
放たれる土弾。
シュラは
――手応えなし。
シュラは土の槍の先を蹴って破壊し、土の槍の側面を足場にして追撃を跳ね躱す。
地面へ着地。頭上より降りかかる
シュラは歯を食いしばり、赤魔を解放して足を弾き返す。
「……あれは」
シュラは
――体毛が徐々に減っていっている。
「なるほど。
アンタの体毛、“魔填薬(ローリングボトル)”の代わりを果たしているのね」
“魔填薬(ローリングボトル)”。
市販されている物は瓶詰された液体だ。それを飲むと失った魔力を補填することができる。
“魔填薬(ローリングボトル)”の素材は色んな物があり、種類によって効果も異なる。“魔填薬(ローリングボトル)”の素材の一つ、それが緑色の
「【“魔填薬(ローリングボトル)”……?
そう呼ぶのですか? 体毛(これ)】」
「冗談でしょ……あの体毛全部が魔力の塊――」
シュラは杖を背にしまい、腰に手をつく。
「仕方ないわね……!」
シュラから発せられる異様な空気。
「その毛むくじゃら、全部むしり取ってやる」
シュラは己の副源四色――白の魔力を身にまとう。
「
――回生術、“
白き鎧を纏い、シュラは地面を蹴った。蹴られた地面が衝撃で盛り上がる。
「【なん――!?】」
「もっと魔力を込めないと死ぬわよ?」
速度を増したシュラの高速乱撃。
“
シュラは白魔術師である。シュラはその回復術を己に使い、攻撃の衝撃で起こる己の体へのダメージを厭わず、全身全霊で動いているのだ。
足が折れるほどの跳躍も、
腕が折れるほどの拳撃も、
骨が折れたあとですぐさま再生し、成立させている。本来、自分へのダメージを考慮して攻撃の瞬間に全身に纏っていた赤い魔力も限界まで減らし、一点集中、威力へ費やす。
欠点は白魔力を垂れ流しにするため発生する時間制限と――どうしても避けられない、痛みの信号。
「こ、のっ――!!!」
痛みで思考が埋まる。それでもシュラは拳を握る。
シュラは追撃しようと 倒れた
「【良い事思いつきました。
私も、鎧を纏いましょう……】」
「――ッ!?」
シュラが空から踵落としを
「ちっ!」
シュラは土を蹴って宙を舞い
「【これでもう痛くないですよ】」
「私の真似したつもり?
そんな付け焼刃で、私の打撃は防げないわよ!」
シュラは姿を消し、
シュラは確信する。「勝った」と。だが、その確信は攻撃した土塊から棘が生えたことで改めることになる。
「土の刃!?」
攻撃された瞬間、攻撃された箇所の周囲の土を青魔で動かし、密集し、棘を生やして反撃する自動反撃装置。ゼロから土を作るわけではないのでその反撃の速度はシュラが反応できるレベルを超えていた。
シュラは脇腹を棘に抉られる。だが瞬時に白魔力で回復。
「【これを繰り返すのは骨が折れる。貴方の攻撃を完全に防げるわけでもありませんしね。
魔力の消費は大きい……でも、】」
「先に沈むのは私ってわけね」
「【そういうことです。
一度ペースダウンしませんか? このままだと貴方のジリ貧負けですよ】」
シュラは
「――嫌なこった」
シュラは白魔を纏い、全身全霊の突撃をする。
「【無駄なことを……】」
「くううううぅぅぅぅんのおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
殴る、蹴る。その度棘の反撃が体を抉る。
守るのは脳と心臓。それ以外はいらない。すぐに治る。
(いだい――いだいいだいいだいいだいいだいいだいっっっ!!!!!!)
心の内で絶叫する。
それでも攻撃を続ける。たった一度のチャンスを掴むために――
攻撃された箇所、その周囲の土をかき集め、反撃しているのなら、連続で攻撃していけば鎧が無くなる時が来る。そのタイミングに一気に畳みかける。
シュラは止まることをやめた。
一瞬の隙を狙って……
「【し、しつこいですね……!】」
土の鎧が剥げていく。
「【ぬっ!!?】」
「ここだあああああああああああああああっ!!!!」
シュラは渾身の魔力を練ろうとするが、
「う、そでしょ? ここで――!」
白き鎧は塵となった。
――魔力の限界が訪れた。
「【はぁ……はぁ……!
危なかった。ここまでやるとは予想外です。
でも結果は見えました。貴方の魔力は尽きた。私の魔力はまだわずか残っています。
この勝負、私の――】」
「
――でも、
「私の魔力はもう塵ほどしか残ってない。アンタももうほとんどない。
でも、一人だけさぁ……元気な奴が残ってるのよ」
シュラはそう言いながら、天に輝く太陽を指さした。
「【ハッタリは、見苦しいですよ】」
「あと、五秒だ」
拳を振り下ろす
シュラは最後のなけなしの赤い魔力を足裏にため、大きく跳躍した。
太陽の熱さを首筋に直に感じる。
「――
瞬間、茶髪の修羅は姿を消した。
「【なにっ!?】」
続いて現れるのは金色の髪を持った少女。
少女は背の杖を抜き、その先にある黒き宝珠を輝かせた。
「【姿が変わった……?
――関係、ありませんね!!!】」
金髪の魔術師は一切の焦りを見せず、淡々と
「―― “ファイアーボール”」
紅蓮の塊が金髪の魔術師、アシュの後ろに形成される。
その炎の塊は
それで終わりではない。
杖より黒い魔力が吹きだされた。
「
――黒炎術、“
炎の塊は黒き魔力を纏う。
迫る巨拳。
「【なんです!?
その魔力は――】」
「お前、お姉ちゃんを虐めた……許さないっ!!!」
黒き太陽と
「【う――うわあああああああああああああああああっっ!!!!?】」
黒い魔力に触れた部分はすぐさま塵となる。
アシュが放った“呂色焔”は三つの魔力を組み合わせた三色炎術。その威力は通常の二色炎術の威力を遥かに上回る。
それでも、まだ
「【私が、こんなところで……!
屍帝様、どうか……私の屍を――!!!】」
――絶対不可避。無慈悲の闇が
アシュは空から地面に尻から突っ込み、腰を大きく打つ。
痺れるような痛みが全身を走った。
「うぅ……お姉ちゃんのばかぁ。
わたし、赤い魔力苦手……あんな高さから落とされたら受け身取れない……」
腰をさすりながらアシュは涙を流す。
アシュは腰の痛みから暫くその場から動けなかった。
――
――――――――――
【あとがき】
『面白い!』
『続きが気になる!』
と少しでも思われましたら、ページ下部にある『★で称える』より★を頂けると嬉しいです!
皆様からの応援がモチベーションになります。
何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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