第12話

「よし、そこ! 木をおいてくれ」


「石はここに」


 あちこちでトントンと木の板をハンマーで叩いて家をつくっている音がする。 ゴブリンたちは知能が上がり、集落の改修を始めていた。


「みんな、すごい働くね」


「ええ、知能も上がり、マサトさまが手に入れてきてくれた人間たちの道具で、少し大きな家なども建設できるようになりました」


 アプラはそういって感謝している。


「まあ、森の果物や武具を複製、売ってきてるだけだよ」


 おれは町に出掛けると、ゴブリンたちと採取した薬草や果物、武具を売り、そのお金で必要な道具と服などを揃えた。


「でも、さすがに頭がよくなっただけでは難しいな」


 家なども形はできているが、強度など不安定さは否めない。


「......ええ、僕たちは知能はあっても知識はありませんし、試行錯誤で試している最中です」


 コゴルは困った顔をした。


「おれは知らないから、本とかがなかったから、誰か教えてくれたらいいんだけど、それかここにきてくれるか......」


「人間はとてもきてはくれませんしね」


「ならば、私が知識を得ましょう!」


 そういって見慣れない人間があらわれた。


「だ、誰かいる!? しかもイケオジ!!」


「あっ、すみません。 私です」


 そういって人間が光輝くと、それはサクトだった。


「さ、サクト!? どういうこと!?」


「ええ、アールゴブリンになり、自らの姿を変える魔法【シェイプシフト】を覚えましたので使ってみました」


「ほう、なるほど、それなら人間の町へ一緒にいけるか」


 おれたちは早速人間の町へと向かった。



「一人で動かすの大変だったから、小精霊を使ってたんだけど、人にみられたら困るから、町に近づくと一人でもってかないといけない。 サクトがついてきてくれるから助かったよ」


 そう木製の荷車に武具や果実をのせて移動する。


「すみません。 マサトさまにこんなご迷惑をおかけしまして、ですがこれからは私もお手伝いさせていただきます!」


 そうサクトは元気よくいった。


「でも、集落を離れて大丈夫? いままではサクトがいたからおれは町へいけたけど、いまはアプラとコゴルしかいないよね」


「ええ、平気です。 この辺りに我らを脅かせるものはいないでしょう。 本来はホブゴブリンでさえ、数は少ないのです。 それが100名以上、こんなことはゴブリンの歴史でも類をみないことです」


「へえ、そうなんだ」


「はい! かつて魔王がいた時代ですら、大きな集落でも5名もいなかったはずです」


「魔王とかいたの!?」


「ええ、千年ほど前、この世界のほとんどが魔王の支配下だったようですが...... 私も今100の年を越えた程度、詳しくは......」


「ええ!? サクトって100才なの!!」


「はい? そうですが」


 イケオジに変身しているから、困惑した。


(めっちゃ年上だ。 おじいちゃんにこんなことさせていいのかな)


『ゴブリンは人間より、長命で平均300才は越えますから、大丈夫です』 


 精霊ちゃんが教えてくれた。


(300...... 長生きすぎだろ。 そのわりにはゴブリンたちは文明とかも進んでないな)


『能力の制限があり、進化によってしか知能があがりません。 それにとても弱い種族で、寿命までいきるものはまれなのです』  


(ほー なるほど進化しないと知能があがらないし、そこまで生きられなかったのか)


「それでサクト、魔王がほとんど支配してたなら、人間は?」


「元々人間は大陸の端で細々と生きていたのだといわれていますね。 魔王が勇者に倒されたあと、今は大陸中にいるようです。 大体半分は人間、半分はモンスターといったところでしょうか」


「勇者...... ゲームみたいだな」


「しかしマサトさま。 この荷車それほどの重さがありませんね」


 そうサクトが不思議そうに聞いた。


「ああ、さすがに、一人だと重かったから、軽くしてる」


 おれは魔力を使って荷車自体をすこし浮遊させていた。 


(どうやら、魔力がかなり増えてできることが多くなってるね)


『ゴブリンたちのあなたへの信頼が更に増して、様々なことができるはずです』


「さすが!! 我が主!! 浮遊など高位の魔法使いぐらいしか使えません!」


 サクトは興奮気味に語った。


「いやー それほどでも」 

 

『ただし、人間たちにはあまり目立たないほうがいいですよ』


 おれが調子にのってると精霊ちゃんが釘を刺す。


「なんで? サクトはモンスターには見えないよ」


『人間たちは力あるものに従いもしますが、畏怖し、嫉妬し時に排除します。 あなたは神ですが、妬みや憎悪をもつ人間は恐ろしいものです』


(まあ、わからなくもないけど...... 確かに力をしられるのは面倒ではあるか。 前に肖像画をつくったときも、邪魔されたしな)


「あっ、見えて参りました」


 サクトが興奮気味にいう。 目の前に町がみえた。


 

 ここはエストムの町だ。 結構大きく、店もたくさんある。 


「ほう、これが人間の町か、さすがにかなり発展している」


 キョロキョロとサクトは物珍しそうにあたりをうかがう。


「ほら、あそこが買い取ってくれる店だ」


 そこには大きなお店がある、雑貨屋バーグの看板が掲げられている。 おれは問屋としてここに物を卸していた。


「こんにちは」 


「おお! マサトまってたよ!」


 そう小柄なバーグおばさんが、雑多のものがところせましと置かれている店の奥からでてきた。


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