第13話

「えーと、果物、そして各種薬草と......」


 おれは頼まれてたものを荷車からおろした。


「いいものはあるかい?」


「ええバーグさん、この剣なんかどうですか?」


 おれは荷車から剣を取り出した。


「ほう、かなりいい剣だね。 これ何本もあるかい?」


「十本ですね」 


「よし! 全部買った。 それと槍や弓、今度もってきておくれ」


「毎度ありがとうございます。 でもそんな武器が必要なんですか?」


「ああ、なんかモンスターの襲撃がふえたとかで武具の発注がひっきりなしさ。 在庫もなくなっちまってね」


(モンスター...... まあおれたちには関係ないな)


 おれは大きな袋にはいった金貨を代金として受けとる。


「いち、に、さん......」


「それにしても、こんないい剣よくあつかえるね。 どこの鍛冶屋だい」


「い、いえ、あの......」


「それは森などに落ちているものを精製しているのです」


 サクトがそういった。


「あんたみない顔だね。 いい男だけど」


「はい、私はマサトさまの下で働くサクトともうします。 以後お見知りおきを」


 そう頭を下げた。


「ほう、やはり店員がいたんだね。 さすがに一人で商うには商品が多すぎると思ってたんだ」


(怪しまれてた...... 危なかった)

 

「ええ、マサトさまは多くの部下をもち慕われておりますよ」


「そうかい。 まあ商品はいいし、売値も買値も妥当な、まっとうな商いしているから、そうだろうねえ」


 そうにこにことハーグさんは答える。


「ああ、そうだ。 それで大工さんの仕事をみたいんだけど、紹介してくれる」


「なんだい急に? そういやハンマーだのノコギリだの、釘だの。 前にたくさん買っていってたね。 何かつくるのかい。 それなら大工そのものを雇ったほうが早いけどね」  


「う、うん、まあ」


「バーグどの。 我々は商人、人に頼るより身内で技能をもつほうが得でしょう」 


「......なるほどね。 あわよくば建築なんかにも手を出そうと......」


 サクトにいわれ、そうバーグさんはニヤリと笑う。


「まあ、うちから物を買うか、良いものを安く売ってくれれば問題はないよ。 大工なら下町の工房を紹介するよ」


 おれたちはバーグさんに教えられて下町に向かった。



「ああ、バーグさんからね。 勝手にみてけよ」


 そういって大工さんは仕事にもどった。


 サクトは大工仕事をみて、真剣に何か紙にメモしている。


(文字かけたんだ...... そもそも、ゴブリンに文字ってあるの?)


『この世界は言語や文字に魔力が宿ります。 それを読み取ればある程度の認識は可能なのです』 


「そうなのか......」


「なんかつくるんなら安くしとくぜ。 みたって技術なんてそう盗めるもんじゃないからな」


 そう大工の一人が笑いながらいう。


(確かに、みただけじゃそう簡単につくれやしないか...... とりあえず、何も買わないのも悪い...... そういやまだ家具がないな。 お金に余裕もあるし、少しずつ買っておこう)


「えっと、ベッドを十台ほど売ってもらえます」


「あっ、マサトさま、それならばベッド五台、タンス、机五台でお願いします」


 サクトがそう付け加えた。


「じゃあそれで......」


「はいよ! 毎度! じっくりみてってくれよ!」


 そうほくほく顔で大工さんは買ったものを用意している。


 夕方まで見学し、おれたちは荷車に家具をのせてかえる。


「あんたらずいぶん力持ちだな」


 大工さんは高く積まれた荷物をみて驚いている。


「ははっ、じゃあ、ありがとうございました」


 おれたちは町をでる。


「なあサクト...... ここらの気候って、年中このまま?」


「いえ、かなり変化しますね。 雪なんかも降ります。 雪が降ればいつも同胞たちが凍え死にました」


(じゃあ、あの雨風を防げる程度の家じゃ、どうにもならないな。 寒さで死んでしまう。 精霊ちゃん、温度をあげる手段とか)


『あなたの力なら可能ですが、さすがに集落全てを一定に保つのは無理でしょう。 毎日起きてないといけませんしね』


(おれが建物を【創造】《クリエイト》すればどうかな)


『あなたが詳しくしるものでないと、何ができるかわかりません』


(自分の家とかなら詳しいけど、無理なの。 豆はできたのに)


『骨組みなど構造をしらないとその部分はあやふやな存在で作られ、最悪崩れることもあります。 豆はあなたの知識や味覚などの経験で補正されました。 あれも正確には豆ではありません』


(......神さまは何でも知ってないとできないのか、というかおれは何を食べたんだ......) 


「やはり、何とかして大工さんにきてもらうか、でも、あの集落のことがばれたら人間たちが脅威に感じるかも...... なんかモンスターが襲撃してるって話だし、最悪戦いになったら困るしな」


「いえ問題ありません。 私にお任せください」


 そう自信満々にサクトがいった。


(でも見てメモとっただけじゃな......)


 おれはどうするか思案して集落へと帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る