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 彼女が切り出そうか迷っている微妙な沈黙の間に、リベルは考える。

 昨日の続き、で訊きたいこと。

 つまり、昨夜リーシェはそのことを訊いている途中だったか、もしくは切り出す直前だったに違いない。

 とすれば、リベルにも容易に想像がついた。

「……アナタのお店って」

「本当はどういう商売をしているのか……とか?」

 自身の言葉を継いだリベルに、リーシェは大きく丸い目を更に丸めた。

 そしてそれが、自分が遠回しに訊こうとしたその一切を省いた言葉だったもので、ぱちくりと瞬きしては頷く人形にならざるを得なかった。

「……僕が答えずじまいだったからね。何となく、予想はつくよ」

「それってつまり……」

 リーシェは前屈みのまま、更に体制を落としてリベルの顔を上目遣いで覗き込んだ。

「ただの玩具の話じゃない……ってコトね?」

 今度はリベルが沈黙する番になった。

 ここですぐに返答が出来ないのは、つまり肯定していると同じに捉えられるだろう。

 しかし、それでも、この状況に置いて尚、リベルは決断を下せずにいたのだ。

「多分、君が知って得するようなことでもないと思うけど……」

 話さなくて良いなら勿論リベルはそうする。

 もし、この質問の問いに答えれば、リーシェは後戻りできなくなるだろう。

 自分で選ぶか選ばないかの道は無く、『そういう事が存在している』という事と『自分がそれに関わってしまった』という記憶がリーシェの一生に付き纏うことになる。

 何より『リベルはこの事に深く関わっていた』という印象を、彼女に与えたくなかった。

 リベル自身は恥じらいも何も感じていないが、世間的に見れば異質な事柄であることは間違いなかったからだ。

「ふぅん、まぁ私も無理に教えてとは言わないわ」

 けれど、リーシェの気持ちもわからなくはない。

「でもね?」

 と返したリーシェの言葉からも、彼女が諦める気になるには程遠そうだ。

「あからさまに何かを隠されていて、私だけ何も知らないままなんて出来ないわ」

 それはそうだろうな、とリベルは心の中で納得した。

 リーシェがいつから疑問に思っていたのかは定かではない。

 もしかしたら以前から父ガレットのことを怪しんでいたのかもしれないし、このアリアンテール店に来てから唐突に疑問が湧きあがったのかもしれない。

 そもそも、リーシェが何も知らないのであれば、ガレットは娘にわざと話していない可能性も大いに有りえる。

 もし最後の予想が当たっていたならば、ガレットと自分の父親までも裏切ってしまいそうである。それも避けたかった。

 そして、トドメの悩みどころにリーシェはこんなことを口走るのである。

「もし教えてくれないなら……そうねぇ、自分で調べるしかないかなぁ」

 これだ。

 昨日の今日でこの店に、しかもリベルの父に会話が聞こえれば教えて貰えなさそうだからとわざわざリベル一人の時に乗り込んで来た彼女のことだ。

 きっと次はリベルにも内緒でこの店を漁りに来るだろう。

 現在のこの店はリベルかローレンツのどちらかが必ず居るので無人にはならないが、もし止められなければ非常にマズい。

 それはリベル達のことではなく、彼女自身が危険に晒される可能性が有るからだ。

 どうする?

 と言いたげに瞳を少し細めて口角を上げる彼女に対して、リベルは深めの溜息を吐いた。

 彼女が何処かで疑問を持ってしまった時点で、結局はこうなっていたのだろう。

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