第31話

 とりあえずおれの家で話をすることにしてすぐ向かうと、家はいつのまにか三階建ての建物になっていた。


「な、なんか豪邸になってる......」


「ええ、ウェイどのから教えてもらった魔力耐性のあるハリュシュの木とコボルトの鉱山からでた石ををふんだんに使い、かなりの強度を実現いたしましたよ!」


 サクトは自信満々にいった。

 

(部屋もどんだけあるんだ)


 広い屋敷内を歩き、会議室とかかれた部屋には入り報告を受ける。


「現在、コボルト領界内の鉱山からの鉄などを採掘、製鉄、武具、道具の作成を可能にしました」


 サクトが話すと、アプラもつづく。


「綿花やモンスターの糸から縫製、服飾や紙の精製で本なども作成可能です」


 そういうアプラも進化して、できる女性のようになっていた。 


「それで集落の住民の衣服が豪華になっていたのか」


「ええ、さらに各国に店舗をかまえ、人間たちとの交易を開始、拡大しております」


「アプラの服、町でかなり高額で売られてた。 この集落産だったのね」


「ええ、みたことがあります。 お高くてとても買えなかったですが......」


 デュセとネオンがうなづいている。


「各国、すごいな...... そうだ。 ハストワーンにも店はある?」


「ええあります。 それはマサトさまの手紙にあった黒衣のダークレイスとのことですね」


 ゼオンが答える。


「ああ、それでハストワーンと黒衣の化者ダークレイスの現状は?」


「......最近になって軍備に力をいれていて、武具の納入を求められましたが作っていない旨を伝え断りました。 そしてそれを調べているうち、黒衣の化者ダークレイスの存在に気づいたのです」


「やはりハストワーンと黒衣の化者ダークレイスは関係があったのか...... それでどうなっている」


「どうやら、ハストワーンの中央に食い込んでおり、ラルトレン王暗殺もやつらの画策でしょうね。 おそらくは戦争を引き起こそうとしていると思って間違いないかと」


「だね。 でも戦争を起こしてどうするつもりなんだろう?」


「......わかりませんが、間違いなく我々にも影響があることでしょう」


 サクトが困ったような顔をして続ける。


「現状ハストワーンは王が幼いゆえ、宰相が実権を握っているようです。 そしてこの宰相と黒衣の化者ダークレイスたちに接点があるようです」


「宰相と結託しているのか...... 余計まずいな。 とりあえず何かわかったことがあったらおれたちに連絡を、あとはフェアリーたちを含めて他のモンスターたちの生活向上と技術、知識の共有、戦闘訓練をたのむよ」


「はい!」


「それと、学校を作ってくれ」


「学校ですか?」


「みんな知識をえた方がいい」


「わかりました。 すぐにつくります」


 おれたちは人間たちのところで得た情報を渡した。


 つぎの日。

  

(なんだろう?)


 今日は朝から、デュセ、ネオン、リーシェがおれの前に用もないのにうろうろしている。


『服です......』


(あっ)


「デュセ、ネオン、リーシェ、その服、よくにあってるけど集落から持ってきたの?」


「ええ、いいでしょ。 元々私がデザインして手紙に伝えていたのよ」


 デュセは自慢げにいった。 ネオンも恥ずかしそうにしている。


(あれ、手紙と一緒に送ってたの、デザイン画なのか)


「よく、リーシェの服まで、良くできてるな」


 おれはリーシェをよくみる。


「なによ。 いやらしい目でみて。 まあ、あたしの魅力の前ではしかたないことだけど」


 リーシェはポーズを決めて上からおれに目配せした。  


「い、いや、そんな風にみてないよ!」 


「マサト!」  


「マサトさま......」


 デュセとネオンは二人は非難めいて呼ぶ。


「ちがうよ。 本当にちがうから!」


「マサトさま! 大変です! こちらに!」


 コゴルが慌てたように呼びにきた。 そのただならぬ様子におれは席を立った。



 応接室にむかうと、全身鎧姿の人物がいた。 その姿は獣人で顔は猪のようだった。


『オークですね』


(オーク、獣人か......)


「お初にお目にかかる。 私はオーク族のシザークと申す」 


 そうオークのシザークは堅苦しい挨拶をした。

  

「それで、こちらになにかごようですか」


「はっ! 実はお願いに参ったしだい」


「お願い......」


「我らオークはリザードマンたちと生息圏が隣接しています。 かつては対立もありましたが、いまは互いになるだけ干渉せず、うまくやっていたのですが、最近リザードマンがこちらへ攻撃を仕掛けるようになりまして......」


「つまり戦争ですか」


「ええ、まだ、散発的で挑発には乗らないようにしているのですが、若いものたちの中では戦うべきとの声が日に日に高まっております」


「......もしかして、リザードマン以外に黒いローブの奴らがいませんか?」


「ご存じなのですか! そうです、その黒いローブのものがかなりの魔法使いのようで、このままでは全面戦争になりかねなくなっておるのです」


(やはり、黒衣の化者ダークレイスが関係してるのか......)


 おれはみんなと顔を見合わせる。


「それでおれたちに会いに来た理由は?」


「同盟を結んでいただきたい。 四種族が共にすんでいるなど話しには聞きおよんでましたが、本当だとは正直驚きました...... あなた方と同盟をすれば、リザードマンたちも簡単には攻めてはこられないはず......」

 

「それはかまいません...... ただ同盟してもリザードマンの攻撃はやまないでしょう」


「どういうことですか?」


 そうシザークは怪訝な顔をした。


 おれたちはいま起こっている事情を話した。

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