佐々木さんの全て奪いました


「佐々木さんこっちですよー!」

 佐々木さんが走って近づいてくる。


 ニットのワンピースにロングコートを羽織っていて、いつもの佐々木さんとは雰囲気が違くてかわいい。片手にはキャリーケースを引いている。


「ごめんね待たせて」

「私も今来たところです」


 嬉しくて顔がにやけてしまう。本当は20分前くらいについてたけど、楽しみにしていたので時間はあっという間だった。


 今日は佐々木さんと初めて旅行に行く。


 私も佐々木さんもなかなか休めなかったので予定していた日よりかなり伸びてしまったが、それでも今日のために生きてきたようなものなのでいいのだ。


 今日行くところは幻想的な温泉街らしい。雪が降っている時期はその景色が綺麗すぎて、人気で1年前から予約を取らないとなかなか泊まれないような温泉だ。


 今回たまたま宿が空いたので2人分の予約を取ることができた。


「今日泊まるところめっちゃ良くて楽しみだね」

 佐々木さんが微笑んでいる。手をぎゅっと握られて一緒に歩く。なんでそんな綺麗なんだろう、なんでそんなすんなり手を繋げるんだろうと思っていると顔が熱くなる。


 佐々木さんの前ではいつまでたっても顔が赤くなるのが治らない気がする。


「花音、顔赤いよ」

 ふふ、なんて笑って私の頬を撫でてくる佐々木さんはいつだってずるいと思う。


 電車やバスを乗り継いで温泉街に着いた。


「すごい綺麗だね…」

 佐々木さんが言葉を発すると白い息が口から漏れていて、それすらも佐々木さんを輝かせる脇役になる。


 佐々木さんの方が綺麗ですなんてすんなりと言えたらもっと彼女に好きになってもらえるのだろうかなんて思いつつ、前に進んだ。


 チェックインをしたら部屋で休むことにした。


「佐々木さん見てください、ベットふかふかですよ!あと、アメニティも充実してるし、お菓子とかも沢山置いてる!あ、温泉終わった後の浴衣もありますよ!色の種類もあってかわいいですね」


 そう言って私がはしゃいでいると頭を撫でられた。子供扱いされてちょっと不機嫌になっているとムッとしていた唇を撫でられる。ただそれだけの事なのに、胸が高鳴って鼓動が早くなる。


