第9話

「一応、火、水、木、土、石の小精霊5体ずつ25体なんとか作ったけど、これで本当に闘えるの」

 

 小さな炎や丸く浮いている水などとても戦力になるとは終えない。


『小精霊たちは武器などは扱えませんが、自然の魔力を行使できますので、かなりの戦力になるでしょう。 ですが、増えたとはいえかなりの魔力を消費したので、回復のため休息をお願いします』


「そうだな。 かなりつかれたから、今日は休んで明日作戦を考えよう」


 その日は魔力回復のため休んだ。



 つきの日、おれたちは深い森を歩いていた。


「この作戦で奇襲するしかないな。 間に合うかな」


「無傷なものはいないので敗戦の報告も二日、ないし三日はかかるかと......」


 サクトが横をみるとゴブリンたちの遺体が転がっている。


「傷をおったので見捨てられたのでしょう...... 他のモンスターたちにも襲われているようです」


「とりあえず魔力結晶にしてゴブリンたちに与えよう」


 おれたちは転々とつづくゴブリンの遺体をおい、ゴブリンキングがいるという洞窟へとむかった。



 それから二日かかり、おれたちはゴブリンキングのいる洞窟にほど近い丘へとやってきた。


「なんとか迂回して洞窟の後方へと回れた」


「ええ、ここなら奇襲をかけるには絶好でしょう。 前方には新しくホブゴブリンになったコゴルとバラムを伏兵においています」


 そうセクトはいった、汗をかいて緊張しているようだ。


(やはりゴブリンキングは相当危険なようだな」


「襲ってきたモンスターやゴブリンを魔力結晶にかえ、与えてたことで更に戦力がふえたな」


「ええ、私とアプラたちホブゴブリンとで、各々ゴブリン20人を率います。 マサトさまは小精霊を率いてください」


「わかった。 それで中がわかるものはいる?」


 そう聞くと、アプラは手を上げた。


「前にきたことがあります。 アリの巣のように小部屋があり、その一番深くにゴブリンキングがいます」


「なら中に炎を放てばいいんじゃないか」


「おそらくすぐ消されるかと...... ここは1000人はすめるほど深くいりくんでいるので、炎は奥まで届きません」


「それになかにはゴブリンキングのほかにゴブリンエリートとホブゴブリンが数人いるはずです。 かれらを何人か討たねば、ゴブリンキングには負けるでしょう」


 サクトとラタナがうなづく。 


「そうか、それに気づかれたら奇襲の意味がなくなるな...... やはり洞窟からおびきだして戦うのがいいか。 それにここまでゴブリンたちの偵察隊がいなかったのはなぜだろう?」


「ゴブリンが敗戦の報告をして兵隊を集めているのでしょう。 つまり全軍での総攻撃があると思います」


 アプラが洞窟をみてそういった。


「気づかれてないかな......」


「正直、100には満たない我らが攻めてくるとは思ってないはず...... おそらく兵を再編しているはずです」


「さてじゃあ作戦通りやるか」



 おれたちは後ろから洞窟へと慎重に木々に隠れ近づいていく。 その間に左右にアプラ、ラタナたちがわかれ展開した。


 洞窟の上まできたとき、下の方で鳴き声がする。


『来ますよ!』


 洞窟からゴブリンたちが隊列を組んで進んでくる。


(さっきよりは統制がとれてる気がするな)


 移動していくのを後方からじっとみていると、何体かの大きめのホブゴブリンと、4人のゴブリンたちにかごで担がれた大きなゴブリンが、ムチをしならせて、指示している。


「あれがゴブリンキングか」


「いえ、私と同じゴブリンエリートでしょう」


「あれを早めに倒しておきたいな」


 とりあえず奇襲するため、隊列が洞窟よりでていくのをまった。


「おれたちが作った前方の行き止まりで引き返して来るまえに、やらないとタイミングだな......」


 声をひそめみている。 蛇のように森を蛇行してゴブリンの隊列がみえている。


「ふむ、おかしいですな...... かなりの兵はでてるのにゴブリンエリート一人とホブゴブリンが三人しかみえませんでした。 ほかのものは洞窟に残っているのかもしれません」


 サクトが首をかしげる。 その顔は不安そうだ。


「ゴブリンキングが待機させてるのか...... まさか気づかれたか」


「いえ、それならこちらはとっくに見つかっているはず......」


 そう話しているとき、前方からゴブリンの叫び声が聞こえた。


「前で戦いが始まった!」


 ゴブリンたちは混乱している。 その統率をとろうと遠くでゴブリンエリートがムチをふるい音をたてている。 


「いまだ!!」


 おれは魔力を剣に加え、その剣を投げる。


 その剣はゴブリンエリートを貫いた。 かごからゴブリンエリートは地面に落ちた。


「よし! やれ!!」


 それと同時にセクトたちの指示で左右と上から矢を放つ。 


「ギャア!!」


「グギャ!!」


 次々とゴブリンたちは倒れていく。 そこに剣や槍を持つものが降りていった。


「反撃しろ!!」


「ギャオオオ!!」

 

 敵のホブゴブリンの指示でゴブリンたちも応戦しだした。


(反撃してきている! こちらが押してるが、使うならここだな!)


 おれは左右の木々に隠した小精霊たちに命令をくだしゴブリンたちを攻撃させる。 少精霊は動かすだけで魔力を消費する。


 土の精霊はゴブリンたちの前で相手の攻撃を防ぎ、水の精霊は水流を流し、木の精霊は蔓で相手をしばり、石の精霊はつぶてをうちだし、火の精霊は火球をはなった。

 

「なんだこれは!? ゴブリンだけじゃないのか!!」


「フレイムサークル」


 サクトの魔法が焦っていたホブゴブリン二体とその周囲を、円状の炎の火柱がつつむ。


「グワァァァア!!!」


「ギャアアアア!!!」


「うわぁぁ!!」


 それをみていたもう一人のホブゴブリンが、ゴブリンたちを押し退けて洞窟へと逃げ帰っていく。


「ギャァ!!」


「ウウウァ!!」


 それをみていたゴブリンたちは、混乱して逃げまどい始めた。


「好戦的なのに、混乱している。 前もあったな......」


『ええ、モンスターは強いものに従う習性がありますから、それが目の前で逃げたので、恐怖がうわまったようですね』


「なるほど...... だがチャンスだ!! みんなここで一気に倒すぞ!」

 

 おれたちは混乱しているゴブリンたちを次々と倒していった。


 

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