第24話

「ここ...... 宿屋じゃないの」 


 おれたちはサクトが指定した場所にいくと、三階建ての大きな家があった。


「へー、まあまあな家ね」


「すごいですね」  


「ここです。 預かった鍵でドアがあきました」


 コゴルがそういってドアをあけた。


「なにここ、土地買って作ったってサクトがいってたけど、こんな豪華な家買えるほどうちの店儲かってんの?」


 おれたちの集落で採取したり、作ったものを売る店舗をサクトは運営していた。 その利益は各種族で割っている。


「ええ、薬草や果実、木材、そして今は鉱物、鉄、紙、モンスターの素材全て売り物になるらしいです」


 コゴルはそう笑う。


(サクト、いや皆もか、どんだけ優秀なの)


「人間たちを雇って、店員にしてるとは聞いてたけど......」


「人間たちに情報収集や、職人を雇って加工品をつくろうとしているようですね」


 ネオンがそういって買ってきた各種の食材を棚におく。


「ては僕は各部屋に荷物をもっていきます」


 コゴルが部屋へいった。


「じゃあ、お料理始めますね」


「ああ、おれも手伝う。 でもネオンって料理できるの?」


「ええ、今集落では人間の料理が流行っていますよ。 アプラどのが広めたんです」


「へぇ、でもコボルトって肉食じゃないの? ゴブリンは雑食だったけど」


「お肉以外にも柑橘系、すっはいものや強い香りのもの以外ならたべますよ」


「そうなのか」  


(やっぱ犬みたいだな)


「私やることない」


 そうデュセが買ってきた果物を暇そうにかじりながらいう。


「こっち手伝ってくれ、そういやデュセは料理食べるの」


「たべるわよ。 もちろん根から栄養や魔力を吸うこともできるけど、普通に食べ物からでも得られるからね」


「へえ、アルラウネのことあまり知らなかったな」


「盟主がそんなんじゃ、先が思いやられるわ」


 そうデュセがあきれながら野菜の皮をむいている。 ほとんどなくなった。


(確かにもっと各種族のことをしる必要はあるな)


『それはそうと、あなたは神なのです。 神の力をあげることもお忘れなく』  


(完全に忘れてた...... でもこれ以上信頼あげようがないんじゃないの)


『確かに三種族のあなたへの信頼は高い。 生活の質も魔力もあがりましたからね。 しかし、まだ神ほどの信頼はない。 もっとその力をつけて信頼をあげてください』


(これ以上か...... 仲間でも増やさないと難しいな)


 その日は夕食をとって眠った。



「今日は魔法の実技を行う」


 担任のバルチュア先生が生徒を人のいない郊外につれだした。 


「ロックウォール」


 先生が両手をだし、なにかを唱えると地面から集めの岩の壁が盛り上がる。


(ふむ、さすが教師、でも厚さはそれほどでもないな。 あれは詠唱ってやつ?)


『どうやら最初に言葉や文字をイメージして、すぐ発動できるようにしてあるみたいですね。 故に速い。 ですが決めた魔力分しか使えませんのでそれほどの出力はありません。 人間は出力が少ないのでその方法をとったみたいですね』


(それが、人間のつかう魔法か...... モンスターは感覚で使うから、出力は大きいけどムラがある。 アルデアみたいな体内で魔力操作するのは苦手そうだな)


「では、壁に向かって魔法を使ってみるように、前より上達したか確認するよ」


 先生がいう。


「みんなわかってるよね」


「はい」


「わかってます」


「当たり前じゃない、わかってるわよ」


 おれは三人に小声で確認をとった。


(既におれたちは目立ってるここでさらに目立つと、いつモンスター

とばれるかわからないからな)


「ではデュセくん。 前にでて魔法を使ってみたまえ」


 先生にいわれ、デュセは前へとでる。


「いくわよ!!」


 デュセは魔力をためると、地面から巨大な植物の根がのびた。


(なーんにもわかってなかったーー)


 ねじられた根は簡単に石壁を粉々に砕いた。


 一瞬の静寂が訪れる。


「な、なんだ。 植物の魔法...... 何て威力だ」


 先生が口を開いた。


「なにいまの!?」


「あんな威力の魔法なんてみたことない!!」


「すごいデュセさん......」


 生徒がざわざわしている。


「ふふん!」


 デュセはどうだといわんばかり胸を張っている。


「あ、ああ...... ありがとうデュセさん。 壁直すからまってね。 じゃあ次ネオンくん」


 先生は驚きながらも、ネオンを指名した。


「......はい」


 緊張の面持ちでネオンが壁のまえにたった。


(ね、ネオンはわかってるよね! でもなんか気合いはいってない?)


 ネオンは魔力をためると、周囲に光がみちる。


(これもわかってなーいーー!)


「ライトニングスフィア」


 集まった光の球が石壁を吹き飛ばした。


「なあ!!!」


 先生と生徒たちが口をあけている。 しばらくして先生が気がついた。


「す、すごいですね...... な、直します。 次はコゴルくん」


「は、はい」


 ガチガチに固い表情でコゴルはまえへ進む。


(た、たのむ! コゴルだけでも普通にしてくれーー!!)


 そうおれの願いもむなしく、二人の行動にテンパったコゴルは石壁全体を吹き飛ばした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る