 なんで、そうやって指で撫でるだけなんだろう。いつもの佐々木さんならもう口を塞がれているはずなのに…


「指じゃあ物足りないって顔してる」

「してません」


 この人は私の考えていることがわかるのだろうか、やましい気持ちがバレたくなくて咄嗟に嘘をついてしまった…



「ご飯の時間まで時間あるから、先に温泉入っちゃう?」

「いいですね!入りましょう」


 パタパタと急いで準備をして温泉へと向かう。

 1部屋に1つ露天風呂が付いているという豪華な温泉に泊まって居るので貸切状態だ。


 タオルを巻いているものの、佐々木さんに見られるのが恥ずかしいと思って急いで湯に浸かった。佐々木さんは全然気にしていないのかタオルを巻かないでそのまま入ってきた。


 佐々木さんの体から目を離せないでいると

「花音見すぎだよ。えっち…」

 なんてふざけて、からかわれた。


 佐々木さんは私と2人の時は私のことを名前で呼んでくれるのだが、未だにその呼び方になれなくて胸がむず痒くなる。


 露天風呂の端の方に浸かっていると後ろから佐々木さんが抱きつかれて、軽くパニック状態になる。


「せっかく2人だけなんだから近くに居てよ」


 耳元で囁かれて、蒸発しそうになる。

 佐々木さんが近くにいるのは嬉しいし、こうやって居ても周りの目を気にしないために部屋に露天風呂が付いている所を選んだのだが、この状態は非常にまずいと思った。


 佐々木さんとの密着度が高すぎて私の頭が沸騰している。

 背中に佐々木さんの熱を感じる。

 胸が当たっている…

 顔に一気に熱が集まり何も考えられなくなる。


「耳まで真っ赤だよ」

 そういって佐々木さんは私を後ろから抱きしめながら耳を甘噛みしてきた。

 それだけなのに私の体は反応してしまい、恥ずかしさが込み上げる。


「これ邪魔」

 佐々木さんは私を唯一守っていた心もとないタオルを私から剥がす。


 さっきよりも密着度が高まり、体中が熱くなる。佐々木さんと触れているところが気持ちいい。この熱は私しか感じられないもので誰にも渡したくないと、私を欲張りにする。


 どれくらいそうしていたのかわからないが、頭がぼーっとしてきて何も考えられなくなっていく…


 これ以上はだめだ。


 お湯の中でびちゃびちゃと暴れてお湯から体を解放する。


「も、、もう温まったので上がりますね…」


 恥ずかしくて佐々木さんの顔が見れなかった。


 露天風呂から上がって着替えていると少し不機嫌そうな佐々木さんが出てきた。

 佐々木さんは青ベースの浴衣を着ていた。

 浴衣姿まで綺麗で一眼レフカメラを持ってくれば良かったなんて後悔した。


「なんで上がったの」

 ああ、、確実に怒ってる……


「ごめんなさい…あれ以上は私がおかしくなりそうだったので…」

「別におかしくなってもいいのに…」

「えっ…?」

 微妙な空気が流れている時にタイミングよくドアがノックされる。夕食を運びに来てくれたようだ。


 さっきまで怒っていた佐々木さんはどこに行ったのだろうと思いくらい、運び込まれた食事に目を輝かせていた。

 どれも手の込んだ料理でおいしい。


「死ぬほど仕事頑張ってきてよかったぁ…今日は一緒に来てくれてありがとう」

 佐々木さんがすごく嬉しそうなので良かったと思う。佐々木さんが幸せそうだと私まで幸せな気持ちになる。



「食べ終わったら、少し1階の売店見ない?」

 佐々木さんにそう言われて私は頷いて、部屋を出た。


 1階には何人かお客さんがいて、私達もその中に交じってお土産を見ていた。


「職場に何買ってこうかな」

 そんなことを言って悩んでいる佐々木さんの横顔を見ると綺麗すぎて見とれてしまう。


 私ってなんでこんな素敵な人と付き合えてるんだろう…


 今でも疑いたくなるくらいだ。夢ではないかと思う時もある。


 さらっと買い物を終えて、部屋に戻るとベットにダイブした。

「ふふふ、ふかふかぁ。佐々木さんもこっち来てみてください」

 私がそう言うと覆い被さるように佐々木さんがダイブしてきた。


「ほんとだフカフカ!最高だね」

 2人で布団にでゴロゴロしているとお互いの顔が近くなる。


 佐々木さんが顔を近づけるので私は目を瞑る。

 佐々木さんの唇は柔らかい。唇を当てられているだけなのに気持ちよくなってしまう。


「今日、佐々木さんと来れて幸せです」

「私も幸せだよ」

 どっちも照れくさくなっておでこをくっつけた。


 今日はちゃんと覚悟してきたんだ…

 自分の中にいる臆病のおしりを叩き、気合いをいれる。


 佐々木さんに覆い被さるように体も唇も密着させる。

 未だにこの行為すらなれない私はいつになったら慣れてくれるのだろうと思う。


 顔が熱い。また、いつものゆでダコになっているはずなのに、佐々木さんはその顔を愛おしそうに見てくれる。


 心臓がどくどくと邪魔をしてくる。


 その邪魔な音を振り払い、佐々木さんの顔や耳や首筋に軽くキスをする。佐々木さんが手を私の前に出てきた。

 その手を握り返して、握ったまま彼女の体の脇に置く。


 佐々木さんの耳には学生の頃に開けたというピアスの穴が空いていて、それすらも愛おしいと思う私はなにかの病気なのかもしれない。


 無意識に佐々木さんの耳を撫でていたみたいで佐々木さんがくすぐったいと言っていた。


 そんなのお構い無しに佐々木さんにぐっと近寄り、佐々木さんの耳の上を私の舌が這う。握っている手に力が入り、激しく舌を動かすとその手の力は強くなる。


 もっと握っていてほしいが、その名残惜しい手を離し、佐々木さんの浴衣の紐に手をかける。


「まって、私が花音にしたい…」


 いつもならその言葉に甘えて、私の体を佐々木さんに預けるのだが、今日はだめだ。


 私だって佐々木さんに触れたいし、私と同じように気持ちよくなって欲しいと思う。


「今日はだめ。凛花さんの全てもらいますから」

 付き合うのすら初めてな私は、こんなことを人にしたことがない。なので、順序とかやり方とか全然そんなのはわからないけど、分からないなりに精一杯頑張ってみようと思う。



 手を置いていた紐を引っ張るとスルスルと解けてしまう。紐の解けた服を少しめくって見ると佐々木さんの下着と肌が見える。綺麗なお腹に手を置くと、佐々木さんの体に力が入っているのがわかった。


