新しいはじまり10

 日々の生活、人々の営み、日常は変わらず続いていく。その中で、祝福に満ちた大きな喜びの光が生まれる瞬間がある。


 エリンは最近、ディープのことを「ディー」と呼ぶようになって、ほとんど敬語も使わなくなっていた。


 その日、ディープが帰宅すると、先に帰っていたエリンが待っていた。

「お帰りなさい! お疲れ様。ディー、報告したいことがふたつあって」

 彼は斜め掛けしていたバッグを肩から外しながら、

「何かあった?」

 心配気に聞いたところへ、首をふってエリンは微笑み、両手をそっとお腹に持っていった。

「あのね。今度、私達に家族が増えるの」

「……!!」

 ディープの目がまんまるになって、手からバッグが床に落ちた。


 次の瞬間、エリンはギュッと抱きしめられていた。

「やったっ! やったね、エリン!」

 エリンは彼の胸の中で言った。

「それともうひとつは……双子らしいって」

 エリンは、ディープが泣きながら笑っているのを感じた。

「すごい! 嬉しいよ。すごくすごく。ありがとう、エリン」

(ああ……)

 まるで子供のように素直に喜ぶ彼を、エリンは愛おしく想う。


 私はあなたのこういうところが大好き。

 ありがとう、大切にしてくれて。

 いつも信じてくれて。

 私を愛してくれて。


 新しく宿った小さなふたつの生命の進む先が、明るい光に満ちあふれたものでありますようにと、心から願う。


 ——ここから、ふたりの新しい未来がはじまる。

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