第4話:露天、トレイン、初パーティ



 キレイな夜の滝を堪能した直後、巨大なクモに襲われて。


 チーン。


『近くの村へ』


 唱える(ボタンを押す)と。


 見覚えのある、景色。


 文字通りに、村へと連れ戻されたっぽく。



「はぁ……」


 座る(のアクションボタンを押す)。


 座ると、HPやMPの回復速度が、少し早くなる。


 クモに襲われてゼロになったHPが、村へ戻ると半分くらいに戻っているけど。


 フル回復するには、じっと待つか。


「あ、そうだ」


 自己回復の、魔法があったっけ。


 ってことで、自己ヒールをかけて。


 その分、MPが減るけど、まあ、村でのんびりしてればすぐに回復するだろう、と。


 村を見て周る。


 村には。


 建屋を構えた武器屋、防具屋、道具屋の他に。


 村の広場と言わず、通路と言わず。


 人々が『露天』を広げている。


 覗いてみると、何に使うのかわからない道具や、高い武器や防具、それにアクセサリーなんかを売っている。


 ほぅほぅ。自分の持ち物を他人に売却する事ができるのねー。


 なるるん。


 でも、今はまだ、買うお金も無いし、必要そうなものは、無さそう。


 ウィンドウショッピング? みたいな感じで、何が売ってるんだろう、って見て周るだけで。



 そんな村と言わず、島中に、飛び交う会話。


『遺跡パーティ、募集中! 遺跡入り口までー』


『うわー! 武器落としたーっ!』


『シーダー杖、格安販売中っ!』


『ファイターさん、ペア狩りいかがですかー? 当方魔法職~』



 などなど。


 そっか。


 MMOのだいご味?


 パーティプレイ。


 複数人数での協力プレイ。


 ふむふむ。


 まぁ、今のところまだひとりで感覚に慣れないと、ってところもあるし、他人と一緒に、って言うのもちょっと敷居が。


 そんな感じで、ひとりで村の近くで、クエストも受けてオーク退治。


 しかーし。


 モンスターの数より、ヒトの数の方が、多い?


 モンスターの、取り合い。


 リポップしたモンスターを、我先に、と、倒しに行く。


 戦士職さんは近接戦闘するので、どのモンスターと戦っているか分かりやすいんで、すぐにあきらめて別のモンスターを探しに行くんだけど。


 魔法職同士だと、中距離からの魔法攻撃なので、どのモンスターを狙っているか、お互いに分かり辛い。


 よくあるのが、魔法が同時にモンスターに着弾。


「あ、ごめん」

「いえいえ、こちらこそ。ごめんなさい」


 どっちも、どっちなんだけど。


 そんな会話が初めての会話だったり。


 戦い方もだいぶ覚えて、村から少しづつ遠い場所へじりじり、と移動。


 海岸の先の大通り? みたいなところまで出ると。


 戦士職の男の子が、走って横切る。


 その後ろを。


「げっ!」


 大量の、モンスター。


 ウェアウルフ。ヒト型のオオカミ。


 が、ぞろぞろ、と。


 いちにーさん……四匹?


 うへー。あんなのに取り囲まれたら、おだぶつだよねー。


 ってことで、覚えたての回復魔法を、その戦士さんにかけてみる。


 と。


 戦士さんを追いかけていたはずのヒト型オオカミが、どどっと。


「うへぇええっ!」


 こっちにやって来たっ!?


 なんでー、と、思いながらも、応戦。


 先頭のヒト型オオカミに魔法を放つ。んが、しかし。


 一撃では倒せず。


 この頃の戦い方は、魔法を放ってから次の魔法を打つまでにラグ(リキャスト)時間があるので、後退してモンスターから距離を取りつつ、次の魔法を放つ。


 でも、これは一対一の時。


 今は、沢山のモンスター。


 追い付かれて、殴られるんだけど。


 最初に追われていた戦士さんも後ろの状況に気付いたらしく、Uターンして戻って戦闘に加わってくれる。


 モンスターの攻撃対象が分散したので、どうにか、全部倒すことが出来たけど。


 二人とも、ボロボロ。


 海岸近くの砂浜に二人並んで座る。


 ふぅ。


 ふと、見上げると。


「お月様がキレイ……」


 ぼそっとつぶやくと。


「月あったんやあ」


 戦士くんもつぶやく。


「月あったの知らなかった?」


「うん、知らんかったわ。空とか見ぃひんかったし」


 などと。



 そうだ。


 ぽちっと。


『パーティに勧誘する』


 の、アクションボタン。


「お?」


「これで会話は周りには聞こえないはず」


「おぉ、これがパーティかぁ」


 なんて、はじめての、パーティプレイ……と、言うか、パーティチャット。


 オープンチャットは白文字だけど、パーティチャットは、文字が緑になるのね。


 ふむふむ。


 なんて感じで。


 この戦士くんと、しばらく行動を共にするコトに。





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