第21話

「コボルトの集落、アルラウネの集落へ家屋、家具などの提供を終えました」


 そうコゴルが報告する。


 おれたちはゴブリン集落のおれの家で会議をしていた。


「鉱山での鉱物の採掘、それをサクトどのが入手、作成した精製技術により、製錬を開始しています」


 ゼオンが報告する。 


「あとはゴブリンとコボルト、アルラウネで領界内の壁の建設を進めているよ」


「また各種族にマジックオーラ技術、剣術の指導を始めています」


 リオンとガオンがそう説明した。


「私たちは全体への防御魔法の展開、薬草、ハーブ、果物、野菜、キノコ類の採集、綿花などの採集したわ」


 デュセがそう報告した。 アルラウネに渡した魔力結晶でウェイがアルラウネウーマンからアルラウネミズ、アルラウネたちは多くがアルラウネガール、デュセはアルラウネレディーとなっていて、デュセはここにいる。


「アルラウネたちから得た綿花でなんとか裁縫ができないか、目下サクトどのが町にいってさまざまな情報を収集しています」


 アプラがそういつげた。


「ふむ、サクトだけでは情報を収集するのは難しいな」


(おれはアホだし、調べても作れそうにない)


『ですね』


(否定はしてくれない......)


「なら私がいくわ」


 デュセがそういった。


「大丈夫なの」


「ほら、ここでもらった靴、これをはけば人間にみえるでしょ」


 そう靴をみせた。


「確かに...... すこし町にいってみるか。 ゼオンあとは頼むよ」


「はい!」


 おれとデュセは町へと向かった。



「これで一応やつらから狙われるのは防げるか」


「さすがに進化した私たち三種族と戦うのは無理じゃない」


 デュセは手をヒラヒラさせてそういった。


「でも、ほかにも種族はいるんだろ」


「まあね。 もともと【狂喰】のゴブリンキングのバノウ、【飢樹】アルラウネウーマンのウェイ、【斬爪】コボルトリーダーのゼオンがいたから、他の種族のこの地への侵攻を食い止めてたからね。 まあといってもこの三種族も仲間ではなかったけど......」


「最近人間たちがモンスターに襲われてるらしいんだけど、なんかしってる?」


「わたしたちではないわね。 ババさまが魔力が少なくなって、それどころじゃなかったし、北の大陸のモンスターじゃないかしら」


「北の大陸?」


「ここは大陸の南で、私たちの領域にフェアリーそれから東にオークとリザードマン。 人間を挟んで西側にトロールとハーピー。 その北にエルフとドワーフ、南にマーメイドがいるってババさまがいっていたわ」


「ドワーフとかエルフもいるの? モンスター?」


「いいえ、彼らは亜人ね。 人間と交流があるらしいわ。 ただ別に仲間って訳じゃないわね。 まあモンスターより近い種族だから相互に利益があるって関係ね」


「なるほど、じゃあ北の大陸は」


「かつて魔王城があった大陸で、さまざまなモンスターがいるらしいわ。 ただ全くこちらとは交流もなくて、同種族でも会話すらままならないとかいわれてる...... ああ、ゴブリンキングみたいな感じかしら、あのバノウは北からやってきたらしいし」


「そうなのか...... というか、デュセはなんでここにきたんだ? お前あれほど他の種族嫌ってたのに」


「う、うるさいわね! べつにいいでしょ!」


 そうデュセはプリプリ怒りながら、まえに進む。


(よくわからんな......)


『......あなたならばそうでしょうね』  


 あきれたように精霊ちゃんがいった。



 おれたちはデトルフという町につく。 始めてきた大きな町だった。


「ここが町...... こんなに人間がいる......」


 デュセは町を興味深そうにみている。


(この反応、最初のサクトと同じだな。 モンスターも人間に興味はあるみたいだな。 この大きさだとサクトを見つけるのは大変そうだな。 行き違いになるかも)


「あっ! あれかわいい!」


 デュセは近くにあったアクセサリーの露店商の売っているものをみていった。

 

(アルラウネにもかわいいとかそういう概念があるのか) 


『はぁ』 


 精霊ちゃんはため息をついた。


「じゃあ、買おうか」


 おれはその銀の腕輪を買って、デュセに渡した。


「あ、ありがとう」


「アクセサリーか...... 確か鉱山から少し銀がでたな。 加工できれば売ることもできるか」


「人間のお金が必要なの? 確かにこんなのモンスターは作れないけど」


 デュセは不思議そうに聞いてきた。


「おれたちにはまだ作れないものがあるからね。 機織り機だとか、武具だとか、ガラス製品だとか、それらを自分達で作れた方がいい」


(まあ、買って壊して複製すればいいんだけど...... 知識と技能を得てみんなが自分達でできた方がいいだろうしな)


「マサトさま。 強大な魔力が近づいてきたのでわかりましたよ」


 サクトが何やら紙の束を抱えて、歩いてきた。


「サクト、その紙なに?」


「ええ、裁縫のための機織り機の構造と、紙、ガラスの精製などのメモです。 これを皆に伝え試行錯誤して実現できればと思います」


 そう笑顔で答えた。


(......すごいな。 引くぐらい優秀だな)


「私は買ったものをもち、預けた荷馬車でこのまま帰りますので、お二人はしばらくこちらでゆるりとしてください」

  

 そういうとサクトはそそくさと帰っていった。


「あっ、帰った。 せっかく手伝いにきたのにしゃあない、デュセは何か興味があるものがないか?」


「そうね。 あれは...... みんな同じ格好をしてるけど、なに?」


 周囲をみていたデュセの視線のさきに、俺たちぐらいの年齢の少年、少女が同じような服をきてカバンをもっている。


「あれは制服か...... ということは学校があるのかも」


「学校? なにそれ」


「教育を受ける機関だよ。 子供なら勉強して知識や社会性を学ぶ場所」


「へぇ、モンスターにはないわね」


(学校か...... おれも受験日にここに飛ばされたからな...... なんとか潜り込めないかな。 この世界のことをしれるかもしれないし)


 おれたちは一通りみて、集落に戻る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る