第5話 愚者共は踊る

 この後、秀一は弁護士を通じて警察に被害届を提出し、受理された。

 それによりイジメグループの面々は任意同行の上、取り調べを受けることになる。

 取り調べによると、奈々や秀一へのイジメは当初冗談半分だったらしい。しかし、誰かが何かをすると、他の面々はそれ以上のことをするように無言で求められた。ようは、仲間内で『ナメられたくない』『ビビっていない』ことを示すために、イジメの内容がどんどんエスカレートし、止まらなくなってしまったという。承認欲求と自己の優位性マウンティングを狭い人間関係の中で求め続けた末の蛮行だった。

 今回の事件は、それが行き着くところまでいってしまった結果であり、秀一を殺害する意図はなかったと全員が主張した。


 結果、殺人未遂は免れ、傷害罪として逮捕。家庭裁判所に書類送検されることになる。


 夏休み明け、この出来事は学校側に大きな衝撃を与えた。

 学校側はそれぞれへの事情聴取も行い、イジメグループ側の深い反省も理解したものの、やったことの重大性を考慮すると停学というレベルで済ますわけにはいかなかった。

 イジメグループの面々は、学生への最も重い懲戒処分である強制退学となる。また同時に家庭裁判所より保護観察処分が言い渡され、自分たちのあまりに浅はかで救いのない行動によって人生が狂ってしまったことに、この先後悔し続けることになるのだった。



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