第20話

「しかし、マサトさま。 そのようなことが可能なのですか?」


 ゼオンがきいた。


 おれたちはウェイに言われた量の魔力を集めるために森を歩いていた。 ネオンは約束の人質にと自ら志願しその場に残った。


「ああ、サクトがいっていた黎湖ブラックレイクにいく」


「確かに黎湖ブラックレイクにはとても永い年月で大きな魔力がたまっているでしょうが、とても運べませんよ。 何せ体に触れただけで溶けるぐらい高濃度の魔力の水となっていますから、さすがにそれを地面にまけばアルラウネとて吸収すると死にます」  

 

 サクトが眉をひそめる。


「まさか、あんたたち黎湖ブラックレイクの水をここにまくつもりじゃないでしょうね!」


 後ろからデュセが現れた。


「そんなつもりはないよ」


「嘘おっしゃい! そうか、私たちを殺して土地を奪うのが目的ね!」


「違うよ」


「うるさい! 人間なんか信じられるものか!」


 そういうと地面から根を放ってくる。


「ここは、我らが!」


「いや、おれがやるよ。 試したいことがあるしね。 それに......」


 回転するねじれた根がおれにせまる。


 おれは火の小精霊を呼び出した。


「そんな小さな火で生木が燃えるか!!」


 シュパッ


 そう切り裂く音が響くと、根はバラバラになった。


「なっ!! 嘘!!」


「なるほど、空気の小精霊がいるのですね。 それで火を使い風を起こしたのですか」


 サクトはうなづいている。


「そう。 それに......」


「はぉ、はぁ、くっ...... こんなことで!!」


「うごくな」


 その瞬間デュセの後ろから黒い影が地面におちる。


 それはおれの風で切られた大きな蛇のモンスターだった。


「俺でも気つきませんでしたよ。 ブラックミストスネークですね。 さすがマサトさまだ」


 ゼオンが感嘆する。


(まあ、精霊ちゃんが感知してたんだけど)


 おれは蛇から魔力結晶をつくりだす。 


「なにを!?」


 驚くアルラウネに魔力結晶をあたえる。


「やめ! う...... ん。 これは...... 魔力が増えた!?」


「アルラウネはあまり遠くにはいけないんだろ。 ついてくるなら背負おうか」 


「......いい、自分で歩ける」


 デュセはそういうと根を足のように変化させた。


「そんなこともできたのか。 だったらついてきて自分の目でみてみなよ」


 

「ここか......」


 そこは真っ黒に濁った湖だった。 タールのようにどろっとしている。 


 バシャッ


 上から落ちてきた鳥が湖に沈んでいく。


「たまたまこの上を飛んだのでしょうね」


「すごい魔力ですね。 近くだと影響を受けますよ。 ネオンはつれてこなくてよかった」


「うっ...... あなたたち、そんなところによくいられるわね......」


 離れたところでデュセが木にもたれている。


「それでどうされるのですマサトさま?」


「まあみててよゼオン」


(空気の魔力も圧縮できるんだ。 それならこの湖の水だって、だよね精霊ちゃん)


『可能だと思います。 ただ負の力がつよいので、これを浄化するためには私の処理能力もかなり使用します』


「うん、たのむよ」


 湖に近づくと、おれは意識を集中する。


 ゴゴゴゴ......


 湖の水面が渦巻く。


(くっ...... 確かにいやなどす黒い魔力だ...... あのバグラの黒い触手みたいだな。 これを正へと変換する【創造】《クリエイト》!)


 黒い塊が巨大な水晶の結晶のように湖の上に浮かぶ。 


「おお!! 魔力が分離された!」


「あの真っ黒の湖が透明になった!」


「う、うそ。 なにあれ......」


 三人は驚いている。


「ふう、なんとかできた。 ほら、空気の魔力も圧縮できるんなら、ここの水も圧縮できるんじゃないかなって」


 おれは空気の精霊を使い魔力結晶を地面へとおろした。



「......驚いたね。 あの黎湖ブラックレイクを浄化したうえ、これほどの魔力を手に入れるなんてね......」


 アルラウネの住みかに戻ったおれたちは、ウェイと話していた。


「これで仲間になってくれるよね」


「......ああ、約束は守るさ。 我らアルラウネ族、百五十名は今よりマサトの傘下としてこの地を守ろう」


 そうウェイは宣言する。 アルラウネたちは拍手して喜んでいる。


「それにしてもお前さんなにもんだい? 勇者にしては顔が聡明さにかけるが......」


「ほっといてよ! いや勇者をしってるの?」


「ああ、私らも魔王と戦うときに手を貸したからね」


「本当?」


「私らはただの養分だった。 だから勇者にモンスターたちも手を貸して魔王を討ったんだ。 人間たちは忘れちまってるがね」


「それで魔王の復活させようとしてるやつらを防げる?」


「ああ、精神操作や幻惑、呪いそういったものを防ぐことができる。 やつら魔王に信奉するやつらは、たいがい負の魔力、【闇魔法】を使うからね」


「闇魔法...... バグラの使ったのもそいつか」


 おれたちはアルラウネと手を組み、三種族を統合した。


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