新しいはじまり9

 ようやく熱が下がって、久しぶりに同じ食卓を囲みながら、まだ食欲が完全には戻らない様子のディープに、エリンは聞いた。

「明日から出勤?」

「うん、そのつもり。今週は当直なしでいいと言われたから、早く帰ってくるよ」

「無理しないでね」

「ありがと。大丈夫とは思うけど、君もあと数日は体調の変化に気をつけて」

 エリンは笑って、うなずいた。

「了解」


 *


「いつか自分のクリニックを持てたらいいなぁと思うんだ」

 あるとき、そうディープが言った。


 彼の中に生まれた小さな夢。


 患児達に慕われて、まとわりつかれたり、手や白衣の裾を引っ張られたりして、膝をついて子供達の話を聞いている彼の姿が目に浮かんだ。

 先のことはわからないけれど、そのとなりに自分がいる未来を想像する。


 ようやくそんな明日を描くことができるようになったことが嬉しかった。

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