第4話 細江カイト

「そこまでだー」


 結果は──


「205番のしょーりー」」


 緑髪の男子の放つ魔法をピンク髪の女子が防ぎ切ること三分。


 ピンク髪の女子が勝負に勝った。


 女だからだろう。

 正直、負けると思ってみていた。


 周りもざわつき出した。


 どうやら同じことを思っていたようだ。


 まあ、男側の魔法……そんなにすごくなかったからなあ。


 二人がワープ魔法により会場へと戻ってきた。


「いやあ、なかなかいい試合だったよ二人ともー」


 ニコニコとそう言った後、試験官は言う。


「よーし、次は244番と234番!」

「うっす」


 気の抜けた声が後ろからした。


「まじかよ……」


 何やら自身のないような声もだ。


「おい、234番終わったな……」

「どんまいすぎるだろ」

「アピールする時間あんのかよ……」


 なんだ?

 まるで244番の人が強えみてえな感じじゃねえかよ……。


 234番か244番のどちらかが俺の横を通り過ぎた。


 真っ暗な髪をした男子だ。


 なっ。


 同時に全身には冷たい汗が溢れ出す。


 なんだ、この感覚……。

 恐怖?

 何に恐れている?

 

 全身が恐怖に締め付けられる。


 どーなってやがる!?


 一瞬でわかった。

 こいつがら244番だと。

 何よりも、こいつはそこらのやつとは違う、と。


 おもしれえ……。


「な、なあ、244番のやつ誰か知ってるか?」


 隣にいた受験生に話しかけた。


「あっ、ああ! 細江カイトだろ、タメで知らない人なんていない」

「お、おう」


 えっ、そんな有名な人なの?


「もっと詳しく話せ」

「えっ、なんで」

「いいから話せ」

「わっ、わかったよ! 彼は魔王の家系であり、あの闇属性魔法を使うことのできる男だよ。まだ冒険者になってないのに現時点であのナンバーワン冒険者パーティー『スカイアイ』の入隊が決定している……とんでもない実力者だ!」


 『スカイアイ』だと。

 知っている。

 冒険者パーティーで唯一のSランクパーティーであり、最強のパーティー。

 俺も『スカイアイ』に入隊することを目標としていた時期があった。

 今は自分で作ることだけど。

 にしても、そんなすげえやつを知らなかったなんて、我ながら呆れてしまうな。


「ほお、カイトか」


 試験官がカイトに話しかけた。


「うっす。知ってるんすね」

「知らないやつなんていねーだろ。ふん、お前、陰気すぎてここの会場にいるの全く気づかなかったわ」

「うっす、そーすか」


 カイトは茶髪の髪の男子を見る。


「手加減しねーならな」

「おっ、終わった……」

「んじゃ、競技場に送るぞー」



 会場は緊迫した空気と化していた。


 なんだろう。

 みているこっちまでドキドキしてしまう。


 勝てっこない234番には悪いが、間違いなく勝つのは244番だ。

 当たり前かもしれないが、もし仮に244番が有名人じゃなくても、その実績がなかったとしても容易く勝ちを予想できる。

 そのくらいに桁違いのオーラが彼にはあった。


「試合開始!」


 試験官がそう言うや否や、カイトの背後から二メートルほどの巨大で真っ黒な右手が出現した。


 みっ、見たことねえぞ……こんな魔法!!


「なんだよ、この魔法は!!」


 隣にいた男子に話しかけた。


「きっ、君知らないのかい!? あれは闇属性と光属性の魔法にしか存在しない魔法──禁断たる所以マジックハンドだよ」

「いや、知らねえ……」


 知る機会はいくらでもあった。

 けれど、今日までひたすら修行と勉強のことだけを頭に入れていた俺にとって、耳に入ることはなかった。


「悪いが終わりにするぜ、禁断たる所以マジックハンド


 巨大な手は234番を掴んだ。


 同時に234番は目を白くし、口から泡を吹き出した。


 ちっ、チートだ……。


 圧巻に取られてしまった。

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【朗報】魔力なしの冒険者ですが、幼い時から剣技を極め続けた結果、魔法なんて要らなくなりました! さい @Sai31

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