第11話
「うっ......」
目か覚めると、そこには神さまがいた。
「あっ、神さま、ということは死んだのか......」
「ああ、残念ながらな。 お前は神の力...... 魔力を使いすぎ死に至った」
「そうか...... あ、あの! ゴブリンたちは!」
「ああ、お前がゴブリンキングを倒したから無事だ」
そういうと、目の前に画面が現れた。
そこではおれの体にしがみついて泣いているサクトたちが映る。
「無事だったか...... よかった」
「どうだ...... 神は大変だっただろう」
「そうですね。 大変でした。 というか神さまらしきことはなにもできなかったですけど......」
後悔が溢れてくる。
「お主は死んだ。 だが私の勝手でこの世界に飛ばしたのだから、もとの世界に戻そう。 少々八つ当たりが過ぎた......」
「戻れる...... でもあのゴブリンたちはどうなるんですか?」
「わからぬ。 運命は神とてしれぬ」
「なんとか加護を与えてもらえませんか! あのままだと他のモンスターや人間に殺されてしまう! お願いします!」
おれは頭を下げた。
「ふむ、モンスターにそこまで情をもつか...... モンスターたちにも慕われておるようだな...... しかし、世界への干渉は決まりがある。そこで一度のみのチャンスをやろう」
「チャンス?」
「あのものたちが本当にお主を必要としているなら、その命再び舞い戻れよう」
そういうと、神さまの手に黄金の天秤があらわれる。
「これは命の天秤。 左右に対象の命をのせる。 この天秤は右があのものらの命、左がお主の命だ。 天秤が傾くと大切なほうの天秤が傾く」
「それって......」
「左側に傾けばあのものらは、お主の命を自らより大切に思っているということだ。 お主の運命はあやつらに託す。 しかしもとの世界にもどらないということは、この世界の運命を受け入れなければならぬ。 この世界にはただならぬ闇があるがよいのか」
「闇...... でもかまいません。 あの世界の事情をしったから、あのままコブリンたちをほっておけない......」
「わかった......」
黄金の天秤に二つの光る玉がのった。
釣り合った天秤が一気に傾く。 するとおれの意識は遠退いた。
(あのものらはお主を必要としたようだ...... 頼む...... ぞ......)
そう遠くから神さまの声が聞こえ消えていった。
「う......」
目を覚ますと、ゴブリンたちは顔を涙でグシャグシャにしていた。
「ま、ま、マサトさまぁぁあ!」
「まて、サクト! 怪我人がさきだ!」
おれは怪我人たちを回復した。
「大分死んだな......」
ゴブリンたちの遺体を並べる。
「はい、残りは23名です」
「また半分以下になった...... ほとんど死んでしまった」
「それでもゴブリンキングが生きていれば、我らは全員食われていました。 あなたさまのおかげで集落のものは生き延びました」
そういってサクトとゴブリンたちはおれへ平伏した。
「このゴブリンたちをこのままにしたくないがどうしたらいい。 ここで埋める?」
「いえ、魔力結晶にしてください。 このものたちの強き意思はほかのものに移りましょう」
「......そうだね」
おれは倒れたものたちに感謝しながら魔力結晶にした。
(ありがとう......)
「ゴブリンキングか、こいつも魔力結晶にしよう」
かなりの力を使って魔力結晶にした。
「なんとかできたけど、つかれた......」
「とても多くな魔力だったのでしょう」
「そのせいで大勢死んだ。 あっ、精霊ちゃん! いる!」
『......ええ』
こころなしか反応が冷淡にかんじる。
「怒ってる?」
『......怒っておりません』
(完全に怒ってる)
『怒っておりません!』
(けっこう強めにきた)
「う、うん、無事ならいいんだ。 それでこのゴブリンキングの魔力結晶をサクトに与えたらどうなるの?」
『爆散します』
「ば、ばくさんするの!? だ、だめだな」
『ですが、それを割りサクト、アプラ、コゴルに分ければどうでしょうか』
「三つにか...... うん、やってみよう」
ゴブリンキングの魔力結晶を三つにわけると、サクトたちの気持ちを聞いてから三人に与える。
「おおお!!」
三人が光輝く。
サクトはさらに威厳ある精悍な顔つきになった。
「アールゴブリンになりました!」
サクトがそういう。
コゴルはバロンゴブリン、アプラはバロネスゴブリンに進化した。
「? ゴブリンエリートじゃないの」
『ゴブリンキングの魔力が大きくて、かなり飛んで進化しました。 貴族の位を名前に冠するレアゴブリンとなります』
「そうなんだ。 なんかより人間みたいになったな」
おれたちは集落へと戻った。
それから帰り道、倒したゴブリンを魔力結晶にしてもちかえり、集落のゴブリンたちに与えた。
その結果、一部がゴブリンエリート、ほとんどがホブゴブリンまで進化した。
「121名が進化か、これでもう攻めてはこないよね」
「ええ、これほどの強いゴブリンを要する集落はありません。 かなり強力なモンスターたちとも戦えるでしょう。 あのゴブリンキングの兵力を上回る戦力です。 人間たちに殺されることもないですしょう」
サクトたちがそういった。
「それならもういいか......」
おれは安心した。
「じゃあもう危険はないから、おれはでていくね」
「それなのですが......」
そういうとサクトとゴブリンたちは平伏した。
「マサトさま! 我らを導いてはいただけませんか!」
「ええ!?」
「我らはあなたのもとで生きていきたいのです!」
コゴルもサクトにつづいた。
「でも、もう安全だから......」
「危険だからではなく。 共に生きていたいのです」
そうアプラは頭を下げた。
『よいではないですか』
(でもおれは神として、生きないといけないし、そう神さまに約束したから......)
『彼らの神になればいいのです』
(えっ?)
『信仰されればゴブリンであろうと人であろうと関係ありませんしね』
(そうなのか、確かにゴブリンたちの信頼で力がました。 人間の神さまになるのが目的だと思ってた)
サクトたちはこちらをすがるようにみる。
「ん...... 心配だから一緒にいるか」
「おおおおお!!!」
ゴブリンたちが歓声をあげた。
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