この世界の村は魔物に脅かされてるらしい

目が覚めて朝から風呂に入るという贅沢を満喫した俺達は移動を再開した。

凛には物理耐性、魔法耐性、不壊耐性を付与した防具を作って渡してみた。制服に似せたがなるべく露出は減らした。旅には危険がつきものだし肌を出すのは危ない。俺は重量軽減をつけた籠手を作り制服に不壊耐性を付与してみた。初めてだがわりかしよくできていると思う。

「特に目的は無いけれどこれも旅の醍醐味ね。そろそろ村とかについてもおかしく無いと思うけれど。」

「村ねぇ…。今日中には辿り着きたいけどな。」

俺たちがそんな事を話していると次々と魔物が現れた。神速一閃の合わせ技で切り捨てる内に神速の使い方に慣れてきた。

「にしてもアンタチートもいいとこよね。」

「まぁな。けど凛のシールドだってチートだろ。破格の防御性能だぞ。」

「私の職業はシールダー。1つだけよ。アンタは三つ持ってて全部がチートクラスじゃない。剣聖は言わずもがな鍛冶士、アイテムクリエイターも化け物よ。知ってる物なら何でも作れるって何よ。訳がわからないわ。」

「料理が作れない。」

「もうそれはわかったわよ…。アンタに生活能力が無いから私が…。」

「私が?」

「なんでもないわよ!」

理不尽極まりなくキレられた。怖い。

俺たちが歩いていると悲鳴の様な声が聞こえてきた。見える範囲には視認できない。

俺は凛を抱き寄せお姫様抱っこをする。

「何だかんだお人よしよね。」

「否定できんわ。しっかり捕まってろ。」

凛がこくりと頷いたのをみて俺は全力で神速を使った。

見えてきたのは魔物に襲われる村。俺は勢いのまま魔物を蹴り飛ばすと魔物は吹き飛んだ。

そっと凛を下ろす。

「シールド!」

すかさず凛が村にシールドをはるのを見届けて俺は村内にいる魔物を即座に切り捨てて回った。


「旅のお方!本当に有難うございます!」

そう俺たちに礼を言うのはこの村の村長さんだった。

「いえいえ。困った時はお互い様ですから。」

俺は対応をコミュ力お化けの凛に任せて周辺を確認する。村には一切防御方法が無い。

シールドは一定距離離れれば効果を失うのは昨日確認済みだ。距離にして1kmで効果は消える。それでも本来は十分だがこのままでは結局魔物に襲われてこの村は無くなってしまうだろう。俺はひとまず破壊された家を修復して回った。お礼を至る人に言われたがもう少し早く来ていたら犠牲者を抑えられたのにと考えると落ち込むだけだ。愛想笑いで返しながら村の端を入念に確認して回っていると凛に話しかけられた。

「どう?」

「塀がいるな。不壊属性を付与すれば壊されることもないだろ。塀を作るスペースが欲しいからもう少しシールドを広げてくれ。」

「わかった。」

凛が頷くとシールドが少し広がりその分スペースが出来た。

「どう?」

「ありがとう。十分だ。」

「そっ。私は村長に話してくるわ。」

「頼む。俺はあの山から大量に岩を取ってくる。20分で戻る。」

「了解。アンタなら大丈夫だと思うけど気をつけなさいね。」

「あぁ。」

俺達はそれぞれ行動を開始した。


岩を大量にアイテムボックスに詰め込み戻ると凛と村長の姿が見えた。

「村長の要望通りにシールドを広げたわ。」

「助かる。」

俺はテキパキと岩を取り出して塀を作成した。

昔城に興味を持って石垣を調べていて良かった。知識は武器だなと思った。

塀を完成させて村の入り口は認証式にした。オートロックをイメージした扉だ。

「本当に何とお礼を言ったらいいか…。お礼と言っては何ですが馬車を1台ご用意しました。良ければお持ちになってください。」

「いいんすか?」

俺は即座に反応する。

「ちょっと!すいません。ウチの人遠慮がなくて…。」

まるで嫁の様な口振りである。対価としては安いくらいだと思うんだが…。

「いえいえ。この地域の村は魔物に襲われていくつも滅びております。国からの支援もなくただ死を待つ我々をあなた方が救ってくださいました。それにそこのお方は畑も耕してくれました。命の対価としては安すぎると思いますがどうぞ持っていってください。」

「国からの支援はないのか?」

「えぇ。魔物が増えてから城下町は鎖国状態ですから…。」

「あの国とんでもねぇな…。決めたよ爺さん。馬車の礼だ。目につく村が死村になってない限りは俺が何とかしてやる。」

俺がそう言うと村長が涙を流しながら何度も頭を下げた。

馬車に乗り込み村を出る際、村民に盛大にお礼を言われて見送られた。

「安請け合いね。」

言葉は冷たいが凛はどこか嬉しそうに微笑んでいる。

「目立ちたくはないけど手の届く範囲くらいは守りてぇじゃん。」

「そうね。アンタは前からそう。そういうところ私は好きよ。」

「そっ…そうか。」

「えぇ。」

突然そんな事を言われて流石に照れて黙る俺のことを凛は横で微笑んで見ていた。

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