第86話 真の最終決戦の始まりです
「ああ、下らぬと言えばあのカイルとかいう者。まさか『復讐をやめる』と決意するとは思わなんだわ」
「…………え?」
メイズの言葉に最も驚いたのはダイアだった。
「だから、我が取り付いて、暴走させてやったのよ。前を向いて歩くと決心した者を闇へと歪ませてやる。ほほほ、これもまた、良き悲劇かな」
なんてことだ。
カイルは復讐なんてやめて、幸せへの道を歩む決意をしていたんだ。
それなのに、この天使が無理やり彼を闇落ちさせていた。
「き、貴様ぁぁぁ!」
主人を狂わされたと知ったダイアが、吠えるように叫ぶ。
「とりあえず、一つだけ分かった」
俺はメイズを指さした。
「お前が、全ての元凶だ!」
俺だけじゃない。
ひょっとしたら、他の転生者も、こいつのせいで悲惨な結末となっていたかもしれない。
「楽しかったぞい。せっかく異世界に転生したのに、最後は身の覚えもない復讐をされて、嘆きながら死んでいく勇者たち。最高じゃ! これぞ最高の悲劇! そして悲劇こそが物語を盛り上げる最高の味付けなのじゃ!」
「そうやって、何人もの転生者を殺してきたのか」
たくさんの罪も無き人々がこいつの娯楽の糧となっていた。
「うむうむ。此度も良い悲劇の材料となってくれたぞ。そこな勇者! 貴様は手違いで転生させられて、最後は復讐されて果てる。最高じゃぁ!」
次にニーナに指をさす。
「本当は純粋なのに、勇者のせいで醜い肉塊へと成り果てる美しき少女! これまた、良き悲劇かな! 我の最高のシナリオよぉ!」
最後にメイズはルビアとフィオナさんを指さした。
「そして!」
それから数秒、間が開いた。
「…………………………誰?」
メイズは首をかしげていた。
「なぜ、かような者がこの世界にいる? どこから迷い込んだ???」
どうやら、ルビアとフィオナさんの参入はメイズにとっても想定外の出来事らしい。
最近の流行りを語っておきながら、悪役令嬢を知らんのか。
この天使、完全に『にわか』だな。
「まったく、今回はつまらん。貴様らのおかげで、我が大名作は駄作になってしもうた。責任を取って……死ぬがよい!!」
「むちゃくちゃ言うな! つまらんのはあんたが作った物語だよ!」
俺がこんな目に遭った全ての原因である悪の天使メイズ。
こいつさえ倒せば全てが終わる。
ここからが最後の戦いだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます