第10話

「どこかに逃げたものたち以外はほとんど倒したか......」


 おれは傷ついたゴブリンたちの治療をしながら、サクトに聞いた。


「はい、あれだけいたゴブリンたちは、ほとんどちりぢりになりました」


「被害は......」


「こちらは残り53名です。 ラタナと新しくホブゴブリンになったバラムも......」


「およそ半分か、かなり死んだな......」


「900もいたゴブリンたちを半分以上倒したのですから、致し方ありません...... あのものたちもマサトさまには感謝しています」


 アプラがそういってくれる。


「ただ、他のゴブリンエリートとゴブリンキングがいないんです」


 コゴルがそういった。


「一人しか倒せなかった。 ということは洞窟か」


 おれたちは洞窟をみる。 そこは暗く異様な感じだ。


「このまま帰っても大丈夫なんじゃないか、兵は半分は死んだし、ちりぢりになったから」


「いえ、ゴブリンキングが健在なら再びゴブリンたちを集め、攻めてくるでしょう。 今度は対策をとられ、我らに勝機はありません」


「......ですね。 サクトと同じく私も、今しか討ち取ることができないと思います」


 アプラのその言葉にコゴルもうなづく。


「やるしかないか...... ただ今度は向こうが奇襲してくるかもしれない」


「確かに...... もしかしたら我らのしってる情報より多くいる可能性もなくはないですね」


(おれの少精霊たちもあとそれぞれ二体ずつか...... 精霊たちはだしているだけで、魔力が消費するからな)


『新しく増やしている暇はないですね。 ですがゴブリンキングは並みの強さではありません。 あの倒れているゴブリンエリートの魔力結晶を手に入れておきましょう。 つかえるかもしれません』


(かなり、魔力が減ってるんだけどな)


 おれはゴブリンエリートから魔力結晶を手に入れた。


 

 洞窟内にはいると、暗い内部を火の精霊に先導させてすすんでいく。


「敵がいたら教えてくれ」


『わかりました』


 おれたちはいくつかの小部屋をこえて奥へとすすむ。


「やはり、いないか」


「ええ、かなり深部にきましたが、一人もいない」


 乱雑な生活のあとがあるだけで、生き物はなにもいなかった。


 しばらくすすむと、巨大な穴がある。 


『まってください』


「いるのか......」


『はい、ですが...... 妙です。 大きな魔力が変化している......』


 その時、なにかわめくような声が聞こえた。


 おれたちは部屋へとはいると驚いた。 そこにはバラバラに散乱したゴブリンたちの遺体がある。


 そしてゴブリンの数倍はある巨大なゴブリンが片手で逃げたホブゴブリンをつかまえている。


「お止めください! キング! ぎゃあああ!!」


 ホブゴブリンはそのまま巨大なゴブリンに食べられていく。


「仲間を食ったのか......」


「......グフゥ、使えぬものは我が養分にするだけだ......」


 その醜い顔で巨大なゴブリンはそうにやついた。


「総攻撃!!」


 ゴブリンたちが矢を放つが、なにかに弾かれゴブリンキングには届かない。


「攻撃が!」


『なにか魔力の物理障壁を作り出しています』


「魔力の障壁」


「そんな魔法は使えなかったはず......」


 サクトが怯えている。


(本能なのか...... 他のゴブリンたちも硬直している! このままだとまずい!)


『おそらくゴブリンキングは、食べたゴブリンたちの魔力を吸収して獲得したのでしょう』


(あれを解除しないと!)


 目の前でゴブリンを守らせていた小精霊が、ゴブリンたちごとゴブリンキングの巨大な剣で吹き飛ばされる。 


「どけごみども...... その人間を真っ先に喰ってくれるわ......」


 ゴブリンキングがこちらに迫る。

 

「マサトさまをまもれ!!」


 サクトの声で固まってたものたちが、ゴブリンキングに突っ込んでいく。


「やめろ! なにかないか! みんな殺されてしまう!」


『これはとても危険ですが...... 先ほど作った魔力結晶を破壊するほどの魔力を込めて放てば、あの障壁とゴブリンキングを貫けると思います』


「よし! すぐに!」


『まってください。 その方法はとても危険です。 その魔力結晶が耐えられないほどの魔力を使うということは、あなたが死ぬかもしれないということです』


「おれが死ぬ......」


 ゴブリンたちは恐怖に耐えながら、なんとか動いて攻撃を続けている。


「マサトさまお逃げください! ここは我らが!」


「いけ! 恐れるな! マサトさまを、お守りするのだ!」


「我らはマサトさまにいかされた! その恩をここで果たすのだ!」


 サクトたちは魔法を連発し、無茶な戦いをしていた。


(おれのために......)


「やる! これに魔力を込めればいいんだな!」


『そこまでゴブリンたちのためにやる必要があるのですか、 あなただけ逃げても彼らは責めませんよ』


「......わかってる。 みんな死んでもおれのことは責めないだろう...... てもおれはおれのことを許せなくなる!」


 魔力結晶に限界をこえて魔力をこめる。


「うおおおおおお!!」


 魔力結晶は膨張し部屋中に赤い光を放つ。


「みんな離れてくれ!!」


 おれは走り、その魔力結晶をゴブリンキングに向かって、ほうりなげた。


「グフゥ...... 無駄なこと、おろかな人間......」


 パキッ、パキパキパキパキ。


「なんだ...... 我が障壁にヒビだと......」


 パキィィンン


 そういって粉々に障壁はくだけると、そのまま魔力結晶はゴブリンキングに当たった。


「なんだ...... この魔力、押される...... なんだぁぁぁぁ!」


 ゴブリンキングはそのまま上半身がふきとんだ。


「や、やった...... でも」


 おれは意識を失い、そのままくらい世界におちていった。


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