第八話 そして、冒険が始まる
爺さんが魔物になることはなかった。
爺さんの遺体は看守長が回収し、密かに埋葬されたらしい。葬式は
そして爺さんが亡くなってから一か月後――
「さぁーて、準備OKっと!」
オレは牢の外に出た。
黒のシャツ、砂色の長ズボン。上に灰色の外套を羽織ってオレは後ろを振り返る。
そこにあるのは三階建ての大きな建物。建物より身長のある柵に囲まれている。正門の側には緑髪の女看守長が立っていた。
「釈放おめでとう。
これで君は自由だ」
「1年間世話になった」
「心にも思ってないことを口にするな。
そうだ、コレを……」
看守長はオレに封筒を渡して来た。
「あの牢に忘れていた物だ」
どっかで見たことある封筒。
オレは封筒の中を見て、一通の手紙が入ってるのを確認し、解を得る。
「こりゃ、爺さんが孫娘に書いた手紙か……」
「宛先が書いてなくて届けることができない」
「まさか、これをオレに届けろと?」
「その通りだ」
この看守長は……厄介ごと全部オレに押し付ける気か?
「
君への支援金に報酬金を上乗せしてある」
「道理で財布がパンパンに膨らんでいたわけか。
はいはい、わかったよ。手紙は責任もって届けるさ」
良い暇つぶしになりそうだしな。
「孫娘の名前は表に書いてあるから、手がかりにしてくれ」
「ったく、宛先を書き忘れるとは……おっちょこちょいな爺さんだな」
孫娘の名前以外にも、手がかりはもう一つある。
――魔術学院。
ニーアムとかいう性悪女騎士がそこに爺さんの孫娘が居ると言っていた。
だがこの世界に魔術学院がいくつあるかはわからない。片っ端から当たるしかないか。
「それとコレも持っていけ」
渡されたのは鞘に納められた短剣。
一か月前、オレが看守長室の机に叩きつけた短剣だ。確か殺した相手を確実に冥土送りにする短剣だったか?
「この短剣は魔成物だ。
封印術と組み合わせて使うと良いだろう」
「なるほどな。
ありがとう、とは言わないぜ」
「それでいいさ」
オレは巾着バックを地面から拾い上げ、肩に掛ける。
最後に看守長――というより、その背後にある監獄に一瞥し、背を向けた。
「達者でな。シール」
「あぁそうだ。一つ忘れていた。
看守長、オレのフルネーム。教えておくよ」
オレは振り返り、はじめてこの名を名乗る。
「シール=ゼッタだ」
“起”が終わり、長い長い“承”が始まる。
封印術師シール=ゼッタの人生ノートはここから積み重なっていくのだ。
――オレは歩き出す。目の前に広がる果てしない世界に向かって……
――――――――――
【あとがき】
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