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「娘のリーシェだ。リベル、覚えてくれているかい?」

 ガレットの紹介と一緒に、リベルと同い年くらいの少女が影から出て来る。

 薄い銀髪をしたセミロングの髪が、覗き込んだ首の動きに合わせてフワッと垂れ下がった。

 明かりを落とした店内でもパッとわかるようなワンピースを着たその少女は、薄い緑色をした大きな瞳はそのままに、リベルに向かってニコリと微笑む。

 夜風で冷えないように、ワンピースの上には茶色のカーディガンを羽織っているようだった。

「久しぶり……ね? 確か」

 風を含んだかのように落ち着いた、とても落ち着いた声がリベルへ向けられた。

 父親とガレットは古くからの付き合いらしく、リベルと少女、リーシェも昔から知ってはいる仲だ。

 そんなガレットもここ最近は店が夜に閉店してからしか訪れず、そんな夜中に年端もいかない娘を連れて行くこともできないために、ずっと会ってはいなかった。

 リベルの記憶によると、最後に会ったのは父親がこの『夜中の商売』を始めだした頃に昼間に来た時だから、およそ数年前だろうか。

「今日は妻が仕事で帰って来なくてね。夜中に連れ出すのも悪いと思ったんだが、家で一人にしておくのも心配だから連れて来たんだよ」

 とガレットは娘の背中を押しやるように一歩身を引いた。

「リベル、済まないが君の父親と話している間、私の娘の話し相手にでもなってやってくれないか?」

 正直、リベルは表情を強張らせた。

 そこには普段客以外の人間と話す機会に恵まれなかった経験も含まれているのだが、加えて女の子ともなると話題からなにからどうしたものだろうか。

「リベル」

 ローレンツがリベルに声を掛けた。

「あー……いつものやつなら好きに使って良い。向こうで遊んできなさい」

 ローレンツは意味深にそれだけ言うと、ガレットと共にその場を離れて商品の置いている店の隅に行った。

 残されたリーシェがリベルの元へ寄って来る。

「いつものやつって?」

 それは、リベルにとっては何てことない物だったが、言いにくそうな父の代わりに首を傾げた。

「こっちだよ。おいで」

 リベルはリーシェを連れて、父親たちとは反対の、カウンターの奥へ向かう。

 そこには、店に並べる予定の商品や備品類がズラリと並べられた倉庫のようになっていた。

「わ! すごいね、これ全部売り物なんだ」

「全部無くなる予定は十年先だろうけどね」

 感嘆の声を上げるリーシェに、リベルは首を振って応える。

 外傷に効果の有る薬草を煎じた物、火を点けると魔物が寄り付かなくなるお香、魔物と出会った時に投げつけると匂いと姿を隠す煙を噴出する小さな玉、等々。

 売れた時には馬鹿みたいに売れた商品の残りを素通りして、リベルは端に置いている棚の中に手を突っ込んだ。

「暗いと良く見えないな……確かここら辺に……」

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