第23話

 おれたちは外にでて対峙する。 


「あの、もう授業も始まるし......」


「俺はアルデア。 お前は」


「えっ? ああ、おれはマサトだけど......」


「マサト...... その剣は使わさせてやる。 かかってこい」


「いや、ほら剣なんて危険だし......」


「心配ない。 もちろん抜かず鞘つきでやる。 お前が一本体のどこにでもあててとれば、この件は不問としてやるよ」


(一本か、かなり自信がある...... いや、おれのことを見下してるか)


「アルデアはこの学園でも屈指の使い手だ」


「あの新入生かわいそうに」


 そう話してる声がする。


(これで強いのか...... 人間と戦ったことないからわからなかったが、こんなものか...... よくモンスターに滅ぼされてないな)


『人間は魔力操作にたけますが、その魔力出力があまりうまくありません』


(だね...... 人間がそんなに強かったならモンスターの領域をおかしているだろうし)


「何をぼーとしてる!!」


 そういってアルデアは剣をふるう。 おれは剣でうける。


「この一撃をふせぐか!」


(まあ速いけど、ゼオンのスピードに比べればかわせるレベルだな...... 終わらせるために食らったら、わざとだと難癖つけてきそうだし、すこし流すか)


 ゼオンから剣の手解きを受けたおれにとっては、何度も打ち込んでくる剣も、なんなくかわせた。


「くっ...... かわすのはうまいようだな」


「まあ、この辺で......」


「なめるなよ! マジックブースト!」


 アルデアの腕が仄かに光る。


(なんだ...... 魔力か)


 その剣を振り下ろしてきた。 先程より速い。


「ん? 剣の速度が速くなった」


『どうやら、腕に魔力を流して筋力をあげたようです』


「なるほど、体内側にマジックオーラみたいなものか...... でも腕の筋肉に魔力を流しても大丈夫なの?」


『精密な魔力操作で、細胞が崩壊しない程度に筋力を引き上げているようですね。 でもこれ以上引き上げるのは危険です』


「うおお!!」


 防がれるので焦っているのか、アルデアはただやみくもに剣をふるう。


(圧倒できる自信があったのが、うまく行かないから力まかせになってきたな。 こんなことなら適当に受けておくんだった。 このままだと魔力操作に失敗して大ケガするかも...... しかたないな)


 おれは振り下ろされる剣をはじいて、剣をアルデア眉間につけた。


「なっ......」


「これでおれの勝ちだよね」


「くっ」

 

 周囲がおれに喝采を浴びせる。


「あいつ、アルデアに勝ちやがった!」


「すごい! あの子なにもの!」


「し、しまった! め、め、目立ってる......」


 おれはこそこそと教室へ戻る。



「......ということで、いまこの大陸の多くは人間の国が支配しています。 ということで授業はおわります」


 先生がそういって歴史の授業がおわった。


「なるほど...... やはり魔王討伐のモンスターの協力についてはなにも語られないか。 どうやら大陸には10ヶ国ほどある。 8つが人間、2つがエルフとドワーフ、モンスターたちのとの交流はない。 ふむふむ」


「さあ帰ろうマサト!」


 元気よくデュセがそばにきた。


「明日は魔法の授業ですね。 たのしみだなぁ」


「そうですね。 何か覚えられればいいです」


 コゴルとネオンがそういって近づいてきた。


「おい」


 後ろから、アルデアが話しかけてきた。


(や、やばい。 あれからすぐに教室に逃げ帰ったんだ。 怒ってる)

 

「やぁ、あのアルデアくん。 何かな」


「なに! また絡んでくるつもり!」


 そんなデュセを無視して、ガッと肩をつかまれた。


「お前すごいな! まさか俺が手も足も出ないとは!」


「えっ...... いや、そんなことはないよ」


「いやさすがに、そこまでわからないほど鈍感じゃない。 俺の力では到底太刀打ちできないことぐらいわかるさ」


 そう頭をかいている。


「本気すらださせなかった俺の力不足だ。 そんな力をもつものがわざわざ剣など盗むはずもない。 俺の早とちりだ許してくれ」


 そう頭を下げた。


「まあ、わかればいいわ」


 デュセがそう勝手にいった。


「また手合わせを頼む。 どうやらお前たちはおれより強そうだ。 これは楽しくなってきた!」


「ああ、うん」


 そういうと楽しそうにアルデアは帰っていった。


(少なくとも自らの過ちは認められる度量があるな。 さすが貴族か、強さへの探究心もある。 いいヤンキーだった)


 おれたちはサクトが用意してくれたという住居に向かった。


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