エリンの物語6

 それから数日後、エリンが訪れて話している途中で、突然、モーリスは強い痛みに襲われた。身体をくの字にして耐えている彼に、エリンはコールボタンを押して、背中をさすった。彼女がはじめて目にしたモーリスの苦しんでいる姿だった。

「うぅ…。くっ…」

 エリンの前ではなんとかこらえていたかったが、あまりの苦痛に声がもれた。

 すぐにディープが来て、強い鎮痛剤を追加し、痛みがおさまるまでの間、モーリスはエリンの掌の温かさだけを支えにしていた。


 モーリスが眠ったあとで、ディープはエリンの様子に気がついた。

「エリン。大丈夫?」

 少し青ざめた表情で彼女はうなずいた。

「ええ。少し驚いて…。私に見せなかっただけで、本当は今までにもこういうことがあったのですね」

 彼の不安や辛さに寄り添うことができていたのだろうかと思う。

「うん。我慢強いモーリスでも、かなりの苦痛を感じているはずだよ」


 ディープはモーリスの鎮静レベルを上げるつもりだと話した。痛みの生じる間隔が徐々に短くなってきていた。

「でも、それって…」

「そう。今より眠っている時間が多くなる。モーリスは自分が痛かったり苦しかったりするのは構わないけれど、君に苦しむ姿を見せて辛い思いをさせたくないと言っていた」

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