第33話

「マサトさま!」


 朝になるとゼオンが部屋にはいってきた。


「ふぁ、なによ...... うっさいわね」


「おわっ!! なんでリーシェがここに!」


 おれのそばで寝ていたリーシェに驚く。


「マサトさまそれどころではありません! 若いオークたちが先走り、兵をあげたようです!」


「なっ!?」


 おれたちはオークの族長ザッハのもとへとむかった。


「おお、マサトどの」


「マサトさま!」


 ザッハとシザークは困惑しているようだった。


「勝手に兵を挙げたとか」


「ええ、わが愚息バーンが仲間と共に兵を挙げリザードマンに、向かっていったとのこと」


 そう疲れた顔でザッハは答えた。


「ならばおれたちが止めます」


「いや、愚かな息子のために、あなたが危険をおう必要はない。 放っておいてかまわない」


 ザッハは冷徹にそういうと、部屋をでていった。


「シザークさん。 彼らがどこにいるかわかりますか?」


「まさか、いかれるおつもりてすか......」


「さすがに放置もできないでしょう」


「ええー ほってきなさいよ。 バカ息子なんて」


 リーシェがそういう。


「すみません...... おそらくは隠し洞窟でしょう」


「隠し洞窟?」


「ええ、バーンさまはそこからの奇襲を強く進言していました」


「わかりました。 そこから助けにいきましょう」


 おれたちは隠し洞窟へと向かった。


 

 そこには茂みに隠れた洞窟があった。


「ここが隠し洞窟です。 ここからリザードマンの陣の裏にでられます」


「なるほど、確かに通った跡がある」


 泥道に複数の足跡があった。 おれたちは中へと進む。


「なんか精霊が騒ぐわね」

 

 そうリーシェが口にする。


『ええ、かなりの人数、この先にいます』


「なにかいるのか! 早くいこう!」


 おれたちが近づくと声がする。 そこでは大勢の倒れたオークたちと黒いローブのものたちがいた。


「くっ!! 貴様!! なぜここを!!」


「あははっ、さあねえ。 なんででしょう?」


 そうやたら明るく話す小柄な黒いローブのものと、地面に伏せた族長の息子バーンがいた。


「さあ、死んでね」


 そういうと、バーンを片腕で軽々と持ち上げた大きなローブの者がその首をしめている。


「ぐふっ」


「やめろ!!」


 おれは【魔力剣】《オーラブレイド》でバーンを持ち上げたローブの者を横になぎはらった。


 ドカッ!!


 ローブの人物を壁に叩きつけると土煙がおこる。


「へぇ、やるねぇ。 なにもの? あっ! あんたがバグラがいってたマサトか」


 そう小柄なローブの人物が手をたたく。


(この声、子供みたいだな......)


「お前たち魔王を復活させてどうするつもりだ!」


「どうもこうも、この世界を滅ぼすに決まってるじゃん」


「なっ!? 滅ぼす」


「さぁ、みんなあいつらをやっちゃって!」

 

 そういうと、黒いローブの人物が四人、こちらに走ってくる。


「行きます!!」


 ゼオンが前にでて剣をふるう。 二人が両断された。


 残りの二人が剣をふるう。


 おれが魔法剣で二人を叩く、横の壁に二人はぶつかった。


(やはり......)


「ゼオン気を抜くな。 人でもモンスターでもない」


 倒れていた両断された二人の体がくっつき、四本腕になる。


「これは!?」 

 

「やっぱり人形か!」


「せいかーい。 それは私シグスの作った魔法人形でーす」


 小柄な人物がそういった。


 ゼオンは四本腕の人形と戦っている。


「よし、なら......」


 おれの剣が後ろに向かう。


 ガキンッ


 剣に重さを感じた。 後ろを振り向くとシザークが斧をおれに振るわれていた。 その顔は驚いている。


「くっ! なぜだ!」


「やはり、お前が裏切り者か! リーシェ」


「エアロバースト!!」


 シザークの近くが爆発すると、シザークは吹き飛んだ。


「ぐはっ!」


「あれれっ? ばれちゃってた。 これは退散だね」


 そういうとシグスは奥へと走っていく。


 ゼオンは四本腕の人形を切り裂いた。


 おれは倒れていたバーンやオークたちへと駆け寄り、生き残りを回復させた。


「それにしてもよくシザークの攻撃を防ぎましたね。 最初から疑っていたのですか」


 ゼオンがそういって感心している。


「いいや、まあゴーレムがいたり、隠し洞窟に敵がいたり、裏切り者がいるとは思ってたけど」


「ならばなぜ攻撃を防げたのですか?」


「剣に精霊を作ったんだよ。 【剣の精霊】《ソードエレメント》だ」


「あたしが教えたのよ。 精霊を作れるマサトなら、剣に精霊を宿らせられるはずだからね」


 リーシェが胸を張って答えた。


「なるほど、それで」


「うっ...... これは」 


 バーンが目を覚ました。

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