第25話

 おれたちはめちゃくちゃ目立った。 ついにおれの番まで回ることなく授業はおわった。


「なにがいけないの? 力を見せつけて圧倒すれば逆らってこないでしょ」


 学校帰り、悪びれもせずデュセがいう。


「す、すみません。 ついデュセさんのをみてたら、張り合ってしまって」


「お二人が力を見せたのでそうするのかなって......」


 ネオンとコゴルはしょんぼりしている。


(まあ、モンスターからすれば魔力を見せつけるのが一番なのかも。 弱いと思われたらおそわれるからな。 モンスターの感覚を考えないで、ちゃんと指示しなかったおれも悪いな)


「まあ、いいよ。 確かに力を誇示すれば、変な奴らからまれもしないだろう。 ただモンスターとばれたら技術や知識が得られなくなるから、そこは考えてね」


「面倒だけど、わかったわ」


「はい!」


「わかりました!」


 三人はそう笑顔で答える。



 それから、悪目立ちはしたがなんとかばれずに、この世界の人間たちのことを調べる。 


(大体、この世界のこととが見えてきたな。 ザイクロフト帝国という軍事大国、アルフレド王国、リズミラ法王国、この国がこの大陸の覇権をめぐっている...... か)


「マサト! 授業終わりに今日も稽古につきあってくれ!」


 そういってアルデアに頼まれる。


「ああ、いいよ」 


 こんな風にアルデアたちとも溶け込み、なんとなく学園生活を楽しんだ。


「あんたもつきあいいいわね」


 そうあきれたようにデュセがいった。


「まあ、アルデアの魔力操作も得られるしね。 三人も魔法を覚えたろ」


「ええ、魔力出力の調整と、詠唱による時間短縮ね」


「かなりの精度調整ができましたし、それにより新たな魔法を使えるようになりました」


「はい、技術があがりましたから、集落に持って帰れば弱いものたちにも伝えられますね」


 そう三人も収穫はあったようだ。


(人間社会にもなれたみたいだし、ここにきたのは正解だったな)


 授業終わりにアルデアといつも練習している郊外に向かった。 そしていつものように打ち合う。 


「どうしたの? 最近毎日じゃないか」


 稽古に熱がこもっているように感じたので聞いてみる。


「ああ、すこしな......」


 アルデアのその反応が気になるので、少し気が引けたが聞いてみた。


「何かあるの?」


「......実は、どうもこの国できな臭いことが起こってるんだ」


 剣を止め真剣な顔で話す。


「きな臭い」


 アルデアの家は、この国ラルトレンの王族にも連なる上級貴族だった。


「政治の話......」


「ああ、どうも王が狙われているのではないかという話を俺の父がしていてな」


「暗殺...... でもこの国何十年も戦争はしてないよね」」


「うむ、隣国ハストワーンとは仲が悪いが、戦争はなくなった。 しかし最近ハストワーンにおかしな動きがあるらしい」


「おかしな動き?」  


「この国にモンスターが増えてるのはしっているだろう」


「うん。 えっ? もしかして!! モンスターはハストワーンが操ってるっていうの!?」


「そうとはいわないが、ハストワーンにはモンスター被害がでてないらしいしな」


(そういえば隣国から、被害の話はでないな。 一応サクトはハストワーンとも取引はあるはず、あとで聞くか......)


「それに...... 最近森向こうで複数の種族のモンスターが集まってるのをみたという話しもある」


「えっ!?」


「ああ、そんなことは本来ありえん。 もしあるとすれば魔王の再臨 としか考えられない」


(ま、まずい。 それはおれたちだ! おれ! 魔王だと思われてる!!)


「さ、さすがにそんなことはないんじゃない。 別に被害があるわけじゃないし......」


「まあな。 被害があるのは西や北、こっちはなにもないし、見間違いだろう」


(ふー ヤバかった。 おれたちも気を付けないと)


「それで、暗殺とは」


「ここ最近に近づいてきた間者が何回かいたらしい。 巧妙で何らかの魔法を使って姿を消しているから捕まえられない。 防御魔法でなんを逃れてはいるが、この間の視察中はかなり接近を許したらしい」


「それで対策は」


「城など、一応宮廷魔導士たちがいるあいだはそこそこ安全だが、町への視察中はすこし隙ができる。 どうしても顔見せしないといけないからな。 一週間後この町にも来るから、俺も警護につくんだ」


「それで熱がこもってるのか...... 視察は取り止めたら」


「そんなことをすれば怯えている、弱腰だと主戦派の貴族につきあげられる。 主戦派はハストワーンとの戦争をのぞんでいるからな。 うちは王さまと同じく和平派なんでな」


(もし王さまが、殺されでもしたら戦争に傾くのか)


「それっておれも警護に参加していい」 


「してくれるか! お前の力が借りられれば助かる! ここで事件が起こると我が家の失態になるからな。 頼もうとしたのだが、危険なのでためらっていた」


「ああ、うちも商人だから、戦争なんて困る。 デュセたちも加わらせるよ」


 そういうと嬉しそうにアルデアは手をにぎり、警備の件、父親に頼むといった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る