第3話 実技試験
「よーし、今から実技テストをやるぞー」
会場の前に立つのは寝癖のある白髪の男性だった。
シャツだしスーツ姿とだらしない格好をしていた。
「今から二つの番号を言う。呼ばれたら、前に来い。勝負をしてもらう。つっても、勝ち負けは関係ねえからアピールをしまくりやがれ、わかったかー」
第三試験、内容は個々の実力を見るもの。
魔力のない俺にとって一番のアピールする場所だ。
いくら勝ち負け関係ないと言っていても負けるよりは勝つほうが点数をつけるはずだ。
やってやる。
このために剣技を極め続けたのだから!
「……まっ、いったんその前に休憩だ。緊張したままやったって意味がねー。いいか、十五分休憩をやる。そこで緊張をほぐしやがれ」
試験官の言う通りだ。
空気感が完全に緊張となっていた。
このままやっても全力を出せずに終わる人が多数だろう。
「坂本ショウゴー、ちょっと俺のところに来い」
ん?
一体なんだろうか。
「他の奴らは各々楽にしてろー。十五分後にここに戻ってこい!」
試験官のその声と共に、会場からは受験生たちは出て行った。
俺は試験官の元へと向かう。
「えーっと、俺が坂本ショウゴですけど……」
何かしたか?
いや、特に身に覚えはない。
なら?
試験官は目を細めて。
「お前が静波アサヒか! 聞いたぞ、魔力がないんだってな! 魔法が命の冒険者に魔力なしでなる。面白いやつだな!! だが、いいな、その自信!!」
おっ?
馬鹿にされるかと思ったけど案外いい人なのか?
試験官は俺の右肩に手を置いて。
「期待してるぞー」
「は、はい!」
「魔法を使わないならどーやって戦う気なんだ?」
「剣技っすよ。俺はね、剣技をずっと極め続けてきたんですよ。おかげで斬撃だけで岩を真っ二つにできる力を手に入れた」
ふん、と試験官の頬が緩む。
「面白いやつだ」
「あざす……緊張するんでトイレ行ってきていいっすか?」
「ああ、いいぞ。頑張って合格しろよー」
「へい」
頑張って合格か。
頑張らなくても合格できるくらいの力を俺は持ってるんだ。
合格しなくては俺の未来はない。
俺の努力は水の泡だ。
やってやるよ。
一番の見せ場なんだからな!
○
「んじゃ、実技を始めるぞー。205番と219番」
はい!
と、同時に返事をして立ち上がったのは男と女一人ずつだった。
どうやら、男は男と女は女とではないようだ。
まあ、冒険者に男も女も関係ないのだから当然か。
一つ疑問に思うことがある。
援護をメインにしている連中はどうやって戦うのだろう。
「205番、お前は冒険者になって何の役わりをするんだ?」
205番はピンク色の髪をした女子側だった。
「わっ、私は回復魔法と防衛魔法が得意なので援護をしようと思っています!」
「よし、219番は?」
緑髪の男子が言う。
「俺は前衛です」
「ふむ、なら、三分間205番は219番の攻撃を耐えろ! 一撃も219番が205番に触れられなかったら205番の勝ちだ。それ以外は219番の勝ちだ」
なるほど、そういう感じか。
やっべ、俺ってバリアを破ることできんのか?
少し不安になってきたが、何とかするしかない。
ひとまずは205番と219番の試合を見るとしよう。
「んじゃ、お前ら闘技場にワープな」
試験官が二人に触れた途端、二人は消えた。
転移魔法だ。
バチン、と目の前にある黒板に映像が映し出された。
そこには二人の姿が闘技場に映っていた。
「試験はこうして闘技場で行われるのをここで見る。んじゃ、二人とも、試験開始だー!」
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