第14話
「な、な、なにこれ」
集落に戻ったつぎの日、朝はやくからハンマーの音で目が覚めた。
そこでみたのはほとんどの家が解体され、更地になっていく姿だった。
「おはようございます! マサトさま!」
サクトが汗をかいたいい笑顔で挨拶にきた。
「おはよう...... じゃなくて! 家がなくなっているけど!!」
「ええ、どうやら土台がなく、強い風や雪などに家が耐えられないのです。 そこで土台からつくり直すことにしました。 こちらをご覧ください」
そこには頑丈そうな立派な木の家がある。
「本当はレンガでつくりたいのですが、今まだ我々はレンガをつくっておりません。 しかたないので、木造で急場をしのぎます」
確かに今までの掘っ立て小屋じゃなく、基礎に石が使われ強度はありそうだ。
「そうか! これを壊しておれが複製すればいい!」
「お待ちください!」
「えっ?」
「これは我々が技術をえるためのもの。 マサトさまのお力を借りては成長できません。 ここは我らにお任せくださいませんか」
「そ、そう......」
「よし! 皆のもの、教えたようにやってみるのだ!」
「おおお!!」
サクトの指示でゴブリンたちは働き始めた。
『なんかサクトのほうが......』
(それ以上はやめて......)
『はい』
おれと精霊ちゃんは呆然としてそれをみていた。
それからサクトの的確な指示によって、なにもなかった更地は整地され、建物がたっていく。 それはさながらタイムラプスの動画を見ているようだった。
夕方には一通りの家が並んだ。
「は、早い......」
『ずっと、うろうろ、おたおたしてましたね』
「なんか手伝えないかと思って...... でも隙すらなかった」
『まあ、あなたよりはるかに手際がいいですし』
「どうです! 皆やるものでしょう!」
そうサクトがやってきた。
「ああ、すごいよ。 でもすごいのはサクトだ。 たった一日大工の仕事をみただけで、その知識をものにしてしまうんだからな」
「い、いえ、まだ技術までは手に入れておりません」
そう照れた。
「レンガなどの作り方なんかもしりませんし、今度町へ一人でいってみてもよろしいですか?」
「ああ、構わないよ。 でもサクト一人で大丈夫」
「もう一人ぐらい人間に変化できればいいんですが...... この変化の魔法を教えるのは難しくて」
「あと、あの家具複製してもいい?」
バラバラにされた家具をみておれはいった。
「いえ、あれも我らにお任せください」
「ん? 複製するためにばらしたんじゃないの?」
「いいえ、我々が構造を理解するためです。 解体し部品ごとに同じものを作ります。 マサトさまは我らが主、そこで見ていてください! やって見せます!」
サクトはそう胸を張った。
「わ、わかった」
『自立心が芽生え、自分たちでなにかをなそうとしています。 ここま見守るのも神の役目』
「だね。 でもちとさびしい」
おれはゴブリンたちを温かく見守ることにした。
それからしばらく日がたち、みすぼらしい集落は人の町とみまごうほどに立派に変貌した。
「す、すごいな。 こんな短期間に」
「ええ、この間町にいきレンガの製造過程も知りましたので、いま試作品を製造しています。 家具なども完璧とまではいえませんが、同等のものを製造しております」
サクトが報告にきた。
「うん、見たけどよくできてたよ。 ただ......」
「なにか?」
「ただ飲み水が川なのがな。 上流は綺麗で沸騰はさせているがなんとかならないかな」
「ふむ、我々大人は平気ですが、こどもたちや病人には問題あるかもしれません。 人間たちは井戸を掘っていましたね。 今度見てきましょう」
サクトと話しているとアプラがこちらに駆け寄る。
「マサトさま、実は......」
「使者!? おれに!」
おれは急いで、家へと向かう。
家に着くと、そこには獣人が三人いた。 獣人は応接室として作っていたソファーに座る。 後ろのおつきの二人は、この状況に落ち着かないようだ。
「どうも、えーと、おれがこのゴブリンたちの集落を統治しているマサトです。 それで確かコボルトさんですよね」
「そうだ。 お初にお目にかかる。 俺はコボルト族の族長ゼオンという」
その犬っぽい獣人は頭も下げずそういった。
(なんかそばの二人とはちょっとちがうな)
『おそらくコボルトの上位種コボルトリーダーかと思います。 後ろはコボルトチーフですね』
(上位か......)
「いったいなにかよう?」
「ここを引き渡してもらう」
「ふぁ!?」
「なんと無礼な!!」
アプラとコゴルが前にでそうになる。
「ま、まって、えっ? どういうこと?」
「俺は弱きものを蹂躙する趣味はない。 ゆえにこの土地を渡せば無用な殺戮はしないことは約束する」
そうゼオンはいう。
(冗談って感じでもないな......)
「といってもですね。 この間できたばっかりで...... 急にそんなこと言われても困るんですが」
「お前は人間だな。 何故ゴブリンたちとともにいるかはしらんがモンスターの世界は弱肉強食。 強いものが弱いものから奪うのは摂理だ......」
そう理不尽なことをいっているわりに、その顔に一瞬陰りがみえる。
(なんだ......)
「ゴブリンが俺達に勝てることは万にひとつもない。 無用な死を選ぶより、ここからでていき他の地で暮らせ」
(完全に勝つことを疑わない感じたな。 傲慢だけど、なんか引っ掛かるな)
「......えっと、つかぬことをききますが、そちらの兵力ってどの程度ですか?」
「兵力? 総数ならば200、戦えるものはコボルトが30、コボルトチーフ2、そして俺コボルトリーダーだ」
そうゼオンは自信に満ちた顔でこちらをみる。
「あのこちらの兵力しってます?」
「確かにそこにいる三人はかなり強いな。 だがホブゴブリンだろう。 あとはゴブリン戦力差は歴然だ。 わかるな」
(全然わかってないなあ......)
『まあ、ここまで進化するゴブリン族などいないので、勘違いをしているようですね』
「マサトさま! 私に戦わせてください!」
そうコゴルがいった。
「えー 危ないよ」
(多分ゼオンが......)
「かまわん。 一人の犠牲で理解し、ここを引き渡すならばそれがいい。 リオンやってやれ」
「やれやれ、わかったよ。 ゴブリン相手に面倒だな」
そう後ろのコボルトの少女が前にでてきた。
(えー なんか厄介なことになったな)
おれは頭をかかえる。
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