第4話 賑やかなダイバーエリア


Seito 「Lenさん!オークの溜め技がくるから下がって!」


Len 「わかった!Seito!」


Seika 「Shinさん!危ないっっ!!」


Shin 「っっ!!」


 Seikaは火の鋭い剣を出すと、棍棒を持ったオークの攻撃を弾く。大きな棍棒はオークの手から離れるとSeitoはつかさず水の槍で身体を突き刺す。


 「グウアァァアっ!!」


 Seitoの水の槍に突き刺されたオークのHPは0となり倒れ込むと小さな粒子となって消えていく。


Shin 「Seito、Seika!助かったよ」


Len 「うちの弟を助けてありがとうな!」


 2人はゲームの攻略を本格的に考え、ギルドに入会した。


 ハッキングされ戦闘特化のAIも使用が出来なくなり、効率を考えるとやはり、人数は多い方が良いだろうと決断し入会の希望をした。


Seito 「何事も無くてよかった」


Seika 「うんうん。そろそろレベルも上がった事だし、そろそろ精霊の試練を挑まない?」


 金髪で如何にもチャラそうなギルドマスターのLenと、黒髪で容姿が整った美形のShinは顔を合わせる。


Shin 「何だか僕達に合わせて貰って悪いなぁ」


Len 「SeitoとSeikaは火と水の試練はクリアしているんだよね?火の剣と水の槍かっこいいよな~!」


 Seitoの手に持つ水の槍とSeikaが持つ火の剣を交互に見つめながら興奮気味で話す。


Seito 「俺達なら経験者だしすぐにクリアできるよ」


Seika 「そそっ!シュバババって一瞬でね!」


 Seikaは手馴れた手付きで火の剣をくるくるとバトンのように回すと顔の前で縦一直線に構える。


Seito 「Seikaさん…。コウモリの魔物を知らずに斬ってますよ」


 Seikaが足元に目線を落とすと小さなコウモリの魔物はメラメラと燃えながら倒れていた。次第に粒子となり徐々に消えていく。


Seika 「あっ…。さっき火の剣を回している時に斬っちゃったんだ…」


 目を丸くし互いに見合う4人だが、次第に顔が緩み大笑いする。


 SeitoとSeikaの判断力の早さのお陰でLenと弟のShinはレベルが一気に上がり帰宅する。


 SeitoとSeikaが住む家からそう遠くのないLenの家に帰宅し4人は中へと入る。


 「皆!お帰り!」


Len 「Anzu。只今」


Anzu 「さぁさぁ!ご飯できてるから早く上がってよ!」


 Lenの幼馴染であるAnzuはアッシュ色の髪をポニーテールに結び、エプロンを装着した姿で4人を出迎える。


 Anzuを筆頭に4人はリビングへと向かうと肉の焼いた香ばしい匂いが漂い食欲がより一層増すと4人はお腹を抑える。


Anzu 「じゃじゃーん!今日はステーキ丼を作ってみました!」


 リビングの真ん中に設置された大きなテーブルの上にステーキ丼と赤と緑色の鮮やかなサラダが5つ、並べられている。


Shin 「Anzu姉は料理上手だよね。お父さんとお母さんが仕事でいない時、気にかけて料理を作ってくれたよね」


Len 「Anzuのから揚げがたまに食いたくなるんだよなぁ~」


 LenとShinはお腹を摩りながら席につく。


Anzu 「今度作るよ!さぁ、SeitoとSeikaも座って一緒に食べよう?」


Seito 「はい!」


Seika 「Anzuさんの料理だ~!」


 全員が席に着席するとステーキ丼の入った器に手を伸ばし箸で掴む。口の中に運んだ瞬間、5人の顔は輝き笑顔で食事を楽しむ。


Seito 「仮想空間ダイバーエリアなのにハッキングされてから味覚や嗅覚が感じられて驚いたよ」


Seika 「夜になったら眠たくなるしね~」


Len 「確かに現実世界のように食欲、睡眠欲も満たせてるな」


Shin 「物を触った時にも触覚を感じられるよね。何だか不思議」


Anzu 「仮想空間ダイバーエリアでこんな生活が出来るのも楽しいよね。何だか夢の中にいるみたい」


 食事をモグモグと食べているとSeikaは急にモニターを出し操作し始める。


Seika 「ねぇねぇ!食事済ませた後、花火しない?」


 操作していたモニターが消えるとSeikaの手に5本の線香花火が瞬座に現れる。


 食事を楽しんでいたが皆揃って、Seikaが握る線香花火を見つめると箸の手がピタリと止まる。


Seito 「それ雑貨屋で買ったやつか。俺も何かあったような…」


Len 「ふふっ…。こんな事もあろうかと俺は打ち上げ花火10発セットを買ってあるんだ!」


Shin 「ハッキングされる前…レベルが上がる度に打ってたうるさいやつ…。買いだめしてたんだ」


Anzu 「私もハートの形にある打ち上げ花火があるんだ~!後でやろ!」


 意見が揃うと5人はステーキ丼とサラダの器を綺麗に平らげ早々に庭へと出る。


 皆が持っている花火をLenは回収すると、こだわりがあるのか打ち上げ花火を綺麗に整列し火の魔法で着火する。


 勢いよく真っ暗な空に光の線が放たれた瞬間、大きな花火が打ち上がる。


Seito 「でっかー!!」


Seika 「わ~~~!現実世界の花火大会みたいー!」


Len 「ふふ。これは序章!ここからが本番ですよ?」


Shin 「兄ちゃん…。何者になってるんだ?」


Anzu 「花火職人になった気でもいるんでしょ。Lenー!早くー!」


 腕を組みニヤついているLenはAnzuに対し頷くと3列に設置した花火を順々に着火していく。


 花火の音は5連続でバンバンッ!と大きな音が鳴ると空に白い大きな花火、ピンク糸の花の形をした花火、そして―――赤いハートの形をした花火が打ち上がる。


Seito 「すっげぇ~~」


Seika 「きゃーー!綺麗ーーー!」


Shin 「ロマンチックだね」


Anzu 「やっぱり花火は良いね」


Len 「おっ!いい具合に綺麗だな!」


 5人は輝いた瞳で花火に見惚れていた。その後は手持ちの花火で円を描くように回ったり、残っていた打ち上げ花火を5連続で打ち上げたりと5人の綺麗な花火のお陰で心が満たされる。


 そして、最後は線香花火を手に持ち着火するとパチパチッと音が鳴り、5人はオレンジ色に光る丸い点を静かに見つめる。


Seika 「ねぇ。現実世界に戻ったら、皆で絶対に花火、しようね」


Len 「うん。絶対に」


Shin 「皆で力を合わせて」


Anzu 「私は皆が元気になるように美味しいご飯を作って…」


Seito 「絶対にこのゲームをクリアしよう」


 小さな灯りを保っていた線香花火はゆっくりと地面に落ちていき、辺りは真っ暗となる。5人は本格的にゲームクリアを決意した日だった。

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