「佐々木さんは私にされるの嫌ですか?」


 少しだけ不安になった。この気持ちは私だけの気持ちで、佐々木さんに我慢させていたり、本当は触れられるのが苦手だったりしたら嫌だなと思った。


「その質問ずるい…」


 その言葉を聞いて少し安心した。

 別にいいとも言われていないけど、佐々木さんのお腹に置いていた手を彼女の体の上で滑らせる。


 肋骨から上に行くと佐々木さんに下着にたどり着く。下着の上から優しく胸を触ると佐々木さんが私の肩に置いていた手をぎゅっと握るのがわかった。


 そういう行動が私の理性を壊していく。


 ちゃんと相手の反応を見てゆっくりすべきなのはわかるけど、なかなか言うことを聞いてくれない。


「佐々木さんちょっと背中浮かせてください」


 少し困った顔が仕事中は絶対に見れない顔でずっと目に収めておきたくなる。

 佐々木さんは否定もせずにお願いを受け入れてくれた。


 佐々木さんを守っていたそれはすんなりと外れてしまい、ただ彼女の体の上に乗っかっている状態になる。


 下着を上にずらし、さっき温泉で見た佐々木さんの綺麗な胸が現れる。


 優しく触ってみる。見るだけでは分からないくらい柔らかく手を離したく無くなった。


 しかし、胸の先端は柔らかい部分とは反対に硬さを増していく。もっとその形が変わるように私の指は硬い部分をずっと撫でている。


「かのん…やっぱり恥ずかしい…」


 そういって佐々木さんは私の腕を掴んできた。ただ、その手に力は入っていない。


 その行動がかわいすぎて、私の手の動きは激しさを増してしまう。そして、彼女の唇を塞ぐ。口の中に舌を滑り込ませると、佐々木さんの舌と交わる。その熱のせいで頭がぼーっとする。



 佐々木さんはいつもより高い声で私のことを止めようとしてくるが、その言葉と体の反応は相反するもので、私の手の動きが止まることは無い。


 少し頭を下の方にずらし、先程まで指が置かれていたところを舌で撫でる。そうすると、さっきまで我慢していた佐々木さんの声が漏れてしまうのが聞こえる。


「かの、ん、、それはだめ…」


 そういって佐々木さんは私の浴衣をぎゅっと掴む。

 佐々木さんが悪いのだ。そんな可愛いことをされたら止められるわけが無い。

 舌を動かすスピードが早くなると佐々木さんの体に入る力も強くなっているのがわかる。


 お互い呼吸が乱れる。


 胸元にキスをして優しく強く吸った。

 そこには赤く跡が残り、一生これが残ればいいと思った。


 佐々木さんの胸の上にあった手を下に滑らせる。


「まって…」


 佐々木さんが私の手を掴んで私の向かう先に行くことを邪魔してくる。


「そんなに私に触られるの嫌ですか?」


 意地悪な質問をしてみる。いつも、私の方がからかわれているのだから、これくらいしてもバチは当たらないと思う。


「ちがっ…かのんにしられたくない……」

「凛花さんの全て教えてください。あなたの全部欲しいです」

 そういうと抵抗するのを諦めたのか掴んでいた手の力が弱まる。


 佐々木さんの下着の間に手を滑り込ませると、自分でも驚いた。


 佐々木さんが…?私に触られてこうなったの?そうだったとしたらとても嬉しい…


 佐々木さんのそれは私の指を一瞬で包み込むくらい溢れていた。


 佐々木さんの顔を見ると少し涙目だったので心配になり聞いてみた。


「なんか嫌なことしちゃいました?痛かったですか?」


 そういうと佐々木さんは首を横に振った。


「かのんに触られてると体おかしくなって恥ずかしくて消えたくなる…」


 この人はずるいと思う…いつだって私の感情を揺さぶり、おかしくしてしまう。そんなこと言われたら、止められなくなってしまう。


 私の指は頭で考えるよりも先に動いていて、佐々木さんの体はそれに反応する。


「……っん…ん…」


 頑張って声を抑えている佐々木さんもかわいい。そんな努力を無駄にするかのように私が佐々木さんの唇の間に舌を入れると声が漏れ出る。


 その声と連動して私の手のスピードが早くなる。佐々木さんの内側からドロドロと外に溢れるそれを誰も止めることはできない。


「か、のん…」

「りんかさん…だいすき」

「んっ…わたしも…んっ」


 この時間がずっと続けばいいと思うけれど、手の動きを止めることはできなくて、佐々木さんの体から一気に力が抜けるのがわかった。


 佐々木さんは呼吸を整えようとしているがそれを邪魔するように口を塞いだ。佐々木さんの息が漏れながらするキスは、私のことをよりおかしくして、佐々木さんにもっと触れたいと思わせる。


 そんな自分の欲望を我慢して、佐々木さんの頬にキスをする。


「体大丈夫ですか?」

「うん…」

 佐々木さんが目を合わせてくれないので顎をグッと持ち上げて顔をこちらに向けた。

 私よりも真っ赤なんじゃないかというその顔はかわいくて、きれいでこの先も私がずっと独占したいと思った。


「りんかさんかわいい」

「かのんのばか…」

 そういいながら佐々木さんはぎゅっと私を抱きしめてくれた。この体温が心地よくて幸せな時間が流れる。


 佐々木さんと居ると毎日幸せで、新しいことが沢山経験できて、たくさんの感情をくれる。


 佐々木さんをこれからも幸せにできるように努力しようと誓った日でした。



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 最後まで読んでいたたぎありがとうございます!


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 連載中の作品も他にあるので、時間ある時に覗いてもらえると嬉しいです!


 今後もよろしくお願いします!

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