第31話 密談
今回は机と椅子があるだけでもてなしはなかった。従者は空き教室の前に一人立っているだけで、中にもアンドレアしかいない。
「イレーンは大丈夫?」
「まあ、とりあえずは」
言って、俺はアンドレアの正面の椅子に腰を下ろす。いつもより大人びた表情のアンドレアはほっと息を吐き、実際の歳より幼い顔付きに戻った。
「魔力暴走の件はわたしの方でなんとか誤魔化して、二人とは無関係の事故、あるいは何者かの魔術によるものということにしたわ。表向きは学院が調査中ということになっているけど、学院長が真実を発表することはないでしょう」
流石に隠蔽工作はしていたか。確認はしていないけど、イレーンの監視役もあの口ぶりならアンドレアと同じように隠蔽に動いているはずだ。
「でも人の口はどうしようもない。そちらからイレーンに繋がった場合は、レヴェンテ、あなたが罪を被りなさい」
「へえ……」
思わず声が漏れるぐらいには驚いた。イレーンへの態度を見るにとことん優しい人だと思っていたけど、そういうわけじゃないらしい。王族というだけあって冷徹な判断もちゃんと下せるのか。
「それは問題ない」
どうせ俺のやらかしで起こった問題だ。そもそも俺の罪なんだから被るも何もない。
「ただ代わりというのはあれだけど、こっちからも頼みたいことがある」
俺はイレーンの監視役の不審な動きについて話した。状況から見てイレーンを殺そうとしているのはその一部だろうけど、内部の捜査だけでは安心できない。
「だからそっちでも調べてくれないか」
念を入れて、外部の人間にイレーンの監視役について調べてもらいたい。アンドレアが言うほど監視役の外部かという問題はあるけど、俺の伝手で頼めそうなのはアンドレアしかいないから仕方がないだろう。
「……やっぱりいたのね」
呟き、アンドレアは頷いた。
「調べておくわ。調査の方はわたしたちに任せて、イレーンの警護をよろしくね」
「大丈夫だ」
勿論、ただイレーンを守っているつもりはない。アンドレアが外堀を埋めて犯人を捜すなら、俺は実力行使で直接犯人を割り出そう。
「それと俺たちはもう会わない方がいいな」
いざという時は魔力暴走の罪を俺が被るんだ。そんな奴と王女が会っていてはのちのち問題になる。
「そうね」
この会話自体も短時間だ。俺は早々に立ち去って日常に戻った。
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