第32話

 おれたちはシザークに黒衣の化者ダークレイスのことを話した。


「まさか、やつらが魔王の復活をたくらんでいるとは......」


 そういうシザークは意外にも落ち着いている。 


「リザードマンに取り入ってオークとの戦争をそそのかしているのたろうな」 


 ゼオンがそういうと、サクトもうなづく。


「ここはオーク族と同盟を結ぶべきでしょうが、奴らになにか妨害をしてくるのでは?」


「そうだね。 とりあえず情報を得るために、おれとゼオンでいくか」


「まちなさいよ! 私もいくわ!」


 そうデュセがいうとほかのものたちもいくと言い出した。


「いや、大勢でいくとばれる。 しかもおれといたデュセたちは見張られているかもしれん」


「なら、ばれないあたしね!」


 リーシェがおれのポケットにはいった。


「じゃあ、最悪戦争になったときのため、準備をしておいてくれ」


「わかりました。 オークへの戦争物資の輸送などを行っておきます」


 そういってサクトはうなづいた。



「かなり高い山だな」


 おれたちは険しい山道を進む。


「この山脈が、こことオークたちの領界をへだてていたので、今まで戦うこともなかったのです」


 そうゼオンがいった。


「そうですね。 我らは比較的穏やかに過ごしていました」

  

 シザークをみてふとおもったことを聞く。


「その鎧どうやって手に入れたんですか。 鉱山から鉄を製鉄して作成しもの?」


「いいえ、我らのなかシェイプシフトの魔法で姿を変えられるものがいますので、鉱物、特に金、銀、宝石などを人間たちに売り、それで購入したものです」


「なるほど、うちと同じか、そういえばオーク領界にはそういう鉱山が多いときいたことがある」


 ゼオンはうなづいている。


「鉱物がでるなら、うちの製鉄技術と武具の鋳造などで自作できるかな」


「本当ですか!? それは是非教えを乞いたい! 鉱物資源しかない、我らは必ずしもみな裕福ではないので......」


 そうシザークは険しい表情になる。


「わかりました。 それにリーシェ......」


「......ええ、いるわよ」


 ポケットのリーシェがそういった。


「えっ? なにがですか...... まさか」


「ええ、そのようですね」


 シザークとゼオンも気づいた。

 

 山道の荒れた地面からゴーレムが三体あらわれる。


「三体か......」


「ここは俺が」


 ゼオンが前にでる。


「さすがにゴーレム三体はきつい! 援護を!」


「大丈夫」


 そういって斧をもつシザークをおれはとめる。


 ゼオンは風のように動くと、三体のゴーレムを一瞬でバラバラに切り裂いた。


 ゴーレムたちは崖下へと落ちていった。


「なんと!? ゴーレムをあんなに容易く!」


「結構やるわね。 あの狼、私ほどじゃないけど」


 そうリーシェは上から目線でいった。


「さすがだね」


「ありがとうございます。 お話のとおり、確かに少し固い」


(あれを少し固いか...... ゼオンもかなり強くなってるな)


「......驚きました。 シルバーウェアウルフとお聞きしましたがこれほどとは......」


 シザークも驚いている。


(だがゴーレムだけ、しかも三体程度...... なんでこんなところに、オークの行動を予測して配置したのか)


 疑問ものこるが、おれたちはオークの領界にむかった。



「ここがオークの町か」


 町にはいると、そこはおれたちほどではないが、人間たち並みに発展していた。 しかし、ものものしい警備とせわしなく人がいったりきたりしている。

 

「ええ、潤沢にある鉱物資源のおかげです。 しかし鉱物資源も無限ではありません。 いずれなくなれば...... リザードマンたちとの問題がなくても、マサトさまたちとの協力は不可避なのです」


「なるほど」


「こちらです。 族長にお会いください」


 シザークにいわれ中央にある城におれたちは招かれた。


 城のなかに入り部屋の前で、大きな声が聞こえる。


「わたしは反対です! 他種族の力を借りるなど、誇りはないのですか!」


 そういって複数のオークが部屋をでてきた。 


「ちっ」


 こちらをいちべつし、そのオークの集団は、おれたちの横を通っていく。


「なによ! あの態度!」


 リーシェは憤慨している。


「申しわけございません。 我が族長の息子バーンさまです」


 そうシザークはあやまった。


「まあ、そういうものもいるだろうね」



「王よ。 マサトさまとゼオンさまです」


 そうシザークが告げると、部屋にいた威厳あるオークは席を立つ。


「これはこれは、よくおいでくださいました。 私がオーク族の族長、ザッハです」


「四種族の明主マサトです。 それで現状は」


「はい、リザードマンたちはこの先に陣を引いています」


「もう、そこまでか、すぐにおれたちから援軍を送ります。 リーシェ」


「わかったわライトエレメント」


 リーシェが目をつぶると、複数の光る玉が部屋の窓からでていった。


「精霊ですな......」


「ええ、明日には連絡が届き、援軍が来るでしょう」


「ありがたい。 今日は部屋を用意しました。 こちらにお泊まりを」


「はい」


 おれたちは城で歓待を受けた。